11-10
「本っ当に大丈夫か!?」
「俺が着いて行こうか?なぁ!親父!!」
「いや親父連れてけよ寧ろ。」
「たまにはそれも良いな…グララララ!」
心配性が…増えた。
「大丈夫だよ!パパに旗貰ったし!フリーウィングは危ない航路避けてくれるから!」
「本当かー?じゃあこれ持ってけよ!」
「これも!」
「いや、これのが殺傷力は強ぇ!」
いや、こんな持ち上げるのも一苦労な武器渡されても…
「良いか!?これならお嬢でも使える!但し肘伸ばすなよ!!腕イカれるぜ!!」
んなモン渡すな!
より怖いわ!!
ブラーヴェの皆が新しい事務所に移ってきた。
そろそろ新世界の新店舗も考え時だねって話になって、私は久しぶりに一人でデロアに向けて出航する事にした。
エースは俺も行くって聞かなかったんだけど、最近特に精力的に陣地を広げる活動をしてるの、見てて分かっちゃうから。
きっと縄張りを荒らしまくった罪滅ぼしみたいな意味もあるんだろうなって。
パパに貰った海賊旗があるから大丈夫!ってなんとかエースを宥めて、やっと出発しようとしたら
白髭海賊団の皆やパパまで着いて来るって言い出した。
嬉しいけど、心配性すぎる。
大丈夫って丁重にお断りして、護身用にって渡された武器も返して、やっと出航出来て、今に至る。
「んー!!一人ぼっち、久々だ!」
フリーウィングの甲板で伸びをすれば、見上げた先の空でカモメ達が戯れてた。
人の気配のしない船室も、甲板も、あれだけ寂しくて嫌だった筈なのに
今はもう怖くない。
私には帰る場所がある。
待っていてくれる人が居る。
でもこう思えるのって、パパのおかげだと思うんだ。本当に。
もし、誰かが私の事嫌になっちゃって離れて行こうとしても
パパがそれをあの驚異的な強さと力でなんとかしてくれちゃうと思うから。
そんな事言う人がもし居たら、パパの鉄拳制裁が待ってる。
白髭海賊団にとって、パパは絶対だ。
どうだ!!
私のパパ凄いだろ!!
「ふふふっ。」
我ながら呆れた思考だ。
でも、絶対皆が裏切れないって状況になると今度は正反対の考えが思い浮かぶ。
皆は、パパに怒られなくても私を裏切ったりしない。
本当に、勝手なことばっかり考える頭だなって思う。
私は、乗り越えたんだろうか。
いや、これもう大丈夫なんじゃない?
これってちょっとタイミングなんじゃない?
ローに告白するチャンス!
いや、チャンス?
違うな。タイミング?
……今なら、ローに言えるかな。
もし、ローがこの先私を嫌いになってしまう事があっても
私には皆が居る。
もし、ハートの海賊団を追い出されてしまっても、私には帰る場所がある。
保険かけてるだけだ。
全然解決してない。
でも、今なら平気。
怖くない。
「よし!」
引っ張り出して来たでんでんむし。
それにハートの海賊団の番号を打ち込む。
「だっはー!!…ダメだっ!何て言うの!!いきなり!!何て切り出すのよ私!!」
それを押せば黄色い潜水艦に繋がる最後の番号を、どうしても押せなかった。
ダイニングテーブルに突っ伏して不気味な顔のでんでんむしを見つめる。
『よう根性なし!チキン野郎!』
この無表情の憎たらしい虫は、いつかも私の心を抉る言葉を吐いた。
『つーかおまえ、散々好きとか言っといて今更なんじゃね?』
……そうだ。
私なんだかんだで、常日頃ローに好きって言っちゃってるわ。
やっべ!!
どうしよ。
え?本当に今更私何て言えば良いんだ?
『かける勇気もねぇ癖に起こすんじゃねーよ!タコ!!』
あ、なんかごめんなさい。
本当そうですね。
いやいけると思ったんだけど。うん。
自分の妄想だって分かってる。
でも、でんでんむしの言葉は結構案外痛い所を突いた。
いや、私が喋らせたんだけど。
私、今更ローに何て言うの?
お待たせ!付き合おう!
とか?
好き!抱いて!!
とか?
『おまえ頭ん中そればっかだな。ドエロ。』
「っきゃー!!」
我ながら恥ずかし過ぎて思わず叫んだ。
え?ちょっと待って。
私はローが好きで、ローも私が好き。
それはもうお互い分かってる事だ。
『俺はお前が好きで、お前も俺が好きなら問題ねぇだろうが。』
いつか押し倒された時のローの大人の色気溢れるその顔を思い出して、とんでもなく顔が熱くなった。
好きで、好き。
確認?おっけー。
次…ちゅーか。
…したな。
ここで止まってる。
ここで我らの関係、停止。
これ以上。
この次の段階……
「きゃーっ!!」
『いい加減にしろよ色ボケ女。煩ぇ。』
ダメだ。
どんな伝え方しても、そうなる感じになるよね。
それってつまり、私がそうしてってお願いしてる感じというか
オッケーカモン!って言った事になると言うか…
『面倒臭ぇからさっさとヤってこい。』
「面倒臭いとか言うなぁっ!!」
いや、でも、待って。
落ち着こう。
ローも迎えに来るのは強くなってからって言ってたなら
私が大丈夫でもローは大丈夫じゃないのか?
っていうか二億になったばっかりじゃん!
ローの強くなったっていう基準はどこで!!
それはいつなの!!
なんかもう訳分かんなくなってきた!!!
