「ソニア!!」
「久しぶりね、ウイ。元気だった?」
ウォーターセブンの港に着くと
既に到着していたらしいブラーヴェの皆がお出迎えしてくれた。
久しぶりなソニアに飛び付くと
優しく抱き止めてくれるソニアに
なんだか母様みたい、と懐かしさを感じた。
「ウイ俺には?」
「アオイでんでんむしの声煩い。」
久々に会ってそれかよと頭をぐしゃぐしゃと撫でるアオイのこんな感じも久しぶりだ。
ルンルンバースで彼らと過ごした時間はそんなに長くはなかったのに
定期的に連絡を取り合っていた彼らが
旧知の仲であるかのように錯覚してしまう。
「せっかくだし再開を祝して飲むでしょ!今日は!!」
「そだねー。船で飲む?私なんか適当に作るよ?」
シードル飲み尽くして良いの!?と目を輝かせるカレンは、今日もセクシーな出で立ちだ。
あんなに繊細で素敵なレースをデザインしているとは思えない程、カレンはイケイケガールだからな。
ロー達にも今晩ブラーヴェの皆を船に呼んで飲み会を催しても良いか確認すると
ソニアのことをあんまり得意ではないように感じていたローは、意外とあっさりそれを了承してくれた。
皆は元からドンチャン騒ぎが好きだし
甲板にバーベキューセットを出して来たりと着々と準備は進行している。
ディゼルもお酒を持ってきてくれるみたいだし
さて
準備しちゃいますか。
地下に逃げようとするシャチを取っ捕まえて生春巻作成係に任命した。
元から手先が器用なシャチは私もビックリなくらいに綺麗に海老が表面に出るようにテキパキとそれを量産していて
私が居なくても皆の食事は大丈夫だなって
少し寂しいけど安心した。
バーベキューコンロも出したし
メインは焼き肉だ。
9人分の食事なんて
正直準備したことがなくて
どれくらい準備したら良いのか迷う。
ベポとローは出掛けてしまったし
ペンギンはどこに行ったのか行方知らずだ。
枝豆の先っぽ切りをさせようと思ってたのに。
いつかローが好んで食べていた白身魚のフライを再現したものに衣を付けながら
今晩は楽しくなりそうだと
心が踊った。
「じゃあウイのブラーヴェ正式加入を祝して!!かんぱーい!!」
笑顔のブラーヴェ組に対して
チームハートの海賊団の表情は微妙だ。
私もブラーヴェの皆とこれから商売をしていくのは楽しみだけど
やっぱり皆と離れるのが寂しくて
凄い微妙な顔でグラスを合わせていたと思う。
「お前そんな顔してたっけ?」
「お前も口調の割にはまともな顔してたんだな。」
何それ誉めてんの?と
散々でんでんむしで皆と話しまくっていたアオイはすっかりシャチとペンギンと打ち解けていて
好きな人達が仲良くしてくれてるのは嬉しいし
新しい誰かが加わることで
普段と少し違う雰囲気を見せる皆を見れるのはなんだか新鮮だ。
「で?ウイの彼氏どれ?」
「……彼氏じゃない。」
基本的に酔ってなくてもテンションの高いカレンは
私の肩に腕を組むように回して
まあさっさと吐いちゃいな、と不敵に微笑んでいる。
「アレよ。あの一番目付き悪い男。」
「えー?超イケメンじゃん!!良いなー!」
ソニアがローを指差しながらシードルに口をつける。
皆が豪快にラッパ飲みしている姿ばかり見ていたせいか
飲む人が違うだけで
同じ行動を絵に描いたような様な構図にしてしまうソニアには恐れ入る。
「超イケメンだしイイ体してるしさ。中々上手そうだよね。もうヤっちゃったの?」
「……ヤってません。」
えー!?手ー早そうなのに!!それはそれで愛されてる感堪んないね!と興奮するカレンは
