後編
モヤモヤと考えるのをやめにして
とりあえず図書室に本を返しに行こう と教室を出たところで及川に会った。
及川とは岩泉繋がりで話すようになったけれど
2人で話したことはそんなにない。
「名前ちゃんまだ帰らないの?」
「うん、本返しに行こうと思って」
「なら俺も付いてっていい?マッキー達待ってて暇なんだよね〜」
有無を言わせず付いてくる及川と当たり障りのない話をする。
「そういえば…」と少し声のトーンが変わったかと思えば
「岩ちゃんとはどうなの?進展あった?」
いきなり何を言い出すんだこの男
というか何を知っているのか
岩泉が 隠してほしい と言ったんだから
付き合っていることは知らないはず…
ということは私の片想いを知っている ということになる
そっか、
あれだけ岩泉と一緒にいる及川にさえ
全く気付かれていない ということは
それだけ岩泉は前と変わっていないんだ
そんなに話したことのない私の岩泉への視線に気付いた及川が岩泉に変化があったら
気付かないわけがない
目を背けようとしていた現実を叩きつけられたような気がして
こみ上げてくるものを奥歯を噛み締めて耐える。
「ちょ、名前ちゃん!?泣いてる!?」
「泣いてない」
及川が慌てて少し屈んで頭を撫でてくれるが
そろそろ胸の痛みに気付かないふりをするのは限界だった。
「おいクソ川 なんで名字泣いてんだよ」
「いや、ちょ怒らないで岩ちゃん 俺にもわかんない」
岩泉の急な登場に驚いたけど
ごめん及川今は顔をあげられそうにないや
「つーか 触んな」
ズイっと近寄ってきたかと思えば撫でてくれていた及川の手をバシッと払いのけた
そのままグイッと引き寄せられ岩泉の固い胸板におデコをぶつけた
「え、ちょ、岩ちゃん!?」
「名字は俺のだから触んな あと松川が探してたから早く帰れクソ川」
「辛辣!」
はいはいわかりましたよー と去っていく及川を横目に
「で、なんで泣いてんだよ」と言う岩泉
それよりも「言っちゃってよかったの?」と
聞くと「あー…言っちったもんは仕方ないしな」と諦めたような声が聞こえる。
相変わらずおデコは岩泉の固い胸板にくっ付けたまま。
初めて抱きしめられた とかすごく筋肉ついてて引き締まってるなとか 引き寄せられた腕の力強さにときめいたとか
じわじわと顔に熱が集まっているのがわかる
でも 泣いてたから顔を隠してくれているのか
とか 及川にばれてしまったとか いろいろと申し訳なくなってきて
「もう大丈夫だから離してくれていいよ。ごめんね、岩泉も恥ずかしいでしょ?」
離れようとすると 一層力を込められて抱きしめられる。
「あ?なんだよごめんって
好きな女のこと抱きしめて何で謝られなきゃいけねぇんだよ」
「え、今 好き…って…」
「あとなんで及川に頭撫でられてたんだよ
触らせんじゃねーよ」
あぁもう と頭をぐりぐり撫でられて
私の頭は思考が追いつかない。
でもその言い方は、
「岩泉…それって嫉妬…したって聞こえるん…だけど…
他の子より…は私のこと好きだって自惚れても…いいの?」
はぁ と溜息を吐く岩泉
「他の子よりはってなんだよ…ちゃんと名前が好きだから自惚れてろ」
うん と言った声は聞こえただろうか
岩泉の背中に腕をまわすと もう一度ギュッと抱きしめられた
「岩泉…1つだけ聞いてもいい?なんで学校では隠したかったの?」
「……絶対 必要以上に及川たちが名字に絡みに行くと思ったから」