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っていうかドフラミンゴは王位を放棄した後もドレスローザにのうのうと滞在出来る訳?
海軍は?

居場所が割れてる大物の海賊。
もう捕まえられるし、七武海辞めたてなら何て言うか…旬だし!
普通放っておかないでしょうが。


それに…









「新聞に書いてあったけどローにも何か処分あるの?他の海賊と同盟組んだら何かペナルティ的な。っていうかドレスローザって今海軍に包囲されてるんじゃないの?」
『それは俺にも分からねぇ。──でもやるしかねぇだろ。こっちもこっちで策は練る』










“分からねぇ”って…

それどこに対する返事よ。
質問し過ぎてどれの答えか分かんないよ。





「ねぇ、本当に行くの?どうせシーザー返してもドフラミンゴ絶対ローのこと恨んでるし怒ってるよ?そのまま返さない方があっちも困るじゃん」
『それだと上手くねぇ上にこっちも困る』


なんでよ。
ブチ切れてるらしいドフラミンゴと直接ご対面よりまずくない展開なんて数え切れない程あるじゃん。






っていうか



なんて言うか、さっきから本当にローの話し方が歯切れが悪いっていうかまどろっこしい。
なんでいつもみたいに結論から話してくれないんだろう。













「…なんで?」
『さぁな。──おまえが企んでる事を正直に話すなら教えてやっても良い』








ごくり











受話器を通して聞こえてしまったんじゃないかと思うほど
自分が固唾を飲む音が大きく聞こえた。


「…企んでるって?」


動揺が伝わってしまわないように、努めて冷静に言葉を吐く。
今度はどくん、どくんって
普段より早くて強い鼓動の音が煩い。


なんで?
企むって、ローは私がドフラミンゴに黒幕だって疑われてて、それを上手く使おうとしてる事を言ってるの?

なんでバレた。
ペンギン?

いや…ペンギンにも話してないし
そもそもローがペンギンと連絡を取ったかすら不明。

疑われた理由が分からないとそれ突っ込まれた時それっぽい返答が出来ない。
まずいぞこれは。


『大体わかってきた。疑って見てれば逆にわかりやすいもんだな』
「いや意味が分からないから。ローは何の話をしてるの」


カマ掛けられてるだけかもしれない。

落ち着け
落ち着け私

バレたら絶対止められるし怒られる。






『その手に乗るか。何の話かはおまえが一番わかってンだろ』











なぜだ。
なぜバレた。

もうこの際お説教も役に立てそうチャンスも諦めよう。
だとしても、だ。


なんでこの人はそれを知ってるんだ?


『間髪いれずに次の話をし出すヤツが今日はやたらと間が長い』


あー…なるほどね。
そっか。
確かに考えながら喋ってたかも。


『“何があったか”じゃなく“何をするか”を執拗に気にしてる。パンクハザードに向かう時はこうじゃなかった』


えー…そうだった?
いや確かに気になってるけど、そんな露骨じゃなかったと思うんだけども。


『昨日おまえペンギンと話しただろ。新聞が出る前に俺の動向を掴んでた。こっちの状況をしきりに知りたがってたらしいな』


やっぱペンギンと連絡取ってたのか。

なんだよ。
あんなにハートの海賊団としてじゃなきゃダメかとか文句言ってたくせに
しっかり副船長してるんじゃん。


『心配なだけならまずはこっちに掛けて来るだろ。先にあいつらに掛けておいてその用件が俺からの連絡があったかどうか』


何という分析力なんだ。

恐ろしい。
私はローが恐ろしい。


『後は普段のおまえの行いだな。粗方得た情報でペンギンに話していない内容、その辺りで何か企んではいるものの情報不足ってとこか』


流石ですローさん。
名推理。
ほぼほぼ当たってらっしゃいます。


『尚且つ素直にその情報をこっちに流さねぇで秘密裏に動こうとしてる。お得意の危ねぇ綱渡りか何か──もう良いだろ、さっさと話せ。何を考えてる』






思ってる以上に
ローは私の事をよく理解してくれてるみたい。
それはもう嬉しいとかの次元を通り越して、喜ばしくない程度まで。





でもそっか。
シーザー引き渡しの為に直接ドフラミンゴと対当するなら、勘違いを生かしてあっちを撹乱するとかそういう状況じゃない気がする。
それはローにバレてるバレてない関係なく。


