妊娠

名前と一緒に上京してきて2人で暮らすには狭いアパートに住んでいる。
戦隊モノの撮影終わりに玩具のしか渡せてなかったものをやっと買うことができた。ブランドものには程遠いけど。

「ただいまー」

玄関から声をかけても返事がないことに寝ているのかもなとできるだけ静かに部屋の中を歩いて電気がついているリビングに入るとソファの上で寝ている名前を見つけた。
寒い時期ではないけど風邪を引かないようにと背もたれにかかっていたブランケットをかけようとしたとき名前の目が開いた。

「起こした?」

「んん、寝てた」

「うん」

「おかえり」

寝起きの顔で笑った名前が腕を広げて呼ぶから遠慮なく抱きしめる。挨拶のキスは当たり前になった。

「眠い?」

「ちょっとだけ」

「渡したいものあるんだけど」

ソファに座り直した名前に買ってきたものの箱を渡すと開けていい?って顔をするから頷いて返す。
箱の中身のペアリングを見た名前は驚いた顔をした後、花が咲いたように笑って抱きついてきた。

「いいの?お金使っちゃって」

「俺がしてほしいし、俺もしたいから」

箱から大きい方の指輪を取って俺の指に嵌めてくれたから俺も名前の指に指輪を嵌めた。婚姻届を出したのはもう2年くらい前なのに指輪をしてる手を見ると結婚してるって実感できていいなと思った。

「私も見せたいものがあります」

「なーに」

「これです」

「……母子手帳?」

「とエコー写真」

「……赤ちゃんできた?」

「2周目だって。嬉しい?」

「めちゃくちゃ嬉しい。けど同時に不安」

「私も。頑張んなきゃね」

「うん。頑張る。ありがとう名前」

自然と泣いてしまう俺の涙を拭ってくれた名前ときつく抱きしめあった。