腹立つ話し相手をすがるように見つめるけど
実際この子が声をかけてくれる事はない。
っていうかそもそも。
でんでんむしって、何で離れた所に居る人と話出来るんだろ。
これ、野生のでんでんむしっていう虫に何かするとこうなるんでしょ?
気になる。
『色ボケはもう良いのか?本っ当にめでてぇ頭だな!』
煩いよ。
でも、気になる。
調べて見ようかな。
これは特殊な電波みたいなのを発信して、もう片方で受信してるんだよね?
お互いのでんでんむしの番号も、私たちにとっては数字の組み合わせだけど
それをこの子達なりの信号に変えてどうにか波長を合わせてる筈だ。
なんで今まで気にならなかったんだろ。
ぷるぷるぷるぷる
ぷるぷるぷるぷる
「っ!?」
ぷるぷるぷるぷる
ぷるぷるぷるぷる
なんの偶然だ。
この目付きの悪さと帽子、目の下の隈。
これは間違いなく
……ローさんからの電話じゃないか。
「もし、もし。」
『おまえ今どこいる。』
ぎくり。
落ち着け。
もう新店舗担当のアオイとディゼルがこっちに向かってる。
私は今、新世界。
嘘付かんでも大丈夫。
『おい。』
「ダイニングにおります。ハイ。」
そもそもなんでローは今のタイミングでそれを聞くんだ?
最近の新聞は隅々までチェック済みだ。
私の事も、エースの事も報道されてない。
ブラーヴェにも口止め済み。
私が新世界に居るなんて情報、ローが知りようがない。
『そういう意味で聞いてんじゃねぇ。どの辺りの海域にいるかって聞いてんだ。』
「新世界のデロアって島に向けて航海中であります。」
『は!?』
おお。
ローが結構なリアクションで驚いた。
レアー。
ん?
やっぱ知らなかったのか?
「なんで?」
『一山片付いたから近くに居んなら行こうと思った。』
なんで私今新世界になんて居たのよ!!
ローが折角会いに来てくれようとしてたのに!!
散々新世界で良いことあったのに、私の頭はローが絡めばすぐこれだ。
なんて現金なヤツ。
我ながら酷い。
「…会いたかった。」
『なんでそっちに居る。』
新世界にブラーヴェで新店舗の出店を考えてることとか、エース達が新世界に行こうとしてることとか、時間軸は色々狂ってるけど当たり障りなくそれを話した。
途中でエースの七武海の記事に白髭狩りとか書いてあった事を思い出して一人肝を冷やしてたんだけど
ローの中ではあの記事はデマって事になってるらしくて。
事なきを得た。ラッキー。
『もうこっち側には来ねぇのか?』
「まだメインはそっちの店舗の方が多いから、行くよ!」
レッドラインが隔てた別々の海に居ることを、残念に思ってくれてるみたいなローの口振りが嬉しい。
ドフラミンゴの方も今は様子見だし、一人でもパパの海賊旗がある。
私あっち側に戻ってみようかな。
『俺らはまだそっちには行けねぇ。』
「いつ来るの?」
ため息と共に聞こえてきたローの声。
新世界は覇気使いがうじゃうじゃ居るから、完全に習得できてない皆はまだこっち側には進まないんだって。
流石ロー。
慎重!
計画的!
素敵!
……私今、言ってみた方が良いんだろうか。
「ねぇロー。」
『なんだ。』
ローは何て答えてくれるかな。
「あの…ね!」
言い出そうとは試みたものの
何て言うんだっけ?
いや、そもそも決まってなかった。
確実に見切り発車。
「えーっと…ね、」
『なんだ。また悩み事か?』
ええ!
あなたの事で!
絶賛悩み事中です!
…とは言えない。
「あの、ローは…どうなったら自分が強くなったって、思う?」
逃げた。
逃げてしまった。
でもそれも聞かなきゃいけないこと。
いつになれば、ローは私を迎えに来てくれるのか。
「ロー?」
『…なんでそうなった。意図が見えねぇ。』
なんでそう深読みするかな。
私は恥ずかしくなく自分の問題に蹴りが付いた事をあなたに伝えたいのよ。
でもなんか状況的に恥ずかしいのよ。
あなたの出方を窺いたいのよ。
乙女心、分かってよ!
「…ただ気になっただけだよ?」
『…嘘臭ぇな。なんか悩んでんじゃねぇのか?』
電話越しでも嘘付けないとか。
本当にペンギンがあの時ローに話しに行かないでくれて良かった。
でも、なんか声のトーンがいつもより優しい。
私の今の悩みなんて、全然深刻でもなければ私の建前的なものだけど
心配してくれてるのが、嬉しい。
「大好きだよ。」
『なんだ本当に。何があった。』
あ。
やべぇ。
また言っちゃった。
懲りねぇな、私も。
でも、いいや。
こういう大事な事は直接言おう。
「内緒。ありがと、元気出た。」
『…益々意味分かんねぇ。何かあったら言え、些細な事でも。』
どうしよう。
私やっぱりこの人が堪らなく好きだ。
言いたい事と言えばね、パパの事を話したい。
それでね、結婚式の時にはパパと一緒にバージンロードを歩きたいなって。
前のめり過ぎかな。
パパはローにも、俺の娘を泣かせるんじゃねぇぞって脅してくれるかな。
なんか全てが上手く行きそうで、バカになりそう。
「うふふふ。」
『どうした本当に…気持ち悪ぃ。』
良いよ、気持ち悪くても。
きっとキモい私もローは好きでいてくれるから。
本当にどうしたんだろう。
家族が居るって、こんなに前向きに何でも考えられちゃうものなの?
皆は、今までこんな素敵なものを持ってたの?
今までで一番、私幸せな気がするよ。
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