登場人物設定
主人公:金髪碧眼の女。愛読書はハリーポッター。
竜胆:中国マフィアの下っ端。六本木のカリスマと呼ばれている中国マフィアお気に入りの男娼。論語からの引用が得意。母性に飢えており、最上級の愛情表現をするときは「甘やかしてほしいでちゅ」等、語尾が赤ちゃん言葉になる。


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昨日のことが、遠い昔のように思える。
学生時代の思い出に終止符が打たれ、軟禁生活が始まったあの瞬間。私が首を横に振るなんてちっとも考えていない笑顔で竜胆くんは言った。

――お前のこと、全部ちょうだい?

ずるい、と思った。悔しいとも思った。それなのに、竜胆くんに嫌だと抵抗する手段も気持ちもない。どこかで嬉しさを感じてしまった自分がきっといる。でも、あんなに自由だった竜胆くんが私なんかに固執しているのが悲しい。竜胆くんが何を考えているのか分からないのが寂しい。
ぐちゃぐちゃだった。

そのまま竜胆くんと何もかも分からなくなるくらいに交わって、気持ちの整理なんてもちろんつかないまま、気づけば私は”竜胆くんのもの”になっていた。いつの間にか気絶するように眠って、くたくたに横たわっている私を、どこか据わった目をした竜胆くんが見降ろしていた。
これは一体誰だろう。泣きたくなりながら「隣の席の竜胆くん」ではなくなってしまった男の人を見上げていると、彼はふっと風が吹くように笑った。
ああ、学生の頃から大嫌いで大好きだった、竜胆くんのあの笑顔だ。

「明日から毎日、ずっとこうしてような」

竜胆くんの変わらない微笑みに憧憬で熱くなっていた胸が、一瞬でひやりとした。
恐ろしいことを言う。
こんなの毎日していたら死んでしまう。ちょっと身じろぎするだけで腰が痛いし、お腹にはまだ何かが入っているような違和感がある。自分の身体がまるで人形に乗り移ったようにうまく動かせない。今だって軽く自分の限界を超えているのに、毎日これをしていたら人間の限界を超えてしまう。

私の首が縦に動くのを、竜胆くんは待っている。いつもみたいに、断られるなんて少しも思っていないあの笑顔で。私だって、いつもだったらきっと「竜胆くんはずるい」なんて思いながらも頷いていた。けれど、今回は。
――無理。絶対に、無理。

私は初めて、竜胆くんの笑顔へ首を横に振った。

「ハ?」

みるみる不機嫌に寄せられていく、山なりの眉。整った容姿の人がこういった表情をすると凄みがある。「やっぱりナシで」と取り繕って服従するように頷きたくなるみたいな、そんな圧。でも、やっぱり頷くことはできない。

「なんで?モノ足りなかった?」

のしっと臨戦態勢でマウントポジションを取り始めた竜胆くんに、必死で首を振る。必死で、と言ってもほとんど力なんて出ないから、とてもゆっくりなんだけど。
物足りないなんてこと、あるはずがない。むしろその逆だ。フルコースでお腹いっぱいになったところで巨大パフェが出てきて絶望するような、それくらいの十分さだった。

「じゃあ何?俺とヤりたくないワケ?」

だから、足りないんじゃなくて多すぎるんだってば!体力おばけの竜胆くん基準で考えないでほしい。
と言えればいいのだけれど、もう喋る体力すら私には残されていない。気付いて、竜胆くん。そんな仏頂面してもどうにもならないよ。

「やっぱガキ孕ますか」

なんでそうなるの。「やっぱ」って何?
今の流れで子づくりしようとはならないでしょ。
ねえ、竜胆くん。竜胆くん?
……どうしよう。目が本気だ。

「ガキ孕ませれば一発って兄貴達も言ってたし」

拝啓、竜胆くんのお兄さん達へ。竜胆くんに間違った知識を吹きこまないでください。竜胆くん素直だから信じちゃったでしょうが。

「ずーっと一緒にいような」

執念さえ感じさせる熱っぽい声で甘いキスをしてくる竜胆くん。
下腹に当てられる、湿り気を帯びた温かくてちょっと固いもの。
本気だ。竜胆くんはこのまま子づくりする気だ!

