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お父様の気持ちも解る。

私は二年前にトラファルガー・ローの人となりもある程度知っているし、ドレスローザに着いてからの麦わら達の行動も黒脚の頭の中も見てきた。


でもお父様は違う。
お父様にとって“海賊”は10年前この国を襲ったドンキホーテファミリーであって
麦わら達やローがそんな輩ではないと判断出来るだけ彼らを知らない。


険しい表情で思案しているお父様に、トンタッタ族もコロシアムで麦わらに助けられたらしいレベッカも彼らがどれだけ信用のおける人物かを力説してくれる。


「ねぇヴィオラさん!その鍵私がルーシーに届けに行くよ!!」
「レベッカ!あなたも町へ降りればゲームの受刑者、ただじゃ済まないわ!!」


レベッカに至っては、手錠の鍵を自分が届けに行くとまで言い出した。

おもちゃの兵隊にされていたキュロス兄様に幼い頃から武術を教わっていた分、この子の戦いの腕は私よりも上。
だとしても…


「どの道じっとしていられないの!大丈夫よっ!!」
「…充分に気を付けて…行くのだぞ…!!」


その予想外なお父様の言葉に、思わず私の方が目を丸くしてしまった。
目を向ければ目を伏せ悔しそうな、難しそうな顔をしているお父様の姿。








きっと、解ってくれたのね。
彼らは普通の“海賊”ではないことを。


もしこの国が救われる事があるとすれば、それは今しかなくて
それを成し遂げてくれるのが彼らしかあり得ないことを。


トンタッタ族が彼らの空の通行手段、カブト虫の“イエローカブ”でレベッカとそれに付き添ってくれるロビン、バルトロメオとか言う麦わら達のファンらしき海賊をローの元まで送ってくれるみたいで。

それを眺める私達の間には久しぶりの親子の時間が流れていた。


「昔はあんなにレベッカにメロメロだったのに…孫離れしたのかしら?お祖父ちゃん」
「…母親に似たのだろう。レベッカはスカーレットに似て…一度言い出すと聞かぬ」


確かに。







そうは言いながらも険しい顔をしているお父様に、こんな状況にも関わらず思わず吹き出してしまった。


レベッカがお姉様に似て頑固なのも本当。

でもきっと…
彼らを垣間見た僅かな時間と私やレベッカ、トンタッタ族の言葉がお父様の心にも響いたのでしょう。

けれど
──きっと素直じゃないからそれを認められないのね。







ローの手錠の鍵を届けるべく、動き出したレベッカ達。
地下にいた筈のウソップとロビンは、少し前にトンタッタ族の誘導でリク王とヴィオラの居る“王の台地”にて彼らと合流していた。



シュガーにズタボロのめった打ちにされ、仕上げに激辛激マズグレープを食べさせられたウソップはまだ戦力としての復帰は難しく
ロビンがレベッカに付き添う中王の台地に残留が決定。



無事一段目に辿り着いたローとルフィを乗せたウーシーは、二段目を目指し犇めくファミリー達を蹴散らしながら中心部へと進んでいた。



少し遅れて
ロー曰くの“喧し集団”は王宮前広場にてファミリーや受刑者狩りに回った国民や元おもちゃ達を一掃し
ピーカ型の石像をルフィ達を追いかけ疾走中。



結果として受刑者側に架け橋を与えてしまったピーカはゾロの足止めを食らう。
麦わら一味No.2の実力を誇るゾロと
数千人に及ぶドンキホーテファミリーの中、最高幹部を任されているピーカ。
お互いがお互いでなければ止められぬ相手。
二人の戦いはまだ決しそうもない。



そして当初の目的、SMILE工場破壊に挑むのはフランキー。
そこに配置された幹部達は先程僅かにロー達と顔を合わせるも、ピーカによって分断され今も何名かが工場を守るべくその扉前に立ちはだかる。

能力者ではない彼がここの突破に動けたのは奇跡。
ただの偶然ではあるが、SMILE工場はその造り全てが海楼石。
しかし例え触れられたとしても、その扉は堅く閉ざされ開くための鍵も現時点でこの世には存在しない。

