16-2
結婚式プロジェクトも大詰め。
新しいスタッフの雇用も
プランも
ドレスやタキシードも
宣伝の為のカタログも
船も
準備は順調に進んでた。
もう直営店の方もね、私達があれこれ手をかけなくても問題なく営業出来てるし
ブラーヴェ進化してるな、前進してるなって、たまにそんな事思う。
懐かしいな。
皆で店舗を探して歩いてたあの頃。
お店の内装どうしようかなとか
市長さんとかに挨拶周りしたりとか
従業員の面接したりとか。
今こうやって作り上げてる結婚式も
いつか私たちの手を離れて、当たり前のことみたいに進んで行くのかな。
「後は船出来ねぇと内装関係の調整は出来ねぇもんなー」
「そうねぇ。絶対間に合わないと思ってたから急かしたけど…意外と皆頑張っちゃうんだもの」
ブラーヴェの本部。
初代メンバーが紅茶を啜りながら
だらけきっていた。
「なんか、まだ終わってないっていうか始まってすらいないんだけど…ちょっと燃え尽き症候群だよねー」
「本当それよ…あれ?船いつ納品だっけ?」
「2ヶ月後くらい?だったんじゃないかな」
まだまだだねーって
アオイとカレンなんかは机に突っ伏してるし
ソニアとディゼルも頬杖付きながらぼーっとしてる。
こんなブラーヴェ、何だか珍し過ぎて可笑しい。
いつも皆せかせかあれやこれやと動いてるから。
「宣伝だけでもそろそろ打っておこうか?準備出来たらすぐにでも動かした方が回収率は良いよね」
「予約の受付は船が来て目通立ってからじゃないと厳しくないかしら。新郎新婦や招待客の予定もある事でしょうし」
確かに。
これは確定してから予約取らないと大変な事になるな…
「予約は時期ズラすとしてさ。うちで結婚式するって事だけでも告知しとくのは良いのかもね」
皆が項垂れながらうんうん頷いてる。
本当にどうした。
やることはやったとは言え燃え尽き症候群にも程がある。
でも…
気持ち分かるわー。
各々が休暇も兼ねて、ブラーヴェで結婚式やりますって告知を打って回る事になった。
私はどこに行こう。
休暇を兼ねてなら、ローにコートを届けに行こうかな。
ロー達は今どの辺りにいるんだろ。
ちょっと聞いてよ。
ローってば、本当に私には何の相談もなし。
私はハートの海賊団の一員じゃないし
ローが何するかなんて一々聞く権利もない。
でも
でもね。
なに?
七武海入りって。
ひと月くらい前かな。
あのニュースが一面を飾ったのは。
手配書の写真がでかでかと載っていて
挑戦的なその笑みに不覚にも鼓動が早まった。
“七武海”
ドフラミンゴと同じ立場。
その称号を背負って紙面を飾るローに
なんだか複雑な気分になった。
追い付けて良かったねって気持ちと
本当に大丈夫なんだろうかって不安な気持ち。
なに?
ロッキーポート事件って。
海賊の心臓を100個手土産に海軍本部に乗り込んだって
何してるのよ。
何やったのよ。
私そんなの聞いてない。
好きな人じゃなかろうと
ローは、皆は大切な友達だ。
心配する気持ちが恋心と一緒にどこかへ行く訳じゃない。
でも七武海ってことは
海軍に狙われる事はもうないんだ。
そこは少し安心、かな。
本部では皆がそれぞれ手帳とにらめっこしながら予定を立てだしてた。
私もでんでん虫かけて、皆がどこ居るか聞こうかな───
ぷるぷるぷるぷる
ぷるぷるぷるぷる
本当に、丁度かけようとしてたから驚いた。
それも船長さん直々のでんでん虫。
ぷるぷるぷるぷる
無表情のそれは、全然似てないのに
あの帽子を被って着信を報せてる。
「もしもし?」
『俺だ。──おまえに頼みがある』
なんだろう。
改まって。
「内容によるってば。なに?どしたの?」
『送って行って欲しい島がある』
は?