「赤ちゃん、嫌……」

声にならない声を振り絞って、いやいやと首を横に振る。
気づいて竜胆くん。竜胆くんが嫌とかじゃなくて、今こんな声しか出ないくらい消耗してるんだよ。無理でしょ。
それに赤ちゃんなんて私たちにはまだ早いよ。そもそも竜胆くん、子育てとか出来るの?

「そうだよなァ、」

未だに仏頂面……というかそれを通り越して無表情に近い顔になっていて怖いけれど、分かってくれたらしい。竜胆くんが素直で良かった。

「逃げる気なのにガキなんか出来たら困るよなあ?」

ダメだ、全然分かってなかった。
どうにも、高3の終わりに連絡手段を絶って海外へ渡ったあの時のことが、竜胆くんには相当応えたらしい。昨晩、「逃がさねえ」「逃げんな」と、逃げる素振りを見せると苛烈なまでに責め立ててきたのもその証左だ。
なんてことをしてしまったんだ、あの頃の私。

「……逃げないよ」

事に及ぼうと覆い被さってくる竜胆くんを、うまく力の入らない腕で抱きしめる。
逃げないよ、竜胆くん。
……だってどう考えても無理だし。
きっとゲームだったらゲージが赤く点滅するくらいの小さな体力しか残っていない身体に、私よりも動いていたはずなのに疲れ知らずでいろいろ元気な竜胆くん。そして竜胆くんしかパスワードの分からない出入り口。難易度鬼の脱出ゲームか。

「ホント?」
「うん」

まだ熱のこもっている声に、ライオンが獲物を捕獲するみたいに首を噛んでくる竜胆くん。まだ熱くて固い、お腹に当たる竜胆くんの竜胆くん。
おかしい。危機は脱したはずでは?

「りんど、くん」
「ンー?」
「今日はもう……しないよね?」
「なんで?」

竜胆くんが不思議そうに首をひねる。
そうしたいのはこっちの方だ。逃げられたら嫌だから無理やり妊娠させる気なら、逃げないと言った私をそうする必要はなくなったよね?

「逃げないから……」
「ウン。だから記念のラブラブセックスしよ?」

しません。
竜胆くんじゃなかったら横っ面をグーで殴ってやりたい。何でもかんでもそういう方向に持っていくの禁止。
それにしても、セックスに持ち込むために適当なことを言っているんじゃなくて、本気で言っているところが怖い。竜胆くんには少女漫画でも読んで恋愛観を見直してほしい。「記念にデートしようぜ」「記念にキスしよう?」という彼氏はいても、「記念にセックスしようぜ!」と言い出す彼氏は多分いない。
だから私が首を横に振ったのは変なことではないはずだけど、ゴキゲンだった竜胆くんがたちまちに顔を曇らせて、ガブリと首筋に噛み付いてきた。痛い。

「拒否ったって遅せェから」
「え……」
「昨日タップリ出してっから。ココ、もう俺のガキ出来てんじゃね?」

お腹を撫でた竜胆くんの手に反射的にびくりと身動ぎすると、とぷりとこぼれ出た何かが大腿をつうと伝い落ちていった。
この生理とは違う何かに、たったさっきの竜胆くんの言葉。

「避妊しなきゃ……」
「いらねェよ。すぐ俺のでイッパイになっから」

今日から毎日避妊ナシな、と絶望の予告をした竜胆くんが口付けてくる。全て奪うみたいに、深く、深く。

「まだ子供は……」
「逃げる気?早く俺のガキ作ろうな」
「竜胆くん、逃げないから……」
「ン。嬉しい。愛情たっぷりセックスしよ」

エロゲか。どの選択肢を使ってもセックスしか待っていない。今私に必要なのは過剰なエロではなくてアフターピルとまともな休息だ。

「お休みしよ……」
「ヘーキ。俺体力あるから」
「私がむり……」

やっと言えた。この一言のためになんだかすごく遠回りした気がする。竜胆くんだって鬼じゃない。きっとこれで暴走を止めてくれるだろう。

「ジョーダンだろ。だいぶ手加減したぜ?」
「それこそ冗談……」
「え?もしかしてマジで言ってんの?」

びっくりした顔で竜胆くんが言う。そんな顔をされて私の方がびっくりだ。

「え、マジ?弱……」

ものすごく信じられないらしい。竜胆くんは心配よりも物珍しいものを見る目で一通り私を見下ろした後、ベッドサイドの小さな冷蔵庫を開けた。

「水飲も。飲まねーよりはマシだからさ」

キュッと軽く蓋を空けて、竜胆くんがミネラルウォーターの入ったペットボトルを渡してくる。こういうところがあるから竜胆くんは憎めない。

「なんか食う?」

ピザやハンバーガーの並ぶ出前アプリのメニューを見せながら、竜胆くんが聞いてくる。お腹は空いているけれどガッツリしたものはなんだか食欲が湧かない。強いていうならシャキシャキのレタスが食べたい。そう思って鳥ささみのサラダを指差すと、竜胆くんがあっという間に注文をしてしまった。

