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『──という訳だ。決して一人で出歩かないこと。あとはドフラミンゴから何か接触があるかもしれない。十分気をつけて。……って、ウイ?ちゃんと聞いていたか?』
「あ、ごめん!!うん、分かった!気を付ける」
なんだか
半分上の空だったかもしれない。
ローは本当にSMILEの元を製造施設ごと破壊したらしい。
そしてそのまま、ドフラミンゴにも捕まらずに逃げ延びてる。
凄い。
シナリオ通り。
一番の出来映え。
「ねぇロイ。それは分かったんだけど、今ローはどこに居るの?脱出するにも船がない筈なんだけど」
『“麦わらの一味”、ウイも知ってるだろ?ローは今恐らく、彼らと行動を共にしていると思う』
ローが、ルフィくん達と…?
え?
なぜ?
『ともかく!ドレスローザから距離はあるとは言え何をしでかして来るか分かったもんじゃない!ウイの居場所があっちから筒抜けになることだけはないように!』
「うん、分かったよ。知らせてくれてありがとう」
分からない事は沢山ある。
でも分かった事が一つ。
ローは無事だ。
作戦も上手く行ってるみたい。
そしてもう一つ。
『じゃあ、僕も今ゆっくり話して居られる状況ではないから。落ち着いたらまたかける。──くれぐれも変な気、起こさないでくれよ?』
「そうだったんだ!忙しいのにごめんね!連絡待ってる!!」
切れた通話。
絶対にするなと言われた事が、丁度頭の中をぐるぐる回ってた。
ドフラミンゴはSADの製造所を壊されて、焦ってる。
壊したローを血眼になって探してる。
それを邪魔したロイ達も、クザンさんさえ一緒にいなければけちょんけちょんに伸してしまう位怒ってたと思う。
そのどっちもが私の差し金なんて、勘違いも良いところ。
根も葉もない推測なんだから、いつ勘違いに気付くかは分からない。
でもこれは──
ドフラミンゴの思考をミスリード出来るチャンス。
急いでるみたいだったって言ってた。
多分一緒に居るだろうルフィくん達も、まだ本当に一緒なのか確証がない。
…確かめてみるか。
落ち着け私。
急に情報が入ってきたからって、勢いのまますぐ行動するのは得策じゃない。
ソニアはまた後でって言ってたけど
こっちの状況次第で話す内容って変わらないか?
まずは状況の整理だ。
ローのでんでん虫の番号は聞いてる。
取り込み中に鳴らしちゃったらいけないってこっちからの連絡は控えてたけど、今なら大丈夫っぽいし。
でもまず先にハートの海賊団にかけるべき?
あっちもあっちであれからピタリと音沙汰ない。
これまで定例だった三日おきのペンギンからの夜の電話すらも。
皆がどうしてるかも気になるし、ローが先に皆のとこにかけてるかもしれない。
そこで何か聞ければ、ローと話す前に色々対策も立てられるかもだし…
「よっし…!まずはハートの海賊団!状況によるけど…次にローにかけて、最後にソニアだ」
気合いを入れる為に
拳を握って勢いよく引いた。
ぷるぷるぷるぷるぷる
ぷるぷるぷるぷるぷる
『ハイハイハイ、──もしもーし。やっほーウイちゃん久しぶり』
受話器から聞こえて来たのは、聞き慣れたどこかやる気のないペンギンの声。
大丈夫。いつも通り元気そうだ。
「久しぶりだね。ねぇ今って話してても大丈夫?」
『うん今なら大丈夫。10分前なら出られなかったけど』
タイミング良いねって言われてなんの事かを問いただせば、皆はついさっきゾウに着いたみたい。
ベポの故郷。
ログのない島。
その私が島だと思ってた場所は、何とまさか本当にゾウだったらしい。
ゾウだよ、ゾウ。
パオーンのゾウ。
鼻の長い動物。
その海を歩いて回ってるめちゃくちゃ巨大なゾウの背中の上に、ベポの故郷はあるんだって。
もう本当に大きくて、雲で顔とかが見えないくらいの大きさのゾウを
皆は今まで必死で登ってた、と。
「そんな高いとこ、どうやって登ったのよ」
『内緒。でもガチで疲れたわ、出来ることならもう二度とやりたくない』
そんなにか…
でも雲の上まで登ったって事でしょ?
