6-25

船に戻ると
ローは皆に出航することを告げ
紙袋からログポースを一つ取り出した。

全く悩みもせずに選んでしまう所は
何て言うか
予想通りで

皆には敵わなくても
私も少しはローのことを分かってきている事が嬉しかった。



「アルト、次の島はアルトでーす!」
「あー。もう一発くらいヤっときたかった。」



ベポにログポースを渡して出航準備にかかる。
シャチは昨日の美人で巨乳でテクニシャンのお姉さんが名残惜しいのか
気だるそうに錨をあげていた。



「そんなに気に入ったなら仲間にしちゃえば良いじゃない。」
「あー。……それはなんつーか、嫌だな。夜だけで良い。」



最低だこの男。
お姉さんもそういうお店で働いている以上
もしかしたらシャチの言葉は称賛に値するのかもしれないけど

別れを名残惜しく思うことの理由がセックスだけと言うのは
全くもって賛同しかねる。

だって面倒臭そうじゃん?無理無理、と言うシャチに心底呆れてしまう。

男の人って
好きじゃなくてもセックスはしたいと思う生き物だっていうのは分かってる。

でもそんな仲になっておきながら
それ以外の時は面倒だと言うシャチの男心が知れない。

そんなにはっきり分けて考えられるものなのだろうか。


私は、ロイにキスされたとき
凄く嫌だったんだけど。


そもそも好きじゃない人とキスなんかしたくないし
それ以上のことなんて更に嫌だろう。


なんとなく自分の唇を触ってみたものの
納得できる理由は見つからなくて



隣でさよなら俺の名器、と更に最低なことを言いながら小さくなっていくジャルタに手を振るシャチにため息をついた。


ベポが出航後の確認を終えて部屋に戻るのが見えたのでそれに続いた。

未だにジャルタを見ながら黄昏ているシャチは置いていこう。

どんなに感傷的になっていようと
理由があれでは全くもって台無しだ。



「あれ?シャチは?」
「昨日のお姉さんとの別れが辛いらしい。」



一緒に錨を上げていたシャチが戻ってこないことを不思議に思ったペンギンにそう聞かれたが
ペンギンはあの女は確かに良い女だったと
シャチの行動を納得したようだ。



「そんなに綺麗な人だったの?」
「俺がヤリたかったぐれぇだ。」



俺の方もそう悪くはなかったんだけどよ、と
ペンギンまで魅了してしまった彼女。

男の人を虜にしてしまう程の美人。

どんな人なんだろうと
その人に少し興味が湧いた。

ローも、そんな美人が目の前に現れたら
コロッと気持ちが傾いてしまうのだろうか。


コレクションケースの上に取り付けた台座からジャルタのエターナルポースを外し
代わりにアルトのそれをはめた。

ジャルタのエターナルポースは
ウォーターセブンの隣にはめ込んだ。




「そういやウイって服も作れんだろ?」
「うん。女物ばっかりだけど。」



ペンギンに言われて改めて考えると
グランドラインに入ってから
ミシンはすっかり休眠中だ。

久しぶりに何か作ろうかな。




「男物は作れねえの?」
「作れなくはないけど、アイディアが思い浮かばないかも。」



男物と女物の構造の違いなんてサイズぐらいだろう。
作れなくはない。


ただ、自分が作る服は自分が着たいと思うものばかり。

男物は全く創作意欲が沸かない。



「オーダーメイドは?」
「それなら、……うん。できると思うけど。」



デザインさえ決まっていれば
形を起こすだけ。

それなら出来そうだ。

先ほどからのペンギンの発言を聞いていると
彼は何か作って欲しいものがあるのだろうか。

何かイタズラでも考えているように
視線を上に向けながらニヤニヤしている彼は楽しそうだ。



「何か作って欲しいの?」
「おう!ちょっとキャプテンにも相談してくる!」



出航すると決まり次第地下一階の書斎へ降りていってしまったローを追って
ペンギンが階段を降りていく。

一体何だろう。


「こんな感じ?」
「そう!そんな感じ!色はー、白だよな?」
「白だな!」



リビングのテーブルで
私を取り囲むようにローを除くハートの海賊団のクルー達が集まっている。



「俺は反対!真っ白になっちゃうじゃん!」
「えー?俺白が良いからお前そのくらい我慢しろよ。」



スケッチブックに彼らの要望を具現化させていく。
どうやら賞金首狩りの最中にお揃いのジャケットを着ていた海賊団が居たらしく
自分たちの海賊団でもお揃いの服を着たいと思ったようだ。

かといって望み通りのデザインが
それぞれのサイズぴったりで売っている訳もなく

こうして私にご依頼が来たという訳だ。

彼らがハートの海賊団の制服?として指定してきたのは
つなぎだ。

確かにそんな特殊なもの
そうそう売っていないだろう。

ベポは体が白いから
白いつなぎを着てしまうと全身真っ白だ。

まあそれもそれで良い気はするけど
ベポは嫌みたいだ。

皆も白は譲りたくないらしい。
ベポ対シャチとペンギンで軽く取っ組み合いが繰り広げられている。

私も白好きだけど、
シャチとペンギンが白が好きだったのは意外だ。




「なんでそんな白に拘るのよ。黒とかカーキとか、紫とか赤とかも良いんじゃない?」




なんだか特攻服を想像してしまう。
すっかり見慣れてしまった皆の顔だが
やんちゃしてそうと言うか
特攻服は似合いそうだ。



「だってキャプテン医者じゃん?医者といえば白衣じゃん?」



そんな理由だったのか。

ん?

