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覇王色の覇気を扱える人も、とても珍しいみたいで
その中でも他の人と違う亜型らしい私。
「人間としての資質、その辺りにアレの性質が絡んでくるのかもしれないな。」
「?…どういうことですか?」
レイさんは強いだけじゃなくとんでもなく物知りだ。
私も気になるけど、ロー達にも教えてあげたい。
「見たところ…覇王色の覇気を使いこなす他の連中とは、どこか気質が違うように感じる。と、まぁそんな感じだ。」
「覇王色の覇気を持ってる人ってどこか似てたりするんですか?」
口では説明しにくいがなんとなくな、と苦笑いされてしまった。
つまり、私はそれっぽくないのか。
なんか
人間性とか資質とか聞いて、私結構凄いんじゃないかって思っちゃったんたけど
そこの枠に入らないらしい事を聞くとなんだか少しがっかりしたりする。
「エースくんは良い子を見つけたようだな。君たちに会えて良かった。頑張りなさい。」
「え、あ、ありがとうございます。」
付き合ってはいないんだったかな、と再び笑いだしたレイさんに少し居たたまれない気持ちが生まれる。
お祖父さんじゃなかったとしても、レイさんにとってエースは特別な存在なんじゃないのかな。
そんなエースの気持ちに応えられないことも
甘えっきりでズルいことしてるのも自覚があるから
なんだか申し訳なくなってくる。
「ウイ!!そろそろ行くぞ!」
「あ、うん!」
すっかり話し込んでしまった。
レイさんに色々教えて貰ったことのお礼を伝えて、フリーウィングに乗り込む。
「行ってこい!健闘を祈っている!!」
「ありがとうございます!レイさんも!お元気で!」
船が港から離れると、大きなシャボン玉が2つ、船を覆うように出現した。
これで海の中を進めるようになるのか。
凄いな。
海岸で手を振ってくれてるレイさんに、笑顔で手を振り返した。
海面に潜ってその姿が見えなくなるまでずっと。
エースは横でただ突っ立ってそれを見てたんだけど、なんとなくレイさん喜ぶかなって思って。
無理矢理エースの手をレイさんに向けて振らせてみたんだ。
それを見たレイさんは、やっぱり嬉しそうに笑ってくれてた気がした。
海の中の世界は、やっぱり想像以上に幻想的で綺麗だった。
ある程度の水深までなら巣潜りで何度も見たことがあったけど、水の中で目を開けているとここまで鮮明には見えない。
呼吸の制限もあるから、ゆっくり見ていることも出来なかった。
「綺麗だねー。」
「そーだな。」
気のない返事をしながらも、エースも結構キョロキョロ周りを見てて。
すぐ近くを進むスペード海賊団の船でも、皆が甲板に出てきて海中の風景を楽しんでるみたいだった。
海の中も綺麗だけど、ここから見上げる海面が凄く幻想的。
暗い海の中を照らす海面が、波の影響なのかスポットライトみたいに所々を白い帯みたいに揺らめいてる。
海の中って暗いんだな。
上から見てたり海面近くに潜ってると、青ってイメージだったけど。
ローがいつも見てる景色を知れたみたいで、なんだか嬉しい。
水深が深まるにつれて、海王類や大きな魚達が多くなってくる。
なんだか本当に、味知の世界だ。
「飽きねぇの?」
「エース飽きちゃったの?戻ってて良いよ。私もう少し見てる。」
何が面白ぇんだかって頭を掻いてるエースは、文句を言う割に結局傍に居てくれて。
戻ろうぜって言いたげなその視線が分かりやすくて面白い。
エースだって最初は結構はしゃいでた癖に。
「ねぇ、あれ食べたら美味しいかな。」
「食い応えはありそうだな。」
見たこともない大きな魚をネタにあれこれ話ながら、船はどんどん深海へと進んで行った。
暗くて、静かで、すぐ近くのもう一隻の船に皆がいることは分かってるのに
シャボンで隔てられているせいか、なんだかこの世界に私とエースが二人だけになってしまったような
そんな感覚に陥ってしまう。
「あの魚、カレンっぽい。」
エースが指差したのは、猛スピードで小魚の群れを追い回すサメ。
なんか分かるかもって思って、思わず笑ってしまった。
なんだか人って、ちっぽけだなって思ったんだ。
知ったつもりになっていても、知らない世界がまだまだ沢山ある。
「楽しみだね!魚人島!」
海底に目を向けて、まだ見えてこない次の島に思いを馳せた。
海中を何日か旅した後、魚人島に着いた。
暗い海底で光を放つその島はとても幻想的で
思わずため息が出るほどだった。
大きなシャボンで覆われた魚人島。
それを貫くようにはえている、陽樹イブ。
本で読んだことがある。
世界で一本しかないこの樹。
マリージョアで葉を生い茂らせているこの樹は
太陽の光と酸素を根に届けるって。
そこには人魚達が暮らす国があるって聞いていたけど、お伽噺か何かだと思ってた。
まさか本当に本の中の国が実在したなんて
そこを訪れることができるなんて
夢にも思わなかった。
島に上陸したらしたで、そこは島全体がテーマパークみたい。
お家や街並みもどこかメルヘンチックで、活気溢れる国。
女の私から見ても魅力的な人魚達。
キャラクターみたいな魚人達。
まるで本当にお伽噺にでも出てきそうな大きなお城。
街の中央に立てられた、見慣れぬ海賊旗。
その旗は白髭海賊団のものらしくて、その白髭こそが噂の四皇の一角。
