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「ドフラミンゴはこの国の真実が漏れる前に──今この島にいる奴らを皆殺しにするつもりだ!!!」
「え!!?」


ローがこの“鳥カゴ”の概要をルフィ達に伝えていた頃、ドレスローザの町では大混乱が起こっていた。
それをもたらす物はこの“鳥カゴ”と“寄生糸”。


只でさえ大量の“反逆者”が長いおもちゃの呪縛から解き放たれた。
おもちゃであった者の叫びや記憶を取り戻した国民達の混乱でパニック状態の国内。

更に──
人間に戻れたのだから祖国へ帰ろうと駆け出す国外の元おもちゃは、知らずに島を覆う“鳥カゴ”に触れ大怪我を負う。
“鳥カゴ”を形成するイトの切れ味は、抵抗すら無いままに人肉を断ち切る程。

混乱の沈静化にあたっていた海兵達は度々本部にでんでん虫を繋いでいたのだが…“鳥カゴ”が島を覆い尽くしたその瞬間、電波回線は途切れ外部との連絡は不通となった。

そして何よりも恐ろしいのが“寄生糸”。
これは10年前、リク王を操り国民達を襲わせたあの技。
操られる対象はランダム。
海兵が手当たり次第に銃を乱射し、助かったばかりの元おもちゃが最愛の家族が住まう家にに火をくべる。


それは10年前の比ではない程の、逃げ場のない悪夢。














混乱の最中、王宮からの放送が国中に響き渡る。
声の主は──


『ドレスローザの国民達…及び…客人達。別に初めからお前らを恐怖で支配しても良かったんだ…!!!真実を知り、俺を殺してェと思う奴もさぞ多かろう!!』


ドフラミンゴ。
この国の王で、この悪夢のような出来事の真犯人。


『──だからゲームを用意した。この“俺”を殺すゲームだ!!俺は王宮にいる…逃げも隠れもしない!!!この命を取れれば当然、そこでゲームセットだ!!』


国民の誰もがドフラミンゴを恨んではいても、敵わぬ相手である事も皆同じように理解していた。


『だがもう一つだけゲームを終わらせる方法がある…!今から俺が名前を挙げる奴ら全員の首を君らが取った場合だ!!!』


その心理を理解しているからこそ、ドフラミンゴは唆す。


『──なお首一つ一つには多額の懸賞金を支払う。殺るか殺られるか!この国にいる全員が“賞金稼ぎ”!!お前らが助かる道は誰かの首を取る他にない!!!』


二勢力の敵同士をぶつけ敵を減らす。
これがドフラミンゴの常套手段。







ドフラミンゴは続けた。

外への通信は不可能、助けは来ない。
突如暴れ出した者達はそれが家族であろうと親友であろうと、無作為に人を傷付け続ける。
逃げても隠れてもこの“鳥カゴ”の中に安全な場所等ない、と。

そして選べ、と。

俺の首を取りに来るか、ドンキホーテファミリーと共にそれに楯突く12名の受刑者に裁きを与えるか。


海賊『麦わらの一味』
“サイボーグフランキー” ★

ドレスローザ元王女
ヴィオラ ★

ワノ国の侍
“狐火の錦えもん” ★

海賊『麦わらの一味』
“悪魔の子”ニコ・ロビン ★

コロシアム囚人剣闘士(リク王の孫)
レベッカ ★

海賊『麦わらの一味』
“海賊狩りのゾロ” ★★

ドレスローザ元軍隊長
キュロス ★★

ドレスローザ元国王
リク・ドルド三世 ★★★

『ハートの海賊団』船長
王下七武海“死の外科医”トラファルガー・ロー ★★★

海賊『麦わらの一味』船長
モンキー・D・ルフィ ★★★

『革命軍』参謀総長
サボ ★★★

海賊『麦わらの一味』
“ゴッド”ウソップ ★★★★★


星一つにつき、懸賞金は一億ベリー。
受刑者の発表と共に放送は止んだ。


しんと静まり返る島内、そして徐々にどよめきが沸き起こる。
ドフラミンゴが諸悪の根元、それは誰しもが理解している。
ただ歯向かって勝てる相手でもなければ、受刑者達の首に賭けられた懸賞金にも目が眩む。