そりゃ嫌にもなるか…
「そっか…てことはローから連絡って、来てないよね?」
『さぁ?必死過ぎて着信聞き逃してた可能性もなきにしもあらず。そっちは?いつくらいにキャプテンと別れたの?』
取り敢えずペンギンにも共有しとこうと思って、ロイから聞いた話の一部を含む最近の現状をペンギンに話した。
ドフラミンゴの勘違いの件は伏せて。
『じゃあ今なら掛けて大丈夫そうなタイミング?そっかそっか。ウイはまだ掛けてないの?』
「ロイは嘘なんて付かないと思うけど…ローが今本当に大丈夫なタイミングなら皆のとこ先かけるかなって。…全く音沙汰ないから皆の事も気になってたし」
こっちもまだだったか…。
それならひとまず切った方が良いのかな。
話中に着信があるかもしれないし、そんな途方もないゾウ登りを終えたばっかりの皆もさぞお疲れだろう。
『俺から連絡なくて寂しかった?』
「…は?」
でんでん虫を切ろうかなって考えてたら、顔を見なくてもわかるくらいのニヤつきボイスのペンギンに眉根が寄った。
『ウイちゃんも俺の声聞きたくなったのかなーって思って』
「あーそうね。久しぶりに声聞けて嬉しくて楽しくて幸せだわ」
聞きたくない訳じゃなかったけど
何言ってんだこいつと思って、心掛けて棒読みで返す。
こういうとこも相変わらず、だ。
そんなことよりこうしてる間にもローから連絡が入ったら大変なのに。
切らなきゃ。
「じゃあ連絡来たら──
『俺はずっとウイの声聞きたかった。何してるのか、風邪とか引いてないかって。ずっと考えてた』
吐息を吐き出すような喋り方。
それが直接耳にかかる訳なんてないのに、艶のある声色で囁かれるとこっちもこっちでやりにくい。
「わ、私元気だし!今日も変わらず仕事して──
『暫くブラーヴェは休みってカレン言ってたけど。ウイちゃんもゾウ来てたら?来てよ。会いたい、会いに来て』
どうしたペンギンって思うけど、これがこの人の通常営業。
ただ少しだけ。
いつもより主張が強いと言うか駄々っ子っぽい気がするのは
きっとでんでん虫が久しぶりだからだ。
そう。
きっとただそれだけ。
「その時は暫く休みだったけどもうそろそろ再開するもん。それに遠いんでしょ?ゾウ。行けないよ」
『直通だったらそんなかかんないよ。キャプテンにベポのビブルカード貰わなかった?』
なぜ引かない。
ノリで言ってるだけだと思ってたペンギンは案外本気らしい。
確かにビブルカードがあれば直線で進める分到着は早いかもだけど…
「貰ったけど…それに!皆は鍛えてるから雲の上とかまで登れるのかもしれないけど!私無理だよ絶対!!疲れたじゃ済まない!登れない!!」
『ちぇ。…登りきる直前で上から手元目掛けて油垂らすヤツ。やられてばっかじゃつまんねぇから俺もやりたかったのに』
はい?
「え…そんなことされたの…?」
『いつもの仕返しだって。ベポがしつこ過ぎるぐらいずっとそれやってて。キャプテン居ないから誰も止めるヤツ居ねぇの』
──ベポ……
なにやってんの……
え?
ちょっと待って。
どうやって登ったのかは知らないけど、そんな雲の上くらいまで登るなんて一苦労どころじゃない筈。
それを?
登りきる直前で?
何度も何度も?
手元滑らせて下に落っことしてたの?
「ベポ酷っ…」
『もうベポが悪魔に見えたよね。…あれ?ウイちゃん一緒行ったじゃん川のバンジー。あの時突き落としたのまだ根に持ってるらしいよ』
あぁ。
ベポ絶叫系本当に嫌いだもんね…
相当怖かったんだね…
だからって仕返しにしてもやり過ぎな気もするけど…。
「そりゃ疲れるわ。お疲れ…」
『だから俺もやりたいなーって。おいでよウイちゃん』
「ンな話聞いた後で誰が行くか!!!!」
ふっざけんな!!
そんな拷問もどきされに誰が行くって言うのよ…。
電話越しにゲラゲラ笑ってるペンギンがどこまで本気なのか
こんなふざけてるけど本当はそんな余裕ないくらい疲労困憊なんじゃないのか
そもそも今はローからの連絡待ちだ。
何から突っ込めば良いかは分からないけど取り敢えずはでんでん虫切るのが正解だ。
うん。
「取り敢えず!!一旦切るからローから連絡来たら教えて!」
『えー…どっちもやだー』
誰か…
この愉快犯の駄々っ子をどうにかして下さい。
『ウイちゃんはさ、俺が風邪の心配してたのとか聞いても何も思わないの』
「何もって…何を…?っていうか!後で聞くから!もう本当に切るよ!」
久しぶりなのは分かるけど!
なんでこうも緊急性のなさそうな話を引っ張るんだペンギンは!
『俺が何か病気してて。それでウイの事も心配してる、とかは思わないの』
「…病人雲の上まで登れないだろ。そもそも私ペンギンが病気したとことか見たことないし。…え?まさか性病?ついに?」
ペンギンがかかる病気なんてそれしか思い浮かばない。
それに関しては寧ろ今まで貰って来なかった事の方が不思議なくらいだ。
…実はこっそりローに治して貰ってたとか?
予防はしっかり派とか?
結構えげつない下ネタ話もよく聞くけど、その辺りは突っ込んで聞いたことなかったかも。
『ウイちゃんは俺を何だと思ってんの。違うし。性病じゃねぇし』
「あらそれは申し訳。なに?本当に病人なの?ならそれこそ早くローに処置とか聞いた方が良いんじゃない?」
うん。
絶対そうだ。
さっさと電話切った方が良い理由がまた増えた。
『治んないヤツだからキャプテンでも無理。だから看病に来て』
「看病ならプロが居るだろ、プロが。アンさんに看て貰えば良いじゃん。もう…切るからね!!本当に!」
本当になんなんだペンギン。
確かにペンギンとでんでん虫で話してると大概長くなる。
ひと月ぶりくらいで久しぶりなのも事実。
『冷たい…冷た過ぎる。大丈夫?とかそういう労りの言葉ないの。酷いわー』
「心配してるのもあるから早く電話切ろうって言ってんでしょ!!?大体治らないって何の病気よ!?」
でも今ってさ、結構緊急を要する時だよね?
私の気にしすぎ?
私が早くでんでん虫切りたいからペンギンのこの自由人具合がイライラするの?
え?
そうなの?
『えー?恋の病。だからウイちゃんお見舞いに来てくれたら良くなると思う』
「…てめぇぶっ殺すぞ」
受話器を持つ手が
冗談抜きで怒りで震えました。