好きって言っちゃえば
『やっちゃーん!!!』
「名前ちゃん!夜中なのに元気だね…」
眠そうなやっちゃんに元気よく抱きつく。
『だって東京遠征だよ!楽しみで仕方ない!』
騒ぐわたしの後ろからぬっと現れた主将に
パコーンと頭を叩かれる。
「名前うるさいぞ、近所迷惑だ」
『いったい!あ、主将すみませんー』
「2人とも早くバスに乗る!」
はぁいと返事をしてバスに乗りこむ。
日向と影山は明日補習があるから後から合流するらしい。
『田中先輩がなんか言ってたけど間に合うのかな』
「どうだろうね、間に合えばいいけど…」
『そういえばやっちゃんは音駒の人たちと会うの初めてだよね?』
「そうなんだよー、怖い人いたらどうしよう」
『あそこの主将はなかなか意地悪だよ、前回の練習試合の時散々からかわれた!!』
そう言うとやっちゃんはひいぃそんな恐ろしい人が… と怯えていた。
やっちゃんと話していたはずがいつのまにか走り出したバスに揺られて
あっという間に寝てしまっていた。
『東京だー!!』
「スカイツリー!!」
ワイワイと騒ぐわたしたちを見て
ぶっひゃっひゃ という笑い声が聞こえた。
「よぉ名前ちゃん 久しぶり〜」
『…お久しぶりです黒尾先輩。』
「挨拶はちゃんと目を合わせてしましょうね」
と言いながら両手で頬を挟みグイッと上を向けられる。
その距離がすごく近くて顔が熱くなるのは仕方がないと思う。
変な髪型してるけどイケメンだもの …変な髪型してるけど
「お前なんか失礼なこと考えたダロ」
『イエ ベツニナニモ』
おい と言いつつ解放してもらえた両頬を手でおさえる。
くそぅ絶対顔赤い。
ひたすら試合とペナルティを繰り返し
遅れて登場した2人を交えようやく1勝…
何試合もしたのに選手たちは割と元気だ。
さすが体力あるな… 走り回っていたこっちがクタクタである。
試合や片付けを終えて
やっちゃんと潔子先輩を誘い
他校のマネさん達と一緒にお風呂に入る。
『あ〜ごくらくぅ〜』
「気持ちいいね〜」
『はぁぁ!潔子先輩!水も滴るいい女 ですよ!!何してても美人!!』
「名前ちゃんおっさんみたいだよ…」
『それにしても疲れた…』
「名前ちゃんすごく構われてたね、黒尾先輩に」
『そうなんだよ… 疲れ倍増だよもう…』
「その割には楽しそうだったよ!」
『何言ってるのやっちゃん!何をどう見たら楽しそうに見えるの!』
「名前も満更でもなさそうな感じだったしね」
『潔子先輩まで!!』
音駒にはマネがいないということで
ことあるごとに使われたり…
それはいい!マネがいないのなら助け合うのはもちろんだ!でも!
『しょっちゅう黒尾先輩に呼ばれたり…』
「すごく呼ばれてたね」
『なぜか黒尾先輩に捕まったり…』
「うん、がっちりホールドされてたね」
「腰に腕回されてたね!」
『あの人いちいち距離が近いんですよ!』
からかわれているだけなのはわかっているけれど
いちいち距離が近くてドキドキしてしまうのだ。自分でも顔が赤くなっていることがわかるからほんと勘弁してほしい。あの人はわかっててやってる、確信犯だ。
そろそろあがろっか という潔子先輩の声で
脱衣所まで来たのはいいものの
少しのぼせてしまった。
「名前ちゃん大丈夫?」
『大丈夫大丈夫!少し涼んだら行くから
先に部屋戻ってて!』
心配してくれるやっちゃんと潔子先輩に
先に部屋に戻るようお願いし
少し涼んでから戻ることにした。
フラフラとしていたのも段々マシになってきて
自販機で水買って戻ろう と廊下へ出ると
『うわ』
「うわ とはなんだよ」
ちょうど黒尾先輩と出会ってしまった。
『なんでいるんですか』
「涼んでんの」
ん と渡された水にお礼を言ってありがたくいただく。
ご丁寧にキャップまではずしてくれて…
『ん!?これ飲みかけじゃないですか!!』
「今気付いたのかよ」フッと笑った黒尾先輩は
間接ちゅーだね とニコリと笑った。
「それくらいで真っ赤になられると困るんだけど…」とぼそりと呟いた先輩は
わたしの手を引いて外に出る。
?となっているわたしにおかまいなしで
少しだけ進むと クイッと引っ張られて
背中が壁にあたる。
ドン と手を持ったまま顔の横に手をつかれ
「そろそろ気付いてくれてもいいんじゃないですか?」とニヤリと笑った。
『くくく黒尾先輩なにして…っ』
「どもりすぎ… なぁ気付いてんだろ?
俺、名前のこと好きなんだけど」
そう言った瞬間真面目な顔になる先輩に
ぶわぁっと顔が熱くなる。
『いやいやいや、ていうかまず離してください
近いです!』
「いやでーす」
そう言いながらますます顔を近付ける黒尾先輩に
えぇっそんな… と下を向くしかなくなる。
耳に息がかかる近さで「逃げられるもんなら逃げてみな」
と言われますます硬直するわたしに
「逃がさねぇけど」と黒尾先輩は言った。