一頻り騒いだ後、ベポとディゼルと話しているローをじっと見つめていた。
「あの人さ、ウイが海軍に捕まってた時、それはそれは余裕ない感じだったのよ。あんな落ち着いた感じの人だとは思わなかった。」
カレンが呟いた言葉に
どうしようもない嬉しさが汲み上げてくる。
私の知らないローの話。
あの時ローは、余裕がなくなるくらい
私を心配してくれてたんだ。
どんな時でも余裕たっぷりなのに
私はそんな彼の余裕をなくさせてしまう事ができるんだと思うと
変な優越感を感じてしまう。
「ウイ肉焼こうぜ肉!」
「りょ!」
お肉大好き代表のペンギンが冷蔵庫から漬け込んでおいた肉を取り出して甲板への扉を開けた。
野菜も切って隣に置いといたのに
無視かよ。
仕方ないなと思いつつ野菜を並べたバットを持って
相変わらず自由奔放な彼の後を追って甲板へと向かう。
それにつられるように
リビングでそれぞれ固まっていた皆が外に出てきた。
「ウイこれ切って。」
「熱い!もっと端っこ寄せてよ。」
焼き奉行と化したペンギンがトングで掴んだ肉を
キッチンバサミでカットしようとするものの
炭から出る遠赤外線が熱すぎる。
端っこに寄せて貰った肉を一口サイズに切ると
ペンギンはブラーヴェの皆を呼んで各自の皿に焼きたての肉を配給しだした。
「ペンギンが肉を人に譲るなんて。」
「俺は女と年下には優しいんだよ。」
っとに人のこと何だと思ってんだと目を細めて見下ろしてくるペンギンに
そういえばペンギンが私以外の女の人と一緒に居る所は見たことがなかったなと思う。
しょっちゅうヤりてぇだの女ーだの騒いでいる彼が
実際の女の人と居るところを見るのは何て言うか新鮮だ。
ペンギンはソニアとカレンの皿には食べやすいように小さめの肉を乗せてあげてるし
アオイに切っていない肉の塊をそのまま口に運んであげては
肉を咥えたまま熱ぃ!!と騒ぐアオイを笑って見ている。
やっぱりこの人は相手を見て
然り気無い気遣いが出来る人なんだなと感心してしまう。
アオイとか弄られるの好きそうだもんね。
「いやー美人と飲めるとかマジ最高ね。」
「ペンギンだっけ?キミ結構イケメンじゃん!お肉おかわりちょうだい。」
どれ良いの?と中々楽しそうに話しているペンギンとカレン。
これは、結構良い雰囲気になったりするんじゃないか?
カレンは美人なのに男運が無さすぎて
ヤリ逃げされたとか、連絡が付かないとか、
そういう愚痴のでんでんむしをよくかけて来ていた。
カレンは確かに個性は強いけど凄く素直な良い子だ。
ペンギン先生ならカレンを幸せにしてくれそうだし
カレンならペンギンをいつも笑わせてくれそう。
私はカレンにキッチンバサミを預けて
然り気無さを装ってバーベキューコンロのそばを離れた。
「ベーポ。お肉食べてる?」
「食べてる食べてる。なんかディゼルってさ、近年稀に見る常識人だよね。」
ベポと二人で話していたディゼルはそんなことないよと笑顔で答えた。
なんだかこの二人の組み合わせは和む。
ディゼルは文句なく優しいし
ベポも毒吐くけどなんだかんだでめちゃめちゃ優しいからな。
「この子面倒臭いけど、本当に面倒臭いけど、なんでそこまでってくらい面倒臭いけど。……悪い子じゃないからよろしくね。」
「おいコラてめぇ。」
「僕で力になれるなら喜んで。」
簡易ベンチに座るベポに後ろからまとわりついていた私は
ベポの首を締め上げた。
本当のことじゃんと眉をひそめるベポの毛並みに顔を埋めながら
嬉しいなって、思ったよ。
うちの子をよろしくみたいに言ってくれるベポも
