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それから

取り敢えず俺とベポは午前中仮眠を取ることにして
午後からは賞金首の偵察に行こうかという話になった。

俺は残ると言うペンギンに
一人で大丈夫だとウイも中々引かない。


「あの、本当に気を使わなくて大丈夫。なんかごめん。」
「ウイが謝ることじゃないでしょ。」


先程の一件でペンギンだけではなく
俺らもキャプテンとぎくしゃくしているのを感じ取ったらしいウイが申し訳なさそうに眉を下げた。


ウイが原因であることは
紛れもない事実ではあるが

だからといって彼女には何の非もない。




「お前かまくら作るって言ったじゃねぇか。」
「いや、だって……只でさえローも行かないならペンギンも行った方が良いでしょ。」




大丈夫だから!と笑ってみせるウイにベポがため息をつく。




「そんなに資金繰り厳しい訳じゃないし。むしろ足りないようならキャプテンが一人で稼ぎに行けば良いんだからペンギンと遊んでなよ。」
「……ありがとう。」




じゃあおやすみ、と席を立つベポに続いて俺も席を立った。

まともに寝ていないせいで頭痛を感じる。

頭を痛めている原因はきっと

寝不足じゃないことの方が大きいとは思うのだが。



「おやすみ。」



食器を流しへ運ぶウイとペンギンに声をかけ、地下への階段を降りた。













「なぁ。キャプテンどこ出かけるか聞いたか?」
「俺がキャプテンと話してる所なんてあの後見た?聞くわけないでしょ。」



バカじゃないの、と布団に潜り込むベポは大層機嫌が悪い。

その通りだし
気持ちも分かるのだが


八つ当たりはやめて欲しい。




「ペンギンがあんなに頼もしく見えたの初めて。」




ベポはそう言っておやすみ、とこちらに背を向けて寝返りをうった。

平和を求める俺と違って

キャプテンに怒りを感じているベポにとっては

上手いことキャプテンの感情を逆撫でしたペンギンはヒーローにでも見えたのだろう。



先にウイを連れて帰る役回りは
ペンギンにして良かったとは思う。

もし俺なら
この状態でウイと二人でいることだけで、なんだかいたたまれない。



それに、ペンギン程ウイをうまく笑わせてやることも出来ないだろう。




「うわー!!凄い積もったね!」




昨日帰って来たときとは比べ物にならない程

フリーウィング号は全体が雪に覆われて真っ白だ。


今朝がた帰ってきた皆の足跡の上にも既に雪は積もっていて
うっすらと窪んだ円が町の方へと続いていた。



これを辿って行ったら
その先にステラさんが居るんだろうか。



なんだかそれがローとステラさんを繋ぐ絆のように思えて

面白くなくてそこから重点的に雪かきを始めた。




「ウイこっちに雪集めろよ。」



足跡を消すためにだけ雪かきを滑らせていた私にペンギンの批難の声が飛ぶ。




「かまくらってどうやって作るの?」
「あー。うん、なんか納得。」




ペンギンは雪かきの持ち手に顎を乗せて私の顔をまじまじと見ている。




なんだ、納得って。




「お前の話色々聞いてると、雪遊びとかしたことねーんだろうなって思って。」




プロフェッショナルが教えてやるから有り難く思えと威張られた。




確かに雪遊びなんてしたことがない。


雪を見たことは何度もあるけれど
流石に一人で遊ぼうなんて思わなかったし

ここまで積もった雪を見るのは初めてだ。















「ちょっと!!話が違う!雪集める係はペンギンだった筈でしょ!!」



結構な広さと高さがある甲板中の雪を船首部に集めるのは

なんていうか重労働だ。

重労働すぎる。



ペンギンは俺はプロだからこれ以上上手くなんなくて良いんだよと
意味のわからない持論を展開して

集めた雪で山を作るだけでこっちを手伝ってくれる気配が全くない。




「ねぇ。どんだけおっきいかまくら作るの?」




まだ三分の一程しか除雪は済んでいないものの

ペンギンが作っている山は結構な大きさだ。




っていうか疲れた。

ちょっと休みたい。




私は肩でぜぇぜぇ息をしながら雪遊びマスターの見解を待っていると
まあ大きさはこんなもんかと上々の評価を頂けた。


やった。

休める……!!




「ほい。」




立ちながら脱力していると
ペンギンが大型のシャベルを投げてよこした。




「あの、これは……?」
「シャベル。」




知っとるわボケぇっ!!