ポーラータングで行けば良いじゃん。
何がどうなってそうなった。
「丁度ね、自由に動けそうだったから今どこに居るか聞こうと思ってたんだけど。ポーラータング壊れたの?」
『んな訳ねぇだろ。アイツらと別行動を取る。おまえこそ今どこ居んだ』
へぇ。
別行動。
「本部だけど…なんでまた別行動なんて取るのよ」
『わかったこれから向かう。3日後発てるように準備しとけ』
「は!?ちょっ──」
ツーツーツー
今に始まったことじゃない。
ローは結構、俺様なとこあるから。
無茶を強いたりはしないけど
それが可能だって知ったら結構自分本意に事を進める。
いや、良いんだけどさ。
会いに行こうとしてたし、仕事の都合だって問題ない。
そうなんだけどさ
「なに?ロー達来るの?なら久々に皆で飲もう!ペンギンも居るでしょ?」
「なんか…急いでるっぽかったけど。一応も少ししたらまたかけてみるから聞いてみるね」
なんだかなー…
取り敢えず文句言えそうなとこに文句つけたいだけで
私が本当に気にしてるのはゴーイングマイウェイ過ぎるローにじゃない。
別行動。
つまり、ロー一人をどこかは知らないけど、送っていくってことだ。
すぐそこかもしれないし
遠くかもしれない。
それまでフリーウィングでローと、二人っきり。
「ねぇ、皆どこ行くの?途中まででも乗っけてこうか?」
「私は明日には発つから飲み会の方も不参加ね。あなた達送っていって貰ったら?」
さっそく一人目に振られた。
ソニアはどこ行くんだろ、そんなに急いで。
「俺船用の限定商品の打ち合わせしてくから暫く残るわ。飲むならそっちは参加ー!」
くっ…!!
二人目にも振られてしまった。
でもカレンとかディゼルなら…!!
「ねぇこれ乗ってみたくない?豪華客船クルーズ!なんか参考になるかもしんないじゃん」
「どうせ目当てはコレでしょ、“船コン”。なんで学ばないかな。どうせ遊ばれて捨てられるのがオチなのに」
頼みの綱の二人が手に持ってるのはクルーズ船のチラシ。
あ…カレンのこめかみに青筋が…
「運命の人と出会ってないだけ!だから出会いに行くんだし!!ディゼルだってこれ、気になるでしょ!!」
「まぁ…リキュールは出来たけど配合的な意味で気にならなくはないけど」
二人が持ってるチラシを覗き込む。
そこにはクルーズ船のラウンジにオリジナルカクテル有りの文字。
まずい…
まずいぞこの流れは…!
「バラけた方が良くない?宣伝するなら色んな島回った方が良さそうだし!」
「えー…面倒だからディゼルに予約して貰おうと思ったのに」
「そういう事。珍しいと思ったんだ、カレンが僕と一緒にクルーズしようと思うなんて。でも確かにバラけた方が効率は良いかな」
やめろカレン。
予約くらい自分でしてくれ。
ディゼルだけでも送らせて欲しい。
ローと二人っきりとか
無理!!
ドフラミンゴの件片付くまで話聞いてくれる気がないみたいだし
そんな私の立ち位置どうなのよって状態で二人っきりとか、無理!!
それに…
この前ポーラータング号に遊びに行った時
気づいちゃったから。
アンさんの好きな人がローだって。
気にして見てたらすぐわかった。
私にはエースが居るのにって
アンさんの邪魔なんてしないよって心の中では思ってるのに
ローに言えてないからそれを言えない。
実際、アンさんの言う通り私は現状ローの気持ちを…玩んでるとか思われても仕方ない。
話せてないんだから。
ちゃんと話すよ
応援してるよって伝えても、アンさんはやっぱり私を避けてた。
私としてもどうしようだけど
絶対アンさん嫌だよね。好きな人が好きらしき人と二人旅。
「あら、別に良いわよ?私も告知はついでくらいに楽しんで来るから。コンパにカクテルのお勉強、楽しんでらっしゃいよ」
ソニアー!!!!
「やった!じゃあディゼル予約よろしく!」
「…別に良いけど。いつになれば懲りるんだろうね。無駄なのに」
「んだと!?見てろディゼル!!すんごい男前ですっごく私を大事にしてくれる紳士捕まえてみせるから!!」
うわー、楽しみーって棒読みなディゼルがでんでん虫に予約の番号を打ち込んでる。
これはきっと
…回避失敗コース。