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「抱いた訳じゃねぇが、何もしてない訳でもねぇ。胸張って言えることじゃねぇだろ。」
「まぁなー。いやそれにしてもアレはウケたな。」



けらけら笑うペンギンに何のことかと問うと
ステラから聞いてきた話をするウイは
流石に俺がステラにした事を説明するのにもじもじと口ごもったらしい。



『え?キャプテン結局ステラに何もしなかったの?』
『いや、あの……こうちょこっとそういうことはあったみたい、だよ?』

『えーなになに?キャプテン何やっちまった訳?』
『……こう、友達以上恋人未満的、な?』

『分かんねーよ。何?』
『……手で、ステラさんをご満足させて差し上げた、らしい、です。』

『どうやって?』
『……もー!!やめてよ変態んなこと言わすなっ!!』



けろっとセックスとか言う癖に
そこは照れるのか。

と言うよりも
ステラは本当に詳細までウイに話をしたらしい。




「流石にいくら相手がウイだからってあれはセクハラでしょ。」
「おもしれーから良いじゃん。」



ベポが眉をひそめてペンギンをたしなめるものの
当の本人は相変わらずの様子で反省の色は見えない。



「それで?覇気の修行は順調なの。」
「思った以上に手強いな。集中して一部がやっとだ。」



腕を間繰り上げて意識を集中する。
体の内側から出てくる気を腕に纏うようにイメージして
そこに気を集め、念じる。

この気が何にも貫かれない強固な鎧であるように。




「「「おー!!」」」




腕の一部が武装色の覇気を示すように黒く変色を見せた。




「今はこれだけに集中してこの程度が限度だ。まだ戦闘で使えるレベルじゃねえ。」
「俺ら出来るようになんのか、それ。」
「……なってもらわねぇと困る。」



自信がねぇと口々に話すクルー達にも覇気を使いこなして貰わねば困るのだが
想像以上に難しいこれに戸惑っているのは自分も同じだ。

集中力が必要なこれを戦闘の最中に自由自在に使いこなしていたメルビス。

グランドラインのあんな名の知れぬ島にそんなヤツが居たと言うことは
ドレスローザのある新世界にはそんな連中がゴロゴロ転がっているのだろう。


「ウイはどうした。」
「なんかやることあるからって部屋引きこもってるよ。」



もう大丈夫そうだから好きにさせてる、と話すベポの様子からしても
こいつらはこの一週間、四六時中ウイを一人にさせないように目を光らせていたのだろう。

自己流で覇気を扱おうとしているのか
腕を間繰り上げて力んでいるペンギンはいつもと変わりなく能天気なアホそのものだ。






『いやあるでしょ。是非聞かせて。今後の身の振り方の参考にするから。』






あの日のペンギンの発言が未だに頭から離れない。

前からペンギンがウイのことを好きなのではと思うことはあった。
今回の一件で二人はより距離を縮めたように思う。



「ペンギン。」
「あ?」



何てことない顔で拳を握る手に力を込めているペンギンがこちらに顔を向けた。



「お前、ウイのこと好きなのか。」



当の本人は俺の発言に特に驚いた様子は見られないものの
シャチとベポが分かりやすく動揺を示した。



「なに?それ今流行ってんの?」
「何訳分かんねぇこと言ってんだ。」



目を細めてげんなりした顔を浮かべるペンギンはため息をついて口を開いた。



「じゃあ変なとこそっくりなキャプテンにも質問ね。俺がウイのこと好きだって言ったら譲ってくれたりする訳?」



会話の所々に理解しきれない内容が含まれている。
そっくり、とは誰のことを言ってんだ。



「譲るつもりはねぇ。だがお前が身を引く必要もねぇだろ。」
「へー、意外。諦めろとか言うのかと思った。」



なんだこいつは。
ふざけてんのか?