危機に晒されし民衆の矛先は
己の命が助かる可能性の高い方へと簡単に傾いた。

彼らは受刑者狩りへと動き出す。


各組織のトップが3つ星なのはまだ納得のいく所。
しかしウソップが5つ星とは…なんとも哀れ。
その懸賞金に見合う実力等ないのに…。


かくして始まったドレスローザの存続を賭けた“ゲーム”。
ドンキホーテファミリーとドレスローザ国民及び居合わせた者達に命を狙われる羽目になった受刑者達。

外への連絡は不通だが、内側は通じるようで
各々が身の安全を確保しつつでんでん虫での情報共有をはかる。

仲間や友に、自分がドフラミンゴをブッ飛ばしこのゲームを終わらせるから無事でいろと伝えて回るルフィに


「わかってんのか…?麦わら屋」


同じく3つ星受刑者の外科医が口を開いた。







鳥カゴが始まった時点で、俺の目論見が甘過ぎた事を理解した。
これから逃れる方法はあってないに等しいようなもの。
術者であるドフラミンゴを倒すか、ドフラミンゴが自ら術を解くか。


「ドフラミンゴを生かす事でカイドウと衝突させるのが作戦だった…」


俺は良い。
同盟の終結を伝えたあの時から、全てを投げうってでも自分の手でドフラミンゴを裁くと決めていた。
元から生半可な覚悟であの男は討てない。

例え失うモノが命だろうと、遺して行くモノに心残りがあろうと
それは手に入れたと勘違いしていただけの錯覚に過ぎない。

俺という人間はドフラミンゴを倒してこそ存在が赦される。
これは越えなければならねぇ壁だ。


「今ドフラミンゴを討てば…SMILEを失うカイドウの怒りは全て俺達に向けられる!!」


だがお前に、いやお前らに──
その覚悟はあんのか…?


「怒れる“四皇”と直接戦う事になるんだぞ!!!」
「そんな先の話後でいい!!この国よく見てみろ!今俺が止まってどうすんだ!!!」















堂々と言い切る麦わら屋に、ドフラミンゴを倒し国民と受刑者達を助ける事しか考えていないその真っ直ぐな目に
逆に俺の気掛かりの方こそおかしいと言われてる気分になった。


なんだか急に





全身の力が抜けた。


「よし!!さっきんとこ戻るぞ!!」
「待て!!俺は錠を外してからだ!!」


麦わら屋はそう言うなり俺と合流して来たゾロ屋を抱え走り出す。


コイツを見てると──俺の厄介事に巻き込みたくねェって気遣いは最初から見当違いの代物なんじゃねェかとすら思えてくる。
もう…ンなもんどうでも良くなった。


「そのうち外れるよ」
「外れるか!!!」


ピーカに放り出された場所は、王宮の外壁より外側。
王宮の石に続く最も遠い位置へ遠ざけられたらしい。

人の話も聞かず王宮へ向け一直線に走り続ける麦わら屋。


初めて会った時から、こういうヤツだとなんとなく分かっていた。

なぜ頂上決戦でコイツを助けたのか…
なぜ海賊同盟なんてモノを持ちかけたのか…


ああそうか──まるでそっくりだ。


後先考えずに目の前の大事なモノを守ってしまうこのガムシャラさが。

大抵俺の正論相手に言い返して来るヤツなんていねぇのに、真正面からぶつかってくる我の強さなんて特に。






ロー達が打倒ドフラミンゴを掲げ王宮を目指し始めた頃──
王宮ではドンキホーテファミリーが今後の方針と動きを確認すべく集結していた。


「ロー達の狙いはSMILEだろう!?」
「んねードフィ、俺達は工場を守らなくていいのか!?」


混乱しているのはこちらも同じ。
如何せん10年以上、この国は何の波風も立たずにここまで来た。


「開かねェよ、工場全体が海楼石だ。扉の鍵もここにあるしな」


落ち着きのない幹部達相手に、全く焦る様子のないドフラミンゴ。
そして彼は『ここにある』と言ったその鍵すらもその能力でバラバラに切り刻んだ。


「えェ!!?いいのか!!?」
「敵に希望なんていらねェだろ」


焦りはしないものの、余力を残した戦い方をするつもりもなさそうだ。
鍵を無くし困るのはファミリー側も同じ。

混乱の収まった後に作り直すとして、出来得る限り今の全力で受刑者達と戦う心構え。


「それにしても非力…まだ幼い少女一人守れんとは、トレーボル」
「黙れジジィ!!実年齢少女じゃねェよ!!んねーねードフィ!!シュガーについちゃあ本当に悪かった!!」