結構な真っ向勝負。
逃げ切れるか、戦う事になったとしても勝てるかどうか。


何であんなに警戒してた張本人に会いに行くのがベストなのかはわかんないけど
ここではぐらかしてローの思考を少しだとしても別のことに割くくらいなら…


『おい聞いてンのか』








これは年貢の納め時、ですかね。




「…おまえはいつになったら学ぶんだ」
『返す言葉もございません…』


嫌な予感はしていた。
何の因果かパンクハザードを訪れたロイから連絡を受けたらしい、この何度痛い目を見ても学ばない問題児。

直接俺に連絡してくる訳でもねぇのに、やたらとペンギンを詰めたらしい。
連絡がまだとわかれば今度は入れ違いを危惧してかさっさと切れ、と。

随分必死だったらしいが
何かあると思って話していればその可能性はどんどん濃くなるばかり。

案の定問いただせばこれだ。


「──まだ何もしてねぇんだよな」
『流石に私だって何度も怒られて何も学んでない訳じゃない!こんな不確かな状況で闇雲に動く訳ないじゃん!』


いや…
もっと注意してやれと言った訳じゃねぇんだが。
危ねぇ事はすんなと言ったんだ。


一瞬しおらしく反省したかと思えば次の瞬間には逆ギレ。
本当にこいつは学ばない。







それにしても、だ。
俄には信じ難い展開。
“この一連の騒動の黒幕がウイ”、と。


動機の見当たりようもねぇ突拍子のない話。
それを“あの”ドフラミンゴが誤認なぞするものだろうか。


俺とウイの繋がりに関して言えば、どこまでかは知らねぇが恐らく掴まれてる。
だからこそカイドウに献上する酒の受け渡しがあったあの夜、あの女を俺に差し向けた。

シードルの取引を交わす時に、ベガス聖から遣わされた護衛の中に青キジとロイが居た事もウイから聞いている。


確かに偶然にしては出来すぎたタイミングで
滅多にいねぇ“アイツの邪魔をする連中”を繋ぐ直線上に、ウイが浮上しちまった訳だ。


『もしもし!?ちょっと聞いてんの!?本当にまだ何もしてないからね!?どうするか考える為に今後のローの動きを知りたかったの!』
「さっきまで散々勝手に黙って考え事してたヤツの言葉とはとても思えねぇな」


うぐっと言葉を詰まらせたこいつは、恐らくもうこれに関しては勝手な真似はしないと見て良いだろう。
そういうヤツだ。


しかし…この勘違いを逆手に取って撹乱、か。

ドフラミンゴは普通、目でも付けられようもんなら真っ青になる程の極悪人。
ビビるどころかそれを利用しようとするとは…


『だって疑ってるでしょ!!本当だってば!!』


全く褒められた事じゃねぇが
本当に肝の据わった女だ。







「別にもう疑ってねぇ。腑に落ちた。頼みてぇことが出来たらそれはこっちから言う。おまえは絶対に余計なことすんじゃねぇ」
『ちょっと!!こっちだけ喋らせといてそっちは黙りじゃ話が違う!!教えてよ!なんでシーザーを返さないとローが困って上手くないの?』


