「おっまえ、俺の顎が割れたらどうしてくれんだよ!」
「一応ごめんって謝る。」
いてぇと顎を擦る割にペンギンは私の皿からケーキを奪い取っていく。
人に散々言っておいてお前は良いのか。
でも
いつも通り失礼なペンギンに今回ばかりは救われた。
こんな皆が居るところであれは思い出すことじゃない。
宣言通りシャチとベポの分も一口ずつ貰って
お腹は満たされたけど夜ご飯の準備をしなければ。
夕方にケーキを食べたくらいじゃ夜までもたない。
「今日の飯なにー?」
「お肉買ってきたから久々お肉だよー。」
同じタイミングでガッツポーズを取るシャチとペンギンは本当に良いコンビだと思う。
皆が札束が入ってるだろうトランクケースを持って地下に降りて行くのを見送って
私は夕飯の準備に取りかかる。
ペンギンに貧乳だとバカにされた恨みはこれで晴らそう。
今日のメニューは豚カツだ。
思う存分これで肉の繊維を叩き潰してやる。
私はミートハンマーを握りニヤリと笑った。
「あとどんくらいで貯まんの?」
「あと1億ぐらいか?意外と余裕そうだな。」
最初に3億と聞いた時は途方もなく感じたが
意外とすんなり貯まりそうだ。
1億ずつきっちり詰めたいらしいベポがほくほくしながら札束を詰め替えている。
目分量でも二つ目のトランクは埋まるだろう。
「でさー。提案なんだけど、なんかウイにあげたくねえ?」
「良いね!!どうせ後で迎えに来るとしても何かあげたい!」
俺の提案にベポは乗り気だし
キャプテンとペンギンも異論はなさそうだ。
ウォーターセブンまで乗せて貰った上に
今までずっと身の周りのことを文句一つ言わずにしてくれているウイ。
むしろ
彼女がいなければ俺たちは全員今この世にいないだろう。
何をあげても釣り合いは取れない気はするが
お礼の気持ちは伝えたい。
問題は何を贈るか、だ。
「ピアスはどう思う?あいつ面倒臭がりだし他の物だと商品仕込む時邪魔で外すって言ってたんだよ。」
「悪ぃが他のにしろ。」
前々から考えていた案を間髪入れずにキャプテンに遮られた。
「なんで?良いじゃん身に付けられる物。」
「俺が個別にやる。お前らは別のにしろ。」
でたよ。
俺様暴君。
意義を申し立てたペンギンも呆れ顔だ。
「財布持ち別枠かよ。あーあ。何かねぇ?他に。」
金なら出してやると言うキャプテンに途端に表情が明るくなるペンギン。
しかし金なら余る程持っているウイは値が張る物を喜ぶようにも見えない。
「ウイじゃないけど。何か俺たちっぽい、手作りっていうか何か特別なのあげたいよね。」
「お前今日ウイと寝んだろ?何か探り入れて来いよ。」
仕方ないなと眉を寄せるベポには悪いが
欲しい物ならなんでも自分で作ってしまうウイから何かが欲しいと言う発言を聞いたことがない。
ここはベポに任せよう。
「キャプテンどんなピアスあげんの?」
「大体は考えてある。」
まだ入手していないらしいが
考えてあるということは俺が発案する前からそれを狙っていたんだろう。
どうせ聞いても教えてくれない気がする。
キャプテンは俺らの働きが必要な時以外は
何かをする前に人に相談するなんてことはしないヤツだから。
「じゃあ皆おやすみー!」
よほど話したいことがあるのか
夕食を食べた後さっさとお風呂に入ってリビングに降りてきたウイは
俺の背中を押してさぁ寝るぞとばかりに階段を登らせる。
ちらっとキャプテンの顔を覗きみると
もの凄い形相で俺を睨み付けていた。
どうせウイの話なんてキャプテン絡みなんだろうけど
本人はそんなこと知らないんだもんね。
本当にこの二人のまどろっこしさは手に負えない。
「ねえベポー。ローは私のどこを好きなんだと思う?」
そそくさとベッドに入ったウイは
俺のお腹に肘をついてさっそくため息をついた。
一緒に寝る時はもうお決まりの体勢になってしまったそれは
別に重くないから良いんだけど
たまに頭がオーバーヒートしたときにゴロゴロと奇声をあげながら転がるウイはくすぐったい。
今日は大人しく寝てくれると良いんだけど。
「本人に聞けば良いじゃん。」
「聞けないよー!だって私聞かなかったことにしちゃったじゃん。ローもね、多分まだ好きで居てくれてるとは思うんだけど、どうこうするつもりないと思うんだー。」
だぁーもー!と早速転がり始めたウイは昨日の夜の出来事をぽつぽつと話し出す。
聞いてやるから大人しくして欲しい。
「なんかさ、もう本当に自分が情けなくなって来ちゃって。だって聞かないふりしたのは私なんだよ?なのにさー。二人で花火見てたらぎゅってされたくなっちゃって。」
きゃーと顔を覆って再び転がり出すウイは
もう相談とかそういうのじゃなく
ただ言いたいだけなんだろう。