集結するファミリーの中
意識を失い眠る、見た目は幼きシュガー。
ドフラミンゴに“鳥カゴ”を使わせた直接の原因は、5つ星受刑者に気絶させられたこの少女。


「両手両足不自由になった男がまさかシュガーを気絶させるとは…!!想像できるか!?んねー!!」
「“メラメラの実”もそうだ!!まさか大会に革命軍のNo.2が出場してるとは想像できねェ!!」
「言い訳なぞするな!見苦しいバカ共め!!!」


そしてもう1つ痛手があるとすれば、ルフィを呼び寄せる為の餌にした“メラメラの実”が
実際に受刑者側に奪われ、その相手が更に革命軍の参謀総長という誤算。


「過ぎた事だ…お前らを責めても時間が戻る訳じゃあるまい」
「んね〜〜っ!!さすが我らがボスだ!!!べへへ!!ザマみろジジィ!!」
「そこまで言うなら許されよう!!」


ドンキホーテファミリーはボスの指示とあらばその誰しもがどんなモノでも差し出す集団。
例えそれが、命であったとしても。

しかし常日頃ファミリー達が命を軽んじた扱いを受けている訳ではない。
永年連れ添った幹部達に対するドフラミンゴの思い入れは並大抵のものではないのだから。







そんな中、この事態の沈静化に名乗りを上げたのは最高幹部ピーカ。
先程王宮での戦いでドフラミンゴをアシストした石に同化する能力者。


「好きに暴れていいのなら…俺一人で充分だ…!!!」
「フフフ…そう急ぐ事もない。いいか、このゲームはいわば国王を決する“選挙”だ」


普段は石と同化している事の多い彼も、今は人の形でこの会合に参加している。

ピーカの本体である身体は中々の巨体、筋肉隆々の逆三角形ムキムキマッチョ。
しかしその声は──何のギャグかと疑いたくなる程のソプラノボイス。

甲高く細いその声は、ゴツ過ぎる見た目のピーカの口から聞こえてくる事に間違いはないようだ。


「王に相応しいのは“リク一族”か“ドンキホーテ一族”か!…国民が王を選ぶ!!当然の権利だ!!!」


それを気にするピーカは普段人前ではあまり言葉を発しない。
幹部達は慣れたその声も、この場に在席する末端のファミリー、それも新入りには聞き慣れぬ物。


今後の重要な方針をボスと最高幹部が話し合っているのは皆理解しているのだ。
しかし──
天井のなくなった王座の間では至るところでひそひそとピーカの声をからかう囁きが…。


「俺達は来る者を叩き潰し、消し合う者達をゆっくり傍観していればいいんだ…」
「回りくどい…ドフィ、俺は──「ぶふぅ〜〜〜!!」
「「「「「!!?」」」」」


遂にその蚊の鳴くような声に吹き出す者が現れ、末端のファミリー達は肝を冷やし犯人は誰かとざわめく。
そしてドフラミンゴと最高幹部達が揃ってその声の発信元へと鋭い視線を向けた。


「す!!すいませんピーカ様!!お許しを!コイツ新入りで!!不意をつかれたというか…!!」
「生き埋めだ…貴様を石の中に──ドガガガガンっ!!!


「うわぁあァ!!!」


怒りを露にする嗤われた本人、ピーカが罰を下す為能力を発動しようとしたその時
幹部であるベビー5が代わりに吹き出した新人相手にマシンガンをぶっ放した。


「あなたが手を下せば死体も残らない。遺族が困るわ」
「悪いなベビー5…!!」


何発もの弾丸をその身に受け、既に絶命しているのではと思われる哀れな新人。
しかし無情にも動かなくなった体を、ベビー5は王宮の広間から蹴り落とした。


目の前でそれを目にした末端のファミリー達はざわつく事も出来ず、ガタガタと震えていた。




destruct at reality.