「ありがとう」
「いいって。届く前に軽くシャワー浴びとこーぜ」

そう言った竜胆くんに抱き上げられて、またしても昨日注がれたものが腿を伝った。
いけない。大事なことを忘れてた。

「竜胆くん」
「んー?」
「ピル欲しい」
「ヤダ。絶対ガキは作る」
「子供はもうちょっと後にしない?」
「今スグがいい」

ダメだ。竜胆くんが頑固になってしまっている。こうなった竜胆くんを世間一般の正しい意見で諭そうとしてもムダだ。何とか自分で考えを変えてもらわないと。
がんばれ私。今すぐ眠ってしまいたいくらい身体が怠いけれど、ここで竜胆くんに考え直してもらえるかどうかで生活が全然違ってくるのだから。

「いいのかなあ、竜胆くん」
「何が?」
「赤ちゃんって、育てるの大変なんだよ?」
「大丈夫。俺も手伝うから」
「ふうん、そっか。じゃあ、」

竜胆くんがこれくらいで折れないのは知っている。けれど、私の知っている竜胆くんなら、次で絶対に揺れるはずだ。

「竜胆くんは、私の一番じゃなくなっちゃうね」
「ハ?何でだよ」

食いついたな、竜胆くん。

「だって赤ちゃんが一番だから。竜胆くんは二番目」
「二番目……」
「お世話があるから、竜胆くんと一緒の時間も減っちゃうね」
「一緒の時間が、減る……?」

竜胆くんが涙目になってきて、目に見えて焦り始めた。無理やり妊娠作戦に迷いが出てきているらしい。ここで最後のひと押しだ。

「私はまだ、竜胆くんと恋人同士でいたいなあ……?」
「俺もッ!恋人同士がいい!」

アッサリだった。素直な竜胆くんを嵌めたようで罪悪感があるけれど、事がことだけに仕方がない。

「でも、もうピル飲んでも遅いよね」
「そんなことねーよ!カイシャの奴にアフターピル持って来させるから!」

どんな会社だ。竜胆くんは重役か何かか。
お風呂へ直行しようとしていたはずの竜胆くんに、元いたベッドに下ろされる。
竜胆くんがベッドサイドに置いてあった電話を持ち上げ、ワンコールだけ通話音のなったそれを耳に当てた。

「なあ、アフターピル持ってきてくんね?あ?安全なヤツに決まってんだろ。5分以内に来ねーとコロす」

今の会話、何?安全じゃないヤツがあるの?
要件だけ伝えて電話を切った竜胆くんを見上げながら不安になる。

「今からピル来るから。待ってて」

さっきの殺すとか何とか言っていた治安の悪い通話が嘘のように、竜胆くんが笑顔でキスしてくる。
無理なセックスも望まない妊娠も回避できたはずなのに、何かを間違った気がするのはなんだろう。

釈然としないまま、私は出前よりも早く来たアフターピルを恐る恐る飲むことになるまでの間、竜胆くんからの止まないキスの雨を受け続けていた。




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登場人物設定
主人公:金髪碧眼の女。愛読書はハリーポッター。
竜胆:愛読書はハリーポッター。好きなキャラはヴォルデモート。スネイプはあんまり好きじゃない。


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登場人物設定
主人公:金髪碧眼の女。愛読書はハリーポッター。
ゼノ:本名ゼノディウス。火星からやってきた知的生命体で、火星に帰るためにNASAで研究をしている宇宙人。最も愛する相手には俺様口調になり、一人称も俺様になる。同じく火星出身の友人・スタンリーと人類抹殺を目論んでいる。
SAI:インド人。数学者なので引きこもりだと思われがちだが、ガンジス川で泳ぐアクティブな趣味を持っている。愛読書はハリーポッター。


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