しかしロビン達を送る以外のトンタッタ族が今、その扉を内側から開くために彼ら独自のルートで工場へと向かっていた。



最後に──
ドフラミンゴ側である筈の海軍が王宮前広場で“喧し集団”を足止め出来なかった事には理由がある。

海賊の援護は“革命軍”の仕事かと問われると、その理由はこう答えた。
──“兄として”ルフィとその仲間に危害を加える者はこの先には通さない、と。

只でさえ巷を騒がせる革命軍のNo.2が、メラメラの実を携え海軍に牙を向く。
そう
海軍は今、ルフィの兄であるサボの足止めを食らい誰一人として受刑者を追えずにいた。



まだ読めぬ各戦局。
最初に動くのはどこで、勝利をもぎ取るのはどちらなのだろうか。





「あの牛!!“コロシアムの死神”だ!!なんで麦わらと!?」
「構うな!!止めろォ!!!」


ウーシーはそんな異名を持つ牛だったのか。


「ウーシーナメんなァ!!行けェ〜〜!!」
「モォ〜〜!!!」

「「「「ぐあァ〜〜!!!」」」」


確かにいくら闘牛とは言え破壊力が有り過ぎだ。
さっきから多少は麦わら屋が援護してはいるものの、数百にも及ぶ武器持ちのファミリー相手にウーシーはほぼ単独で道を切り開き進んでいる。


闘魚といいウーシーといい、この国の動物達はどうなってやがる。


「麦わらのルフィ!俺もゴッド・ウソップに命を救われた!着いて来いお前に協力する!上へ行く抜け道を見つけたんだ!!王宮前の“ひまわり畑”へ直行できる!!」
「えぇっ!?本当か!!?」


ウーシーの弾を避ける動きが比較的少なくなり快適になったかと思えば
現れたのは新しい恩返し衆。
こちらもファミリーよりは腕が立つらしく、ウーシーに攻撃する奴らを片っ端から蹴散らし始めた。


この男の言うことが本当ならば、思ったより容易に王宮へ辿り着ける事になる。
それは喜ばしい事ではあるものの、そうなると気がかりが一つ。


「おい麦わら屋、俺の錠はどこで外れる。海楼石の手枷が付いたままじゃ…ドフラミンゴに殺されに行くようなもんだ」
「まぁ、何とかなる!!とにかく行こう!!」










──色々と前言撤回したい気分だ。
やはりこいつとウイは全く似てねェ。


「何の自信だ!!じゃあさっきの台地へ戻れ!!鍵を探す!勝負は“勝つ”か“死ぬ”かだぞ!!」
「あそこだ麦わら!中へ進め!入口は俺が守る!!」
「おう!!ありがとう!!!」


──聞いちゃいねェ……。


喧し集団(追加)の誘導で、二段目以上の台地が聳える崖に構えた入口へと入っていくウーシー。
ここを抜けたら王宮前なのだとすれば、何がどうなれば何とかなって手錠が外れると言うのだろうか…。


ぷるぷるぷるぷる
ぷるぷるぷるぷる


そんな折、コートのポケットの中ででんでん虫が着信を知らせた。





「もしもし!俺はルフィ!!海賊王になる男だ!!!」
『ルフィね、私よ。こちらさっきあなた達がいた台地にいるわ。そっちは?』


でんでん虫をかけて来たのはニコ屋。
それを麦わら屋が勝手に出たせいで会話は進んでいく。


どうでも良いがあの出方…
麦わら屋ンとこのクルー以外からだったらどうするつもりだ。


「ロビンー!!今〜…一段目の山だけど“ひまわり畑”って所に向かってる!!」
『“ひまわり畑”は四段目よ!?…まぁいいわ。ヴィオラがトラ男君の錠の鍵を見つけたの!』
「!?本当か!!ニコ屋!すぐによこせ!どうしたら良い…!!?」


何て有能な女だヴィオラ。
一度ならず二度までも。

これで麦わら屋を戻らせる為になけなしの力を振り絞って武力行使に出ずに済む…!!