あぁ。
そんな約束だったか。

別に今更伏せておきたい訳でも話してまずい事もない。
こいつが黙ってる事を吐かせるのに丁度よさそうな餌だっただけだ。


「返さねぇ限りあっちの目的は“シーザーを連れてる俺”だろうが。恨んで腹も立ててるだろうが返したら返したであっちには他にやる事が出来る」
『やる事ってなによ』


いつまでもアイツらと別行動ってわけにもいかねぇ。
ウイと比べりゃ戦えるとしても、ドフラミンゴに狙われて無事でいられるレベルには程遠い。


「国王と七武海の称号なき今、ドフラミンゴにとってこれまで以上にカイドウとの関係が重要になってくる。前にも言ったが取引の打ち切りは0どころかマイナスだ」
『あー…そうだろう、ねぇ…』


俺をぶっ殺したくて仕方なかろうが、それよりも重要な事。

何の危険もねぇとこに胡座掻いてやがったヤツが、急遽四皇と海軍を敵に回す。
避けてぇ筈だ。何としてでも。


「シーザーが手元にいりゃやる事は一つ。在庫のSMILEを繋ぎつつまたSADを作らせりゃ良い。そうすりゃカイドウを怒らせずに済む」
『在庫もいつか尽きるだろうしね。でもそれだとカイドウとドフラミンゴはぶつからないんじゃ…あぁ、海軍が追うから良いのかそれは』


今朝の新聞を見る限り海軍の追っ手は回避不可能。
となれば減らせる敵はカイドウのみ。
俺への報復は“どうしても今すべきこと”でも“今しか出来ない”事でもねぇんだ。


「だが、それをさせてやるつもりはねぇ」
『は?』


海軍だけでも敵対させられりゃこれまでと大きく状況は変わるものの
どうせ勝手にドンパチやってくれるのなら、敵は多く強大な方が好都合。


ただ待っていれば消されてくれる可能性も上がる。
俺が直接手を下すとしても、注意を散らせればそれだけ勝機も増えるというものだ。






「シーザーを引き渡す最中、麦わら屋達の別動部隊がドレスローザ国内のSMILE製造工場を叩く。SMILE もSADも、在庫は残さねぇ」
『…そうなったらローへの復讐とSMILEの製造、どっち先に動くんだろ…。まぁどっちみちターニングポイントはシーザー受け渡しの時か。なるほど…』


遠く離れた海の上。
姿なんて見える筈ねぇのに、ウイが今どんな顔をしてるか
分かる気がした。

いつものあの癖。
あれをやりながら目を伏せて思考を巡らせてる。


「その為にもドレスローザに向かう。工場から目を剃らさせるのにシーザーの受け渡しは打ってつけ…ちょっと待て、おまえ今どこに居る」
『え?本部だけど?』


ふと疑念が沸いた。
ウイが何もしなかったとして、果たしてそれで問題はねぇのか。








いや、違う。
いくら突拍子がなかろうが勘違いだろうが
恨まれてる事にかわりはねぇんだ。


「直ぐに船を出せ!あっちからおまえの居場所が筒抜けなのは上手くねぇ!」
『え…あー…』


なぜ気付かなかった。
ブラーヴェ本部の場所はドフラミンゴじゃなくとも世間に知れ渡ったこと。

いくら手一杯であろうと
今そうすることにメリットがなかろうと
あっちが動かねぇ確証なんてねぇ!!


「今すぐだ!ソニアに状況を話して船を出せ!!行き先は告げるな」
『ちょ、ちょっと待って!!これからブラーヴェも忙しくなる時なのに…私の都合でそんな勝手な事出来ないよ!』


チッ


自分が舌を打った音が、やけに耳に響いた。





ンな事言ってる場合じゃねェだろうが。

捕まるなり殺されるなりすれば、今に限らず金輪際仕事も出来ねぇ。
例え重要な時期だとしても、ソニアも他のヤツらもウイを危険に晒してまで働かせようとはしねぇ筈だ。


「ならば俺から話す。おまえは出航準備でもしてろ」
『ちょっ…!!!待って!ロー!!!』


有無を言わせず受話器を置いた。
通話を切るだけなら、不要な程の勢いを付けて。




destruct at reality.