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通称G-5。
海軍グランドライン第5支部。


海軍の中でも比較的…いや、比較等必要のない程に荒々しい男達の寄せ集め。
これを率いる海軍中将スモーカーとその部下、紅一点大佐のたしぎ。


近くの海域の巡回中に偶然拾った救命信号のでんでん虫。
そこで聞こえてきた“パンクハザード”の固有名詞。


それを頼みに彼らはこの島へやってきた。


「「「「「うぉおおおぉおっ!!?」」」」」
「「トラファルガー・ローーーー!!!!!」」


まさかこんなところにこの男が。
G-5の海兵達は心の底から驚いた。そして素直過ぎる男達は、思った事をすぐ叫ぶ。


「“七武海”がなぜこんな所にィ〜〜!!!」
「帰ろうぜスモーカーさんっ!!コイツとは関わり合いになりたくねェ!!!」


騒がしい施設の玄関口。
この場で冷静を保てているのは海兵を騒がせている張本人であるトラファルガー・ローと、役職付きの二人のみ。


「コイツは“七武海”になる為に海賊の心臓を100個届けた狂気の男だ!!!気味が悪ィ!!!」


腕を組み、不敵な笑みを浮かべ騒ぎ立つ海兵を眺めるこの長身の男に動じた気配は全く見られない。
決して良いとは言えない目付きは、薄く隈の浮かぶそれのせいでどこか不気味さすら感じられる。


その様子にたしぎはごくりと息を飲んだ。


「ここは政府関係者も全て“立入禁止”の島だ…ロー」
「じゃあ…おまえらもだな」


七武海と海軍の関係は味方ではないものの“敵”でもない。
しかし海兵にしては荒くれ者の彼らを束ねるスモーカーと、扉の中から姿を現したローの対話。


それはどこかお互いに牽制し合うような
威嚇し合うような


緊張感の漂う空気がそこに張り詰めていた。








混乱の最中にある立入禁止の島パンクハザード。
この場所でもついに、1つの歯車が動き始める。






「声の主はこの島から信号を送った事で間違いないのでは?」


なんでか知らねぇ。
ただこの黒髪女が毅然と“自分は正しい”とでも言いたげに物を言うのがいけ好かねぇと思った。


聞かされた救命信号の録音。
それは確かにこの島の名前と島の気候に合致する内容。

そして…


「“麦わらのルフィ”は知ってるな?2年前シャボンディで起きた天竜人ロズワード家の一件でおまえと“キッド”“麦わら”は共闘している」


そこだ。
麦わら屋。


助けを求める声に応答したのは、聞き覚えのある声だった。
いやどんな声か忘れてても、しっかり名乗ってる。

どんだけ警戒心ねぇんだあの男は。


音声データから推測するに麦わら屋はこの会話の時点では島の外。


だがシーザーのあの慌てよう。
まさか本当に麦わら屋がここに来ていて、この緊急事態を招いてるとしたら…
それはどんな笑える偶然だ。


「更には頂上戦争では赤犬に追われる麦わらを、おまえは逃がした…!!!」


つまりコイツらはアレか。
俺がここで麦わら屋を匿ってるとでも言いてぇのか。


シャボンディの件も、頂上決戦の件も
麦わら屋を助けようと動いた事じゃねぇ。


成り行きと、衝動。
理由があるとしてもその相手は“麦わら屋”じゃねぇ。


「用件は何だ。緊急信号の捏造はおまえら海軍の十八番だろう」
「残念ながらこの通信はウチで作った罠じゃない」










だろうな。
自分で作った罠に自分で掛かるとかどんな馬鹿だ。

後ろの連中だけならまだしも、白猟屋はそんな間抜けもしなけりゃ遊び心もねぇだろうよ。


「どうだかな…俺も知らねぇ話は終わりだ」


…しつけぇな。
俺はさっさと奥の混乱の原因を探りに動きてぇってのに。


「つまらん問答はさせるな。研究所の中を見せろ」
「──今は俺の別荘だ。…断る」


面倒ではあるがこいつらは俺の反対を押し切って中に踏み込む事はしねぇ筈。


それが俺自身に対する警戒なのか
七武海に対する対応なのかは知らねぇが

武力行使に出ずに苛立ちつつも話し合いでカタを付けようとしてんのがその証拠。


ゴネてりゃいずれ引くか。




「ここにいるのは俺一人だ。“麦わら”がもしここへ来たら、首は狩っといてやる…話が済んだら帰れ」


立ち入る事も出来なけりゃ、俺の言葉が嘘だと証明する事もコイツらには出来ねぇだろう。


半分は本当だ。
麦わら屋が例え奥の混乱を引き起こしてるとしても俺はそれを“知らねぇ”し。

シーザー達もこの島に居ることはバレたくねぇみてぇだったな。
そこまで頭の回る方ではねぇものの、ここで存在をバラすような出方はしねぇだろ。


さぁどう出る。


さっきまで喧しかった後ろの連中も大人しくなった事だ。
それを率いてる白猟屋も
“もし”、“来れば”首を狩ってやると俺に要望を飲まれた手前、これ以上はガタガタ抜かせねぇ筈。


これで追い返せる算段だった。


…予定では。




























「きゃあああ!!」
「恐かったよー!!氷った人達〜っ!!」
「えーん!!!」


門番の如く扉の内側へ続く唯一の道に立ち塞がる七武海のルーキー、ロー。

踏み込みたいものの、この門番の戦力と立場に阻まれ動けずにいるG-5。


膠着状態が続く中、それを撃ち破ったのは幼さを色濃く宿す複数の声だった。


「でも見て、ほら!!扉よ!!ここから出られる!!」
「やったぁ〜!!」


わーわー
キャーキャーと

騒がしい声とドタバタと近付いて来る足音。


「………?」


ずっとスモーカーを捉えていたローの目が
音源である扉の内側にその視線を向けた。


「…!?やっぱり中に誰かいるじゃねェか!!」
「見ろ!!何だあの生物!!!」


こちらへ駆けて来る影の形は人には見えぬ異形のもの。
強面の海兵達に、どよめきが走った。






「ハチャ〜!!!!外だー!!!」


ばーん!!