『こんにちはトンタッタ族のレオれす!今からレベッカ様とニワトリ大人間、そしてロビランドをそちらに特急でお連れするれす!!』
『後で四段目の“ひまわり畑”で落ち合いましょう』


やたら呂律の回らないこの喋りの相手が、噂のトンタッタ族か。
レベッカが確かリク王の孫娘でロビランドは恐らくニコ屋のこと。


…ニワトリ大人間は、何者だ…?


「え?お前らどうやってこっちに追い付くんだ!?」
『説明は後れす!!とにかく“ひまわり畑”で!!』


あちらも急いでひまわり畑へ向かうらしく、そう告げられるなり通話は切れた。


錠の方は何とかなる見込みが付いた。
次は──


「ほら!何とかなった!!!」
「偶然じゃねェか!!それよりお前…!!この道──」


本当にひまわり畑に続いてるンだろうなと、確認しようと思った。
しかしそれより早く、──感じたのは悪寒。


「モ…モォ!!」
「あれ!?行き止まり!!それに何だこの水!!!」


ウーシーの背に仰向けで乗せられていて視野が限られることと、錠の鍵が外れると聞き注意が散漫になったこと
そして“抜け道”の中が暗かったせいもある。

今までの爆走による衝撃がいつの間になくなっていた事に、気付くのが遅れた。


「ここはただの傾いた井戸だ。抜け道なんざあるか」
「え…!?──ドフラミンゴ!!?」


背筋が冷えたのはきっと、井戸水が発する冷気のせいだけじゃねェ。



最悪の想定、海楼石付きのままこの男の前に立たねばならねェ事態が
現にこうやって起きたから──。






おかしい。
おかしすぎる。

なぜこいつが誰も連れずにこんな王宮から離れた場所に…


「何でお前がここにいるんだァ!!!」


突如現れたラスボス目掛け麦わら屋の拳が炸裂した。


しかし足場が悪い。
案外水位は深いらしい井戸のせいか、半分浮力で浮いたウーシーは不安定。
これでは威力も速さも足りねェ…!


「フフフッ!!!助けに来たのさ!!つまらねェ罠にかかりやがって…何が“抜け道”!!」


案の定その打撃は簡単にいなされ


「“弾糸”!!!」


ドキュン!!!ドキュン!!!


「モー!!!モォオオ〜!!!!」
「見捨てろ麦わら屋!!」
「ウーシー!!!──うわっぷ!!」


反撃先は水中で機動力に欠けるウーシー。
激痛でのたうち回られては乗っているこっちが危険だと言うのに、麦わら屋は牛を見捨て水辺から離れる事をしない。

案の定振り落とされ水に浸かった麦わら屋と、元より海楼石で水に浸っているも同然の俺。








──詰んだ…。


お先真っ暗なこの状況で、ふと頭を過るのは先程のドフラミンゴの言葉。
“罠”“何が抜け道”…


つまりさっき助けに来たとか抜かしやがったあの男は、恩返し衆の皮を被った受刑者狩り。
それに麦わら屋はまんまと騙されたと言う訳か…。


絶望的な状況の中、なんとか溺れねェようにウーシーにしがみつく麦わら屋を横目で見た。













不思議なもんだ。
こいつの能天気が原因で絶体絶命のピンチに陥ったと言うのに
怒りも沸かなきゃただ純粋に、「だろうな」と思っている自分が居る。


「──この危機感のなさ!くだらねェ!!これじゃあ誰にでもお前らを殺せる!!!」
「ハァ…しっかりしろ…!ウーシー!!…ハァ」


今後に及んで自分より牛の心配。
流石だ、全く。


「外で俺の首を取ろうって奴らが暴れてんなァ…この状況でよく味方を得たものだ…!!その“特殊な力”には頂上戦争の時から一目置いていた…!!」


あぁ、なるほど。
確かにそうだ。

見た目インパクト有りまくりなオカマに海賊女帝、白猟屋に喧し集団…
麦わら屋は人を味方につける特殊能力があったのか。









──どこかにも居るな。
天竜人やら四皇に父親ヅラさせちまうような、変な女が。



 


destruct at reality.