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「ねぇ!また冒険の話して!!面白いやつ!」
「もう面白ぇのは大体喋っちまったしなー。」


一通り食べるものも食べ終え、今はまだ残っているメンバーで談笑中だ。
ハートの海賊団は皆お酒大好きだったから知らなかったけど、海賊の中にもお酒が弱い人はいるみたいで。

食べながら嗜む程度にしか飲んでいなくても、顔を真っ赤にして寝ると船に戻っていくクルー達もちらほら居たりする。

つまり、今残っているメンバーはお酒も強くて飲みたがり。
必然的にそういうことになる。


「なんかあるでしょー?話して話して話してー!」
「なんかあったかー……?って考えてる俺から始まるー!?」


クルーの数も結構いるだけあって、スペード海賊団のお酒大好き組の人数もそれなりに多い。


「「「「いぇーい!!」」」」
「たけのこにょっきゲーム!!」


そして船長のエースが宴好きの愉快な人だけあって、クルー達もそれはそれはノリが良い。


「「「「いぇーい!!」」」」
「たけのこたけのこにょっきっき!1にょっき!!」


お酒も好きで騒ぐのも好きとなると、こういうゲームが始まる訳で。
皆ニヤニヤ周りの出方を見渡しながら、おでこの前で手を合わせている。


「「2にょっきっ!!……あ。」」


1から語尾ににょっきを付けながらカウントして行って、発声する人は額の前で合わせた掌を上に突き上げる。

誰かと被ったら負け。
負けた人達が一気飲みだ。


「お前被せんなよっとに。」
「お前も飲みてぇんだろ?」


この単純な飲ませゲーム、スペード海賊団の皆は色んな種類のそれを知っている。

ナンバーワンゲーム、パミュパミュゲーム、古今東西ゲーム……
楽しいんだけど、敗けが混むと結構悲惨なことになる。

まだ序盤なこともあって、負けた二人はぐいっとアップルブランデーを一気に飲み干した。


「おいウイ。お前がエースにまた冒険話とか聞こうとすっからこうなったんだろ。」
「エイト酷ーい。言いがかりだ言いがかり。」


私もね、騒ぐのもお酒も大好きだし

飲みたがりに飲ませるのも、大好きだよ。



「そうだぜエイト。ウイ悪くねぇじゃん!言いがかりはよせよ。」
「ホント酷いわー……ってそんな私から始まるー!?」


エースと私はニヤリと顔を見合わせた。
きっと同じこと考えて乗って来たんだろう。


「「「「いぇーい!」」」」
「ナンバーワンゲーム!この中でー、一番言いがかり付けそうな人ー!!」


エイトが頭を抱えて項垂れる。
他のメンバー達はニヤニヤ笑いながら、決ーまった!と人差し指をスタンバイ済みだ。


「「「「ナンバーワン、ナンバーワン、ナンバーワンっ!!」」」」


全員の人差し指がエイトに集まった。
……諦めが良い。

エイトも自分で自分を指差し、逆の手にはアップルブランデー入りのコップを持ってスタンバイ済みだ。

皆のナンバーワンコールに囃し立てられながら楽しそうにそれを煽るエイト。


……良いな、エイト。


きつくなってきてから連続負けは厳しいけど、
私も飲みたい。


「っとにお前マジ最悪!!鬼!悪魔!!」
「え?エイトもしかして、女子を虐めてる……!?」


わざとらしく口元に握りこぶしを作って、エイトを上目遣いで見上げると
流石に2回目は私の思惑に気付いたらしい彼は必死で謝ってきた。


「いやマジちょっと休憩!落ち着けウイ!」
「私は落ちついてるよー!落ち着きないのエイトでしょ?落ち着きない人……?」


またもや口元に握りこぶしを作って上目遣いでエイトを見上げると、マジ勘弁!とエイトは船室へと逃げていった。

それをげらげら笑いながら見てる皆。

ハートの海賊団とはまたノリがちょっと違うけど、こういうのも楽しいな。


昼間ベポと電話したのもあってか、前にハートの海賊団の皆を潰そうとした事を思い出した。

トランプ配って弱い人が飲むとか言うしょうもないゲームじゃなくて、こういうのあの時知ってたら、もっと楽しかったんだろうな。


ゲームは一時休戦なのか、わいわい話している皆を眺めながら
自分のグラスに口をつけた。


「お前それ癖?」
「え?」


隣に座ってるエースに声をかけられたけど
癖かと聞かれた行動は、何を指しているのかが分からない。


私、なんか変なことしてた?