ちょっと待てよ。

ってことは



「ねえ、これってローも着るの?」
「全力で断られた。」



だろうな。

ローの普段着ている服を思い返しても
とてもじゃないけどつなぎが好きそうには見えない。

例えそれが医者を連想させる白であっても。

何て言うか、ストリートっぽいものやシンプルなものが好きみたいなロー。

勝手にしろだと、と不服そうにそう言うペンギンは
ローにもこれを着て貰いたかったんだろう。

男の人のロマンと言うか
そういう拘りはあんまり良く分からないけど

皆で同じものを着て
団結を深めようとしている彼らは
なんだか楽しそうだなと思った。


「ベポだけ違う色にしたら?潜水艦黄色だし、黄色とかオレンジとか。」
「オレンジ!俺オレンジが良い!」



シャチとペンギンは不満そうだが
つなぎを着なくてもイメージカラーである白の体毛で全身が覆われているベポ。
統一感が全くなくはないと思う。

デザインは皆同じにする訳だし。






結局自分たちも白は譲りたくない二人が折れて
色は白、ベポだけオレンジに決まった。



「ポケットとか、ベルト通すとことかはいらないの?」
「いるいる!そこはお前に任せるわ。」



細かい拘りがあるわけでもないらしい彼らは
大まかなデザインを指定すると後は丸投げだ。

ずっとこれを着ているつもりなら
ポケットとか結構重要だと思うんだけど。



「俺ベルトに付けるポシェットみてぇなヤツも欲しい!」




すっかりデザインの打ち合わせは終わったつもりでいるらしい彼らは
さっさと他の事に意識を飛ばしている。
ベポは素手で戦うみたいだけど
シャチとペンギンは剣や銃を使うこともあるみたいだし

確かにポシェットみたいなのがあっても良いのかも。
替えの弾を入れたり
剣や銃を刺せるホルダーを付けたら便利そうだ。

なんだか私の創作意欲が刺激されて楽しくなってきた。



ローにも何か作ろうかな。
お揃いのつなぎじゃなくても、同じ海賊団だと分かるような
彼らの海賊旗をどこかに入れた服。

あんなタトゥーを入れているくらいだ。
つなぎや全てお揃いだというのが嫌なだけで
ローもこういうのは嫌いじゃなさそうな気がする。

どんなのが良いかな。
本人に聞いてみるのが一番手っ取り早いんだろうけど
驚かせたい気もする。




そして1つ、決めた事がある。



別れる時のプレゼントとして
これを仕上げて皆に贈ろう。

私が作った服で皆が過ごしてくれるのは
皆以上に私が嬉しい。

本当に
ナイスな提案をしてくれたものだ。

ローにはどうしよう。
上に羽織るロングコートとか、なんか好きそうな気がする。

今まで全く創作意欲が沸かなかったのに
すっかり楽しくなってしまっている自分がいた。


「お前どこ触ってんだよ。欲求不満か。」
「作らないよ?」


全体的に大きめサイズが良いという彼らではあるか
全長と股下、ベルトの位置や袖の長さと大体の胴回りや足回りくらいは採寸しないといけない。

股下を計る為に足の内側にメジャーを這わせる私は
不可抗力で彼らの股関に触れてしまわざるを得ない訳で。

つなぎの足の長さって結構重要だろう。
わざと触った訳じゃないし
むしろ手の甲が少し触れたくらいだと言うのに
全く失礼な人たちだ。

作らねえぞと脅しをかけて睨む私に
ペンギンは慌てて冗談だと宥めだす。



「まあお前にちんこ鷲掴みにされた所で俺全く起たねえと思うし!気にすんな!」
「なんの話だ。そしてディスられてる気しかしないんですけど。」



どうせ色気とかないですよ全く。
俺もウイじゃ起たねえわと爆笑しているシャチもムカつく。
でも一番イラっとするのは
離れた所で苛立っている私を見ながら
目が合った途端にぷっと吹き出すベポだ。



「めちゃくちゃ酔ってる時に全裸で迫られたら何とか反応するかも。」
「バカ。ウイか認識できなくてもそんだけ飲んだらそれはそれで起たねえよ。」



ゲラゲラと笑う二人をメジャーで絞め殺そうかと思った。
二人にそういう目で見て欲しい訳じゃないけど。
ちょっとコンプレックスでもある自分の胸を見下ろすと悲しくなる。

もう殆ど元通りの体型には戻ったものの
前以上に胸が大きくなることはなくて。

全くない訳ではないのだが
人並み以下のサイズだと言うことはちゃんと分かってる。


どうすれば大きくなるんだろ。
そう思って胸を見下ろしてへこんでいると

急に肩を押されてソファーに倒れこんだ。

私の上にはニヤリとイタズラっぽく口の端を吊り上げたペンギンが股がっていて

頭の脇に両手をつくと顔を近付けてきた。


「なによ。」
「いや本当に欲情しねぇのかなと。」


やっぱりしねぇわ、お前ドンマイと頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。

本当に不服だ。
不服すぎる。

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destruct at reality.