出産


「双子だって」

「ね、びっくりだわ」

妊娠していたことに驚いたばかりでまだ実感もできていないまま検診に来て言われたのはお腹の中に2人いるということ。
エコー画像を先生と一緒に見ながら2つある小さなものを指差しながらこれが赤ちゃんですと言われて暫く目が離せなかった。

家に帰ってきて既に少し膨らんでいる名前のお腹に触れてここにいるのかとじわじわと沁みてくる。

「まだ動かないよ」

「わかってる。なんか触りたくなる」

「私も気づくと触ってるかも」

「名前、今から考えとかなきゃな」

「生まれるときに焦らないようにね」




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なんて言っていたのが嘘のように今まさに生まれそうな現場に立ち会っている。
双子だからか予定日より早まった出産で初めてということもあって俺も名前も緊張してるし痛いくらい握られた手からどれだけ痛いかが伝わってくる。ありきたりな言葉しか言えない自分に苛立ちながら生まれるのを見守るしかできない。

「頭見えてきましたよ!」

先生がそう言ってから長かったのか短かったのかわからないまま産声を聞いて自然と涙が出た。
汗だくで涙とかでぐちゃぐちゃになってる名前にありがとうと声をかけると薄く笑ってくれた。

「元気な男の子と女の子です」

あまりお母さんに負担をかけずに生まれてきてくれた双子が名前の腕の中に移動させられる。潰さないように一緒に抱きしめて感謝の気持ちを伝えるように小さな頭を優しく撫でた。

「生まれてきてくれてありがとう。樹、椛」