「それ。たまにそのピアス触ってんじゃん」
「……え、ほんとに?」


マジか。

全然気付かなかった。
皆のこと考えてたからかな。

なんか、……恥ずかしい。


「もしかして、ローってヤツにもらったのか?それ。」
「なんで分かるの!?」


エースはエスパーなの……!?
さっきもハートの海賊団に好きな人居ることバレてたし。

私は眉を寄せてエースを睨みながら、じりじりと距離をとった。


「ホント分かりやすいのな。俺らと飲んでんのにそいつの事考えてたのか。へぇー……。」
「ローのことだけじゃないもん。皆ともゲームでお酒飲んだりしてたから、それ思い出してただけだもん。」


そう言えば、ベポもディゼル達に私のこと駄々もれピンク頭とか言ってたみたいだし
ローにも考えてることを見透かされる事が何度かあった。

ローはなんていうか、そういう人だけど。

なんだ。
エースが凄いんじゃなく私がヤバいのか。


「……仲良いんだな。」
「うん!すっごい仲良しだよ!!」


良かったなって、エースはそう言うと飲ませ合いが勃発してる集団に混ざりに言ってしまった。

なんだか今日のエースは、飲まされなくても結構ハイペースで飲んでる気がするけど
大丈夫だろうか。

駆けつけ一気だと早速飲まされてるエースを眺めながら、明日の朝の彼の体調が少し心配になった。



「ちょっとー!!吐かないでよ!?トイレ行く?」
「っるせぇな。よってねぇよ!」


出たよ。
酔っ払いの常套句。




あの後エイトと二人で考案した
“ドSなエーススレスレで逮捕ゲーム”のせいで

エースはものの見事に潰れた。

“ドエスなエーススレスレで逮捕“
このセリフを時計回りに一回ずつ増やして順に言っていくゲーム。

噛んだら負け。
負けたら一気。

そのゲームを始めた時点で結構酔っぱらってたエースは
まだそんなに長くなる前の時点で


『ドエスなエーススレスレで逮捕!ドレスなエース……あ。』


それは見事に噛みまくった。
そして飲みまくった。




そして今に至る。

泥酔中で、しかも悪魔の実の能力者のエースを
船に帰す為に海の上を渡らせるのは危険だ。
危険過ぎる。

今夜はエースをフリーウィングで預かる事にして、こうしてエイトと二人で運んで来た訳だ。


ソファーに倒れこんだエースから、既にいびきが聞こえてくる。 


「やれやれ。大丈夫かな、これ。寝ゲロとかしない?」
「流石にそこまでひでぇのは見たことねぇけど。」


呆れた顔で寝こけるエースを見下ろすエイトと私。

酔っ払いの介抱は大変だけど、でも凄く楽しかった。







「じゃぁ悪ぃけど、エースよろしくな!」
「はーい。わたひもねむひ。」


船に戻るエイトを、欠伸をしながら見送った。

酔っ払いが寝てるだけなのに、同じ船に誰かが居るっていうだけで
なんだか心持ちが違う気がした。


「おやすみ、エース。」


リビングの明かりを消して、お風呂に向かう。

私も何だかんだで結構飲まされた。
今夜はもう寝よう。



お風呂も上がって、髪も乾かして
そろそろ寝ようかなって思ってたら

ふと思い出した。


「仕方ない。分けてやるか。」


部屋を出て、向かいの扉を開ける。

もう諦めて掃除はちゃんとするようにしてるけど、この部屋の配置はローがここを使っていた時のまま。

最初はする気がした残り香も、流石に消えてしまった。


「あったあった。」


ローお手製の、二日酔いに効くお薬。
私もこれにはよくお世話になったもんだ。

エースが二日酔いで苦しんでる所はまだ見たことないけど
あれだけ泥酔したエースも初めて見た。


「確か、二日酔いの原因物質を早く分解してくれるんだよね。コレ。」


叩き起こしてでも今飲ませた方が良さそうだよね。
でも、起こして起きるかな。

階段を降りる途中でも既に聞こえてくるエースのいびきに
やっぱり飲むのは朝かなって思わなくもない。

タンブラーにお水を準備して、薬と一緒にリビングのテーブルにセットしてみた。


「エース!お薬飲める?これ飲むと明日具合悪くなんないよ!」




ぐー。


予測はしてたけど、全く起きる気配がない。


「エース!ねぇ!ちょっとだけ起きてってば!!」
「……うん?どうした?」


肩を揺さぶってみたら、意外と寝落ちする前よりしっかりした口調のエースがゆっくりと体を起こした。

虚ろな目をしてるこの様子だと、半分寝ぼけてるんだろう。


「二日酔いに効くお薬!分けてあげるから飲んでから寝て!」
「……ウイ?」


ぼんやりと視線を上げるエース。
呆れた顔を浮かべてる私と目が合った途端





「ぅえっ!?ちょっ!!」


それまでの様子からは想像も付かない程機敏な動きで腕を引かれた。

引かれるがままにエースの胸に飛び込んでしまった私を、エースの腕が抱き締める。

寝惚けてる酔っ払いの割に、私の重さでエースが倒れてしまうことはなくて。
首元に顔を埋めてるエースは、案の定というか何というか

半端なく酒臭い。


「酒臭っ!!ちょっと酔っ払い!寝惚けてない……」


酔っ払いを窘めようとエースの胸を押した。
逆らう気もないらしく、押されるがままに腕の力を緩めてくれたエースの顔が



近すぎて見えなくなった。



さっきまでと比べ物にならない程
感じるお酒のにおいは、濃くなった。




destruct at reality.