結構な重さのある研究所入口の分厚い扉。
それを豪快に蹴り飛ばしたのは…奇妙な生き物。

フォルムは短足寸胴、そして青っ鼻。
トナカイのようなツノと体毛に覆われた体、の割には服も着ていて二足歩行。
そしてこの生き物は“外だ”と、人語を喋った。


人か獣か、どちらにせよ
その生き物のすぐ隣で扉に寄りかかる七武海の男も結構な長身。
その1.5倍の長さと5倍はありそうな横幅。


奇妙な事等いつでも起こる。
それがこのグランドラインで新世界。

世界平和の為にこの海を渡る屈強な男達でさえも、突然の事と度肝を抜く巨大なタヌキの登場には言葉を発することを忘れた。


「外…いやぁー!!寒ーーーいっ!!!」


タヌキの後ろからも続々とこちらへ駆けて来る。

一際甲高い声を静けき雪原に響かせたのは、オレンジ髪のビキニ女。
コートを着ていて尚、寒いか寒くないかと聞かれれば
誰しもが寒いと答えるだろう気温で


ビキニ。


「!!…“麦わらの一味”!!」


少しでも冷たい外気に接する肌を減らそうと、自身の手で両の腕を抱きしめ叫ぶこの女に
たしぎははっと声を上げた。


「やったぞー!!!」
「建物を出たぞ!!おうちに帰れる!!」
「パパとママに会える〜!!」
「「「寒〜い!!!」」」


続いて出てきたのは、こちらも雪国には不釣り合いな程薄着な沢山の子供たち。
子供は風の子元気の子。

寒さ等どうでも良いのか、子供達は皆はしゃぎ
その目は爛々と輝いていた。


いや、服装等どうでも良い。


頭身や体つきに顔つき、子供独特の高い声、その仕草。

子供だ。
子供なのだが、そのサイズが余りにも異様。
扉を蹴り破った珍獣の4倍以上もありそうなのまで居る。


「ヘイヘイヘヘーイ♪フランキ〜♪ヘイヘイヘヘーイ♪タンクだぜ♪邪魔するやーつは踏んでくぜ!!」


最後にとんでもないのが出てきた。


G-5の面々の心中では同じ声が響き渡っていたことだろう。
彼らはただ呆然と、扉から次々出て来る突っ込み所満載な仮装行列を凝視していた。


賑やか。
そう、この場はとても賑やか。


ただ先ほど睨み合いを続けていた者達は、あれから一言も言葉を発していない。

いや正しくは
度肝を抜かれ過ぎて言葉が出て来る状況ではなかった。




「だけどお花はよけてくぜ〜〜♪ちょっぴり優しいフランキイ〜〜タンク〜〜♪」


車輪だろうか。
キュルキュルと人工的な音を鳴らしながら駆けて…いや、
進行して来たのは人なのかメカなのか何かの乗り物なのか。

〆に登場したのはめでた過ぎる歌を子供達と大声で合唱するロボ。
至る所にまだ小さな子供を乗せ、ロボ本体は機械とは思えない程滑らかかつ機敏に上体を左右に振ってはリズムに乗っている。


そしてこれに乗っている黒スーツの男。
比較的容姿格好に突っ込み所のないまともそうなこの男の手には、がしりと生首が握られていた。


「「「「「「ス〜パ〜!!!!」」」」」」


曲の終わりなのか、全員総出で頭上に拳を合わせ
玄関先で決めポーズを取られた日には


観客と化した強面の男達はもう何をどこから突っ込んだら良いのかが分からずにいた。


「スゲー!タンク!!」
「きゅうきょくだー!!」


歌いきり踊り切った事に歓声を上げて喜び合う子供達。

しかし大人の心は忙しい。
それどころではない。



大ダヌキ
冬のビキニ
巨大な子供達

ロボット
生首…


これは夢かと全員がそこを疑い出した。
何も可笑しな所等ないように、まるでお遊戯会でも終えたようにはしゃぐこの仮装行列の参加者達。

人数で言えば、目玉が飛び出そうな程呆然としている悪人面の男達の勝利。
しかしこの愉快な集団の盛り上がり様は、それを余裕で圧倒する威力があった。





「あー!!あんた見覚えある!!」
「そうだ!!シャボンディに居た奴だぞ!!」


この状況でも微動だにせずに腕を組み扉に身を預け状況を見守ってきたローに、ビキニとタヌキが気付き声を上げた。


「まさか子供達閉じ込めてたのあんた!!?っこの外道!!この子達返さないわよ!!」


ローが僅かに考えた可能性。
この混乱の原因はこの、“麦わらの一味”が引き起こしたものではないか。


ほんの一瞬頭を過っただけとは言え、頑固だが順応性の高い思考を持つこの男はその可能性を有り得ないとは否定しなかった。

だからこそ早く海軍を追い払ってそれを確かめたかったのだ。


だがしかし流石の彼も
この事態までは、予測出来ていなかったことだろう。


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destruct at reality.