新世界で縄張り争いをしている大海賊団の船長らしい。
もうこの場所から四皇の縄張り争いは始まっているみたい。
縄張り争いって言っても、特に戦争とかしてる訳じゃないみたいで。
新世界の四大勢力の力はそれぞれ強大。
その縄張りに手を出せば即ち、四皇を敵に回すことになる。
占領されてるってよりも、その大きな力で他の海賊達から守っている。
そんな印象を受けた。
魚人島では白髭を悪く言う人なんて一人も居なかったから。
むしろ英雄扱い。
エースはそんな英雄すらもいつか越えてやるって意気込んでたけど
私はどんな人なんだろうって、ちょっと気になったんだ。
魚人島では皆で名物のマーメイドカフェに行ったの。
綺麗で色気ムンムンの人魚の店員さんに鼻の下を伸ばす皆には、呆れたとしか言いようがない。
ペンギンやシャチなんて、こんなとこ来たらハッスルし過ぎて大変だろうなって思った。
エースも、しっかり鼻の下を伸ばしてデレデレしてたし。
からかってみようってわざと冷ややかな目でそれを見てた私に、必死で言い訳するエースがなんだか可笑しかったな。
ローも、流石にここではこうなっちゃうんだろうか。
あのポーカーフェイスがニヤける所なんて想像出来ない。
でもどういうリアクションするのかなって気になった。
魚人島では珍しい物を沢山売ってて
新世界用の指針が3つに増えたログポースでしょ。
後は海底ならではの鉱石や七色に光る珊瑚。
本なんかも見たことがないものが沢山あった。
私がガサツだからって、割ってしまっても付け替えられるように
ログポースのベルト部分を取り外し出来るようにしてくれた皆に感謝だ。
この先もまたこれを使える。
新世界用のログポースをお店の人に付け替えて貰って
改めて素敵なもの貰っちゃったなって嬉しくなった。
買い物を楽しんだり散策したり。
魚人島で過ごした毎日は非日常って感じで、旅行にでも来てる気分だったな。
ずっと航海してるから、毎日が旅行みたいな筈なんだけどね。
それだけ特別感があったんだよっていう話。
ハートの海賊団の皆にこのわくわくを伝えたいのに言えないのが本当にもどかしかった。
言いたくて仕方ないのに言ったらまずい。
だからね、この時程定期的にかかってくるペンギンからのでんでんむしが楽しみだったことはなかったんだ。
ペンギンは適当な相槌しかしなかったけど、私の話をちゃんと聞いてくれて
『良いなー人魚。』っていう、らしい感想だけくれた。
皆とも来たいなって、凄く思った。
ずっと居たいなって思うくらい魚人島を気に入ってしまったんだけど、やることが待ってる。
そういう訳で、新世界に向かう為に私たちは出航した。
来る時と同じようにエースがフリーウィングに乗ってくれて。
こっちにいる間エースはリビングで寝起きしてたから。
朝起きてきて、フリーウィングの中に人の気配があるってやっぱり良いなって思っちゃった。
イビキは煩いんだけどね。
海中を進む間に、エースに覇気の修行を付けて貰ってた。
全然さっぱり感覚が掴めなくて。
でもしないよりマシだろうって思って、頑張ってたんだ。
ペンギンが手放しでドフラミンゴと会いに行く事を認めてくれた訳じゃないってちゃんと分かってる。
後悔させないって約束した。
きっと今も心配、かけちゃってる。
万が一何かあればローも凄く怒ると思う。
怒って、悲しんで、そして傷付けてしまう。
ローの冷静な頭をそんな感情で埋め尽くしてしまってはダメだ。
役に立ちたいから行くの。
私のせいで、ローがこれまで準備してきたことを覆すような事になれば
私は例え死んでも死にきれない。
ついこの前実感したばっかりだ。
ローだって信念が揺らぐ事があるって。
大丈夫。
ドフラミンゴが私とローの関係に気付いているとも限らないし
例えそうだとしてもドフラミンゴは私に手を出せない。
ベガス聖が守ってくれる。
会合の時に何て聞かれても良いように、何パターンも会話の返しを頭の中でシミュレーションした。
これで覇気も使えるようになれば、更に安全かなって思ったんだけど。
「全然感覚掴めなすぎて、これが難しいのかすら分かんない。」
「そんなもんだ。たった数日で使いこなされてたまるかよ。」
上手くいかずに不貞腐れる私に、エースが呆れた視線を投げ掛けてくる。
結構覚えは良い方だと思ってたから、修行したらもしかしたらすぐ出来るようになるのかもって思ったのに。
暗かった海中の中に、ゆらりと白い光の帯が一瞬出現した。
もうすっかり慣れた海中の航海も、そろそろ終わりが近いらしい。
「もう海面に近いのかな。今の見えた?光っぽいの。」
「もうそんな経つのか。早ぇな。」
二人で海面の方を見上げていると、やっぱり気のせいじゃない。
上の方が少しずつ白んで来てるし
射し込んでくる光の帯がまた見えた。
「どんなとこだろうね、新世界。私グランドライン入った時、あまりの代わり映えのなさに驚いたわー。」
「は!?テンション上がるだろうが!!あー、腕が鳴るぜ!」
前半の海では不完全燃焼に終わったエースは相当鬱憤が溜まっているらしい。
バキバキと指の関節を鳴らしては楽しそうに海面に目を向けるエースは、やっぱり海賊で男の子だ。
今まで考えたこともなかった。
戦う事が楽しみって思うその気持ち。
でもあれだけ強かったら、楽しみにもなるのかな。
甲板で火を纏いながら体慣らしだと跳び回るエースを見ながら、そんなことを思った。