しれっと答えるペンギンは、それで雪山をくり貫けと言ってくる。




「ちょっと休憩しようよー。もう腕に力入んない。」
「だから二の腕ムササビ化すんだよ。」




私はペンギンの顎を殴り飛ばした。




「ってぇ!!力余ってんじゃねぇかこのバカッ!」
「……何かこのくだり、前もあったね。」



半目でこちらを見下ろしながら顎を擦っているペンギンと目が合うと

なんだか可笑しくて笑ってしまった。







バタン





船室の扉が閉まる音がしてそちらに目を向けると

鬼哭を持ったローが船の乗降口に向かって歩いていく所だった。





「……出かけるの?」
「ああ。遅くなる。」






私の声に足を止めたローは
何の感情も読み取れない顔をしていて


どこに行くのか気になったけど


言葉が出てこなかった。




「……風邪引くなよ。」




それだけ言うと

ローは港に降りて街の方へと消えていった。





ステラさんの所に




行くのかな。















ペンギンが今朝帰ってきたローから石鹸の匂いがしたと言っていたけど


それってつまり


そういうことだ。






せっかく会えたんだもんね。




一緒に













居たいよね。














「ぶはぁっ!!」



急に顔に冷たい物を感じてびっくりした。

雪らしいそれを手で払うと

横にはしたり顔をしたペンギンが立っていて

右手の手袋にはさらさらした雪が付着している。




「……何すんのよ。」
「え?動いたから暑いだろ。あっためた後に冷やすと肌引き締まるらしいぜ?」



お前の美容のことを考えて、と芝居がかった表情でニヤニヤしているペンギンを睨み付けた。


ほらさっさと掘れよと笑うペンギンはまだ除雪が済んでいない所で雪玉を転がしている。








なんか。

ここまでタイミングが良いことがこうも続くと





いくらペンギンのことを空気が読めないとか

そんな固定観念があったとしても





凄く自然に見える行動をペンギンがしていても





流石に分かっちゃうよ。





私が

嫌なこと考えないようにしてくれてるんでしょ?




「なにっ、作ってんのっ。」
「内緒ー。」



ペンギンが固めた雪山は

結構頑丈過ぎて掘るのも一苦労だ。




シャベルを思い切り突き刺して、更に体重を乗せて雪山に突き刺す。

柄に力を込めて雪を掘り起こしては
それを脇に投げる。



とんでもない重労働だ。



ころころと雪玉を転がして大きくしているペンギンの作業重量との差が絶対おかしなことになっている。



「あー。腹減ってきた。今日昼飯何にすんの?」
「肉っ、うどんっ!」



良いねー、あったまりそーとお腹を擦るペンギン。






こっちはうどん食わなくても温まってるわボケっ!!






突っ込むだけ体力の無駄だと思い

心の叫びを飲み込んで必死で雪山を掘り返していると



午後からやろーぜと

つまりお昼ご飯を作れと言われた。












本当に勝手だな。










疲れて休みたい気持ちもあったし


今こうやって私を振り回してくれてるペンギンの心の内を分かってしまった今


こんな我儘くらい聞いてあげたくなってしまう。






「ペンギンも手伝ってね。」
「味見なら良いぜ。」



つまり拒否か。

俺優しいなとペンギンはケラケラ笑っていたけど









本当にペンギンは優しいよね。


そんなペンギンの横顔を見上げると

自然と、頬が弛んだ。






ペンギンは結局手伝うどころか

相当お腹が減っていたのか乾麺のうどんを茹でる前にポリポリと食べてみたり

少し目を離した隙に先に煮ていた味付け済みの肉を摘まみ食いしたりと

普段以上に破天荒だった。



それでいて起きてきたベポとシャチに

今日の昼飯は俺が手伝ったと胸を張って言うんだから




本当に良い性格をしている。




「今日は偵察だけ?」
「うーん。弱そうだったら狩ってくる。なんかそういう気分だし。」



眠る前から不機嫌だったベポが

起きてきても少し苛立っている理由を私は知っている。



「無茶しないでよ?ベポが暴走したらちゃんと止めてね、シャチ。」
「自信ねぇけどベストは尽くす。」



私の親友が怒ってくれてるいるのは
きっと私のせいだ。

もぐもぐとお肉を頬張るベポは、本当に無茶をしないか少し心配だったけど


温かい夜ご飯を準備して待ってようって


そう思った。




ベポとシャチが出掛けてから

かまくらを作り隊は活動を再開した。

結構頑張って掘っていたつもりだけど
作業のはかどらなさに痺れを切らしたペンギンが私からシャベルを奪い取り

あっという間に中の空洞を完成させてしまった。



さすが。



普段はぐだぐだしてるけれど
鍛練中に機敏に動くペンギンの様子を考えれば

体の作りから筋肉の質や量まで私とは規格が違うんだろう。


ペンギンが午前中に転がしていた雪玉は
いつの間にか耳と顔がついていて

ベポくら、とかまくらの上にそれを乗せたペンギンはなんとも満足気だった。




「かまくらの中って温かいねー。」
「風入ってこねえからな。」




流石に立つことは出来ないが

座れば全員で入っても余裕そうな程広いかまくらは
ベポが帰ってきたら俺はこんなにデブじゃないと文句を言いそうだ。



「なあ、今日夜ここで鍋食いたくね?」
「溶けないの?」



外寒ぃし今日作ったばっかりだから大丈夫だろ、と言う雪遊びマスターの言葉を信じて
今日の夕飯は鍋にすることにした。



それからペンギンと夕飯の買い物に出掛けた。

ペンギンは私の目を盗んではあれこれと目に付いた物をかごに入れていく。

1リットル2000ベリーもする特濃牛乳や
プリンや乾きもの系のおつまみ……



何て言うか、やってることも選ぶものもペンギンらしすぎる。



そう言えば、ペンギンと食材の買い出しに来るのは初めてかもしれない。


ローやシャチは基本的に私のペースに合わせてくれるから


こうも好き勝手動き回るペンギンとの買い物は何だか新鮮だ。




結局、
キムチ鍋が食べたいと言うペンギンのリクエストにお応えして材料を揃えたのだけど

ペンギンがトリプル肉ミックス!と牛肉と豚肉と鶏肉をかごに放り込んだせいで

野菜が入る隙間がなくなるんじゃないだろうかと鍋の中身が心配になった。







destruct at reality.