全く自分の心の内を話さなかった彼女にしては良い変化だ。
多少面倒臭いけど
自分だけにこういう面を見せてくれるのは
正直優越感というか
嬉しい。
ちょっと聞いてるのと身を乗り出して顔を覗きこむウイをぎゅっと抱き締めて頭を撫でてあげた。
「よしよーし。色々こじらせて可哀想に。」
「えへへー。もこもこ気持ちいい。」
首に手を回して抱き締め返してくるウイに
キャプテンにこうすれば彼女の下らない悩みなんて一瞬で解決するのにと
なんだか本当に気の毒になって頭を擦り寄せてくる彼女の髪を撫でた。
「とりあえずね、私も自分の決めた事には責任持とうと思って!だってローがね、また花火一緒に見ようって言ってくれたんだよ?」
「はいはい。良かったねー。」
でもやっぱり寂しい、と口を尖らせるウイは
指でくるくるとお腹の毛を玩んでいる。
「なに?俺にキャプテン泥酔させろってそういうお願い?」
「違うよ!!うーん、でもそうなったら良いなとは思わなくもないけど。でもせっかく決意したのに揺らぐじゃない!ダメだよそれは!」
「ウイって恥ずかしがる割に結構欲しがりだよね。」
途端に顔を真っ赤にしたウイは再び奇声を上げて転がり出す。
絶対寝る気ないじゃんウイ。
残念だけどキャプテンがああなるのは自分で飲み出す時であって
人に飲まされたくらいじゃトランスモードにならないよと教えてあげると
そっかーと残念そうに呟いた。
結局の所期待してるんじゃん。
キャプテンに全てを教えてあげたい。
キャプテンの大好きなウイは
かまととぶってる割に
実は頭の中真っピンクだよって告げ口してやりたい。
でも喜ぶんだろうけど
キャプテンはドフラミンゴを倒すまで
本当に何もしないんだろうなと思う。
キャプテンは完璧主義の頑固者だから。
人に指図されるのを嫌う分
自分で決めた事は絶対に曲げない。
適当に相槌しか打ってないのに勝手に喋りまくっているウイの姿を見ると
この二人はどんだけめんどくさい組み合わせなんだろうと今更ながら呆れてしまう。
「ねえー。さっきの話!ベポはローは私のどこが好きなんだと思う?」
「そういう色々ずれてる所じゃない?」
私そんなに変?どこが!?と結構必死で食らいついてくるウイは
自分が変わり者だという自覚がないらしい。
「だってさ、綺麗な人も大和撫子みたいな女らしーい人も、今まで沢山群がってたけど。キャプテン全く相手にしてなかったもん。全部一晩相手しておしまい。そういうんじゃない所なんじゃないの?」
「やっぱりローはそんなに遊び人だったのか。」
しゅんと落ち込み出すウイ。
落ち込ませたい訳じゃないけど
あんなハイスペックな男を世の女達が放っておく訳はないだろう。
「ねえどんな人だった?ローが今までちょめらかして来た女の人。」
「……ちょめらかすって。」
中々愉快な言い回しをする割に
結構本気で気になるらしいウイは真剣な顔で俺の答えを待っている。
「別にこれと言って系統とかないけど。でもキャプテンに言い寄ってくるぐらいだから。皆そこそこ自信ありそうな外見の人が多かったかなー。」
「ですよねー。普通畏れ多くて相手にして貰えるなんて思えないよ。」
じゃあ性格とかは?と聞かれたが
そこは正直分からない。
キャプテンに狙いを絞った女の人は基本飲んでる時からベタベタキャプテンに纏わりついていたし
部屋を取って消えていった後のことなんて更に知らない。
ペンギンやシャチみたいにそういうのをベラベラ喋る人でもなければ
同じ人とは決してしないキャプテンは
島に滞在中に偶然交わった相手と出くわしても凄んで追い払ってしまう。
今更だけど最低だなキャプテン。
シャチやペンギンの方が
デレデレしながらも関係を持った女の人に優しいだけまだマシかもしれない。
「性格とかは分かんない。でもキャプテン来るもの拒まずだったし、それ聞いてもキャプテンの好みの参考にはならないと思うよ?」
再び奇声を上げて転がり出すウイ。
人の上を5回くらい往復した後
なんだか泣きそうな顔になりながらぽそりと呟いた。
「皆とバイバイしちゃったらさ、また、その……。前みたいに百人切りーみたいなローに戻っちゃうのかな。」
「既に百人以上は余裕で切ってると思うよ?敵も女も。」
ぐはぁ!と頭を抱えるウイのリアクションが
申し訳ないけどちょっと面白くなってきた。
もうちょっと虐めてみようかな。
「キャプテン同じ女の人絶対に抱かない主義なんだけどさ、偶然会っちゃったりすると女の人の方はまた今晩も!って寄ってくる訳よ。相当可愛がって貰ってるんだろうね。」
うわぁー!!と何を想像してるのか両手で顔を覆って悶え出すウイは
聞きたくないんだろうけど思い当たる節もあるのか
隠しきれていない耳が真っ赤だ。
何この子。
本当に面白い。