社交辞令なんだろうけどそれを任されてくれるディゼルも
私の周りには本当に良い人ばかりだ。
基本的に騒がしくない二人は話も合うみたいで
そんな二人の話を聞きながら
私はさっきからソニアと話しているローのことが気になって仕方ない。
ローはソニアに苦手意識を持っているように見えたけど
二人はルンルンバースで一緒に飲みに行ったり
出航前も、何だか親密そうだった。
船縁に背を預けてお酒を飲んでいる二人は
絵になり過ぎて、なんだかもやもやする。
他の人の所には気兼ねなく話しに行けるのに
そういう事を一度思ってしまうと
話しかけに行ったら
私が二人にヤキモチを焼いて邪魔をしようとしてるって
二人にも皆にも思われるんじゃないかと思ってしまって
こうやって眺めている事しかできない。
眺めていられることも
あと少しの幸せなんだよね。
ガレーラカンパニーに行ってきたらしいローとベポは
潜水艦はもう完成してたって言ってた。
いつ
出航しちゃうのかな。
自立するって決めたものの
やっぱりさよならは寂しい。
ローだけじゃない。
ベポも、ペンギンもシャチも
いつの間にか傍に居てくれるのが当たり前になってた。
ぎゅっとベポの首に回した腕に力を込める。
「まだ何もディスってないけど?」
「まだって何よ。」
文句を言いたげなベポが首に回した手を握ってくれる。
私はあなたたちが、大好きだよ。
「ウイ。」
「ん?」
いつの間に
背後には焼き奉行だった筈のペンギンが一人で立っていて。
一緒じゃないカレンの行方を探して視線を巡らすと
バトンタッチしたらしいシャチとアオイと一緒に楽しそうにバーベキューコンロを囲む彼女の姿を見つけた。
「お前ちゃんと食ってんの?」
「食べてるよ。肉巻きもーらった。」
ペンギンの皿からプチトマトの豚バラ巻きの串を掠めとる。
トマトの甘さとこんがり焼けた豚バラの香ばしさが堪らん。
「それ俺が丹精込めて大事に焼いたヤツだったのに。最低。人の楽しみ盗むとかマジ最低。」
「私女で年下なんだからペンギン基準じゃもう少し優しくされても良いと思うんだけど。」
不服具合を全面に押し出してペンギンの顔を見上げると
あちらも中々不服そうな顔で私を見下ろしていた。
本当はね、全然不服じゃなかったんだけど
お肉を分けて貰えることよりも
お前は年下でも女でも
気遣いいらねえよなっていう
こっち側のヤツだろっていうその感じが嬉しかったんだけど
不満げな顔で見下ろしてくるペンギンにそれが伝わるのはなんだか恥ずかしくて
私は頑張って心とは正反対な表情のままペンギンを見上げてた。
「なぁ、人数多いしある程度食ったら人狼ゲームやろうぜ。」
「良いね!面白そう!!」
今までやった時は5人だったから、狼役は1人だった。
狼が複数居れば騙す方の連携も試される。
空いた皿をキッチンへ運ぶついでに
ペンギンと一緒にゲームの準備をする為に船室へと戻った。
「狼何人にする?」
「2人で良いんじゃない?特集能力は占い師だけでいっか。」
ペンギンが雑にちぎった紙に配役を書いて折り畳む。
ブラーヴェの皆とゲームをするのは初めてだし
ソニアとかディゼルなんかは結構曲者臭が強い。
もう性格を分かりきっているハートの海賊団の皆とは違って
どんな出方をするか分からない彼らとの騙し合いを想像するとぞくぞくする程楽しみだ。
「負け側のペナルティーはやっぱこれっしょ。」
「ペンギンが居る側のチーム、潰れるね。」
アップルブランデーの瓶を片手にニヤリと笑うペンギンは
数時間後には自分の言い出した事を後悔しているんだろうなって
そう思った。