唇に毒薬


女湯の暖簾をくぐり 廊下へ出ると堀ちゃんと御子柴にバッタリ会った。

あ、堀ちゃんの前髪がおりてる。
これはなかなかレアだ。
いつもより少し幼く見えて可愛い…
けどお風呂上がりだからかほんのり紅い頬は妙に色気があって…かっこいいなぁ


なんて、そんなこと言えるはずもなく
「堀ちゃんの前髪がおりてるなんてレアだね!可愛い!」と言ってすぐに視線を御子柴に向けた。
色気倍増してる堀ちゃんを長時間見続けるなんて無理な話だ。

「あ!御子柴は耳に髪かけてる!可愛い〜!」
そう言って、御子柴の耳へ手を伸ばすと
「ななな!?」と言葉にならない声を発し
上気した頬を更に真っ赤にさせた。

こちらもなかなかレアなのでついつい弄りたくなってしまう。


「ぅわっ」
突然 左手首を掴まれたかと思えばくるりと反転する体

「え、ちょ 堀ちゃん?」
「野崎探しに行くぞ」と言われ
野崎を探しに行く理由もわからないまま 御子柴にまた後で と伝えると
小走りで堀ちゃんについて行く。


なんだか今日は歩くペースが早い。
手首を掴まれているから置いていかれることはないものの小走りでないと追いつけない。



「堀ちゃんなんか怒ってる?」
「べつに…」
「あ、さっき可愛いって言ったから?」
「ちげーよ」
「じゃあなんでそんな不機嫌なの」

そのまま少し歩いて急に足を止めた堀ちゃんは「はぁ」と溜息を漏らすと左手で前髪をわしゃわしゃとかき混ぜる

「お前な、ああいうのやめろよ 」
「ああいうの?」
「簡単に男に触るなってことだよ 勘違いするやつもいるだろ」
「それ堀ちゃんが言う!?」

私は散々勘違いさせられてると思うんだけど!?なんて口が裂けても言えないけれど
絶対に堀ちゃんの方が思わせぶりな態度をとっていると思う。

「堀ちゃんだって思わせぶりなことしてるじゃん」
「俺はしてない」
「してるよ」
「してねーよ 俺は気があるやつにしかしない」
そう言うと ちらりとこちらに視線を向け、またすぐに逸らしてしまった。


だからそういう所だってば…!!
そんなことを言われればまた勘違いしてしまうに決まってるじゃないか…!

じわじわと熱を持つ頬を隠すように堀ちゃんの後ろに回ると
「もうこの話終わり!」早く野崎探すんでしょ と堀ちゃんの背中を押した。


振り返った堀ちゃんは相変わらず微妙な顔をしていた。

前 戻 次

トップページへ