最近のペンギンには驚かされてばかりだ。



いや、こいつは元から結構肝が据わっている。

今までは胆力の試される出来事がそう起こらなかっただけか。



「俺のことは別に気にすんなよ。好きなようにやるし。」



ウイんとこ行ってきたら?とニヤつくペンギンは
顎で階段の方を指した。
事情が知れてしまったのなら確かにウイともちゃんと話した方が良いだろう。




「キャプテン。」


部屋に居るらしいウイの元へ向かう為
踵を返して2階へ続く階段へと足を進めようとすると
ペンギンに呼び止められた。



「応援はしてるけど。あんま調子乗ってると誰かに横からかっ拐われちまうかもな。」
「どういう意味だ。」



挑発するような顔でこちらを見ているペンギンを睨み付ける。



「さあ?警告?」



ほら行った行った、と手であしらい顔を背けてしまったペンギン。






俺が今回みたいなことをすれば
自分がウイをかっ拐うと、そういう事だろうか。



覇気の修得方法が分かった以上、今回のような事が起こることはそうないだろう。

覇気の存在を知ってから情報を集めてはいたものの
その修得方法に関するものは全くと言って良い程手に入らなかった。

焦っていたのかもしれない。

ウイを早く迎えに行く為とはいえ
確かに辛い思いをさせてしまった。












自責の念で思った自分の言葉に
少し浮かれる気持ちが芽生えたのは気のせいだろうか。



自分が常日頃感じている独占欲を
ウイも抱いてくれていたということを
どうしても嬉しく感じてしまう。



ペンギンはあり得ないと言うのに間繰り上げた自分の腕をシャチとベポに見せながら
少し黒くなったと騒いでいる。

軽くあしらわれても食って掛かっていくペンギンのああいう所は嫌いじゃない。



少し、ウイと似ている所があるペンギン。



ああなりたいと思う訳ではないものの
楽しそうにはしゃぐ二人を

どこか羨ましいと思う目で見ていたことは事実だ。





うかうかしてらんねぇな。





明日からは、今まで以上に修行に精が出そうだ。

盛り上がっているクルー達に軽く息をついて
ウイが居る2階へと階段を登った。



こんこん




「はーい。あっ!!ちょ、ちょっと待って!!1分!!」




ベポのつなぎをミシンにかけていたら
ノックの音が聞こえてきた。

うっかり返事をしてしまったものの
このままではまずい。

オレンジ色のつなぎになりかけた布だけを隠すのは無理だ。

めっちゃ縫いかけ。

ミシンごとクローゼットに押し込んで扉を閉めた。



危ない。
バレる所だった。

しかし誰だろう。
ペンギンはノックなんてしなそうだし

ベポかシャチ?


扉の外に居る人物に検討をつけながらそちらへ向かい
ドアノブを回して扉をあけた。



「ごめんごめ、……ぅえぇえっ!!?」
「……てめぇ。良い度胸だな。」



なんと。


扉の裏側にいらっしゃったのは最近見かけなかったローさんじゃありませんか。



皆は今日話すと言ってはいたものの
こんなに早く帰って来てるとは思わなかったから油断した。

そして想定外の来訪者に心から驚いた私は
無意識に扉を締めようとドアを押して
ローの手がそれを防いだ。



「お、おかえり。」
「ただいま。」



ぎろりとこちらを睨み付けていたローはため息をついて
今時間良いかと聞いてきた。






悪くはないけど
良くもない。


ローとステラさんの事が誤解だったにせよ
なんだかとてつもなく気まずい。

全く何もなかった訳ではないみたいだし
まず私はローが誰とどこで何をしようと文句を言える立場じゃない。

それに私を思って怒ってくれた皆の態度は
ローに嫌な思いだってさせただろう。



かと言ってここでそれを避ければ

いつまでたってもこの微妙な関係は変わらないんだろうし。



「……ど、どうぞ。」



それだけ言うと私はローに背を向けて歩き
部屋の中央にあるソファーに腰掛けた。

部屋の扉が閉まる音がして
その音に緊張が走る。




何か話すことが、あるんだよね?
なんだろう。



クッションを抱き抱えながら
ローがこれから何を言おうとしているのか思考を巡らせて考える。



きっと最近のごたごたの事だろうとは思う。

ただ、
よくよく考えてみると

告白を遮った私は
ローが私のことを好きなことは知らない設定になっていて。



今さらだけど
ローは本当に何も悪いことなんてしてないんだ。



何言われるんだろ。


怖い。




ローの足音が近づいてくる。

それは私の緊張感を増させていったけど



もう後戻りは出来ん。

私は覚悟を決めて向かい側のソファーを見つめて
そこにローが現れるのを待った。







隣から人の気配を感じて
ふわりと微かに懐かしい匂いがした。



振動を感じて、座っていたソファーがそれに応じて盛り上がる。




「なんで、こっち座るの。」
「向かいに座れなんて言われてねぇだろ。」




それもそうだけど。




ひんやりとした室温のせいか

触れていないのに隣からローの体温が空気を伝って伝わってくる。











しーん。


この雰囲気を言葉で表すならこれしかないだろう。


ローはソファーに腰掛けたきり何も話さないし
どんな顔してるのか気になるけど

なんだか今更すぎて
何かを口にすることもローの顔を覗くことも出来ずにいる。




やばい。
これタイミング逃してドツボに嵌まったパターン。





自分が用事あるって来たんだから何か話してよ。





耐え難い空気に神経を磨り減らされながらも
クッションを抱きしめながら
見つめてもバレないローの膝をじっと見つめた。








もう、いい加減にして欲しい本当に。



やっぱり何か声をかけるのもローの顔を覗くのも
勇気は出なくて。

代わりに穴が空くほど見つめてやったローの太股に
人差し指で文字を書いた。



『なに?』



右手の人差し指から伝わってくるローの感触は
デニム越しでも
特に力が入っている訳でもないのに
筋肉感が半端なくて

そう言えばローの脚触ったの初めてだとか
これ痴漢で訴えられないかなとか

緊張しすぎた頭は遂に別の方向へと思考を飛ばし始めた。




「っ!?」




変な方向に脱線しかけた思考のせいで
ローに向ける意識が散漫になっていた。

右側の太股に何かが触れた感覚にビクリと体が強ばり

驚き過ぎて声も出ないまま
ローと逆方向に飛び退いた。




何が起こったのかを知りたいらしい私は
つい、隣に座る彼の方に顔を向けてしまったんだ。

彼も、こっちを見ていて

視線が絡まる。





久しぶりに、ローの顔をじっくり見たかもしれない。



こんな状況でも
あなたを格好いいと思ってしまう私を


手に負えないと、自分で自分に呆れてしまった。

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destruct at reality.