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「だが当の本人がこの間抜けさだ!!──なぜこいつを選んだ!ロー…!!お前はもっと見込みのある男だった…!!!」


麦わら屋が間抜けなのは認める。
だがただ間抜けな訳ではなく、それは副産物。

こいつはそれを補えるだけの力と運、そして間抜けさに付随する“特殊な力”ってのを確かに持っている。


力を振り絞り何とか起こした上体でドフラミンゴを睨み付けた。


勝手にこの男の物差しで計られ見下された事に、…虫酸が走った。


「ガキの頃でさえもっと冷酷で!!もっと狡猾だった!!違うか!!?“一体誰が”お前をこんな腑抜けにしやがった!!?」
「黙れっ!!…何が言いてェ…俺はお前のようになる気はねェ!!俺は救われたんだ!!!」


確かに俺はその昔、今より冷酷で狡猾だった。
今もその名残はあるが、物の見方があの時と今ではまるで違う。

それを俺は悔いてねェどころか、感謝すらしてるってのに…!!
なぜこんな人の皮を被った化け物に腑抜け呼ばわりされなきゃなんねェ!!


「我が弟コラソンにか!?──それとも…今も尚死者を想う商人にでもほだされたか?」
「……!!」
















「ハッ…、簡単に動揺しやがって…興醒めだ。ガッカリだ!お前には実にガッカリしたよ、ロー…!!」


自分でも驚く程体が硬直した。
頭が真っ白とか、そういうのとは違う。
ドフラミンゴが先程ウーシーに放った“弾糸”を俺に向けて構えようとしているのも映像としてはわかってる。

カチャッ、と指からは鳴り得ねェ音のする人差し指が目と目の間を指して
あぁこれは終わったなと、そう思った。


「なら聞かせてくれ。腑抜けてねェなら!!お前はなぜこんなつまらねェ死に方をする!!?」
「やめろォ!!!麦わらさんに手ェ出すなァ〜〜っ!!!」


ドシュッ!!!












間一髪。
ドフラミンゴの胴体を真っ二つに引き裂いたのは元祖の方の喧し集団。

割けた腹から見えた内側は血肉ではなくイト。
おかしいとは思ったが、やはりこれは分身の方だったようだ。


「「えぇえええ〜〜っ!!?」」


みるみる内にドフラミンゴだった上半身はただのイト屑へと変わり果て、喧し集団は顎外すんじゃねェかってレベルで驚いていた。




助かった。
命も救われたが、その声ととんでもねェアホ面で
正気に戻れた。







結局それ以降、ドフラミンゴは分身を放棄したのかイト屑はピクリとも動かなくなった。
名も知らねェ喧し集団に井戸からウーシーごと引き上げられ、聞いて驚いたのは外の状況。

やはり“抜け道”を教えてきたあの男は俺らを騙していたらしく、入口付近で武器を構え突入しようとしていた所をドフラミンゴの分身に消されたようだ。

“助けに来た”ってのがあながち嘘じゃねェとこに、舐められ過ぎて更に苛立ちは増す。
そしてこの間に他の喧し集団は皆一段目のファミリーを蹴散らし終え、二段目に進んだらしい。




「──“ゴムゴムのォ〜〜…象銃”!!!」


暗い井戸に突然差す日の光。

先を越されたのがよほど悔しいらしい麦わら屋は井戸の天井を巨大化した拳で突き破り、偽の抜け道が本物の抜け道に変貌を遂げた。


何でも有りだな、本当に。


世話になった奴らに負傷したウーシーの手当てを任せ、再び俺を担いだ麦わら屋が駆け出す。
しかし目的地のひまわり畑までは、まだ距離がありそうだ。










さっき、ガラにもなく確かに俺は動揺した。


本当か嘘かは知らねェ。
本当だとして、なぜドフラミンゴがそれを知っているかも知らねェ。
更に言ってしまえば“それ”は…そうなんじゃねェかと予測していた事。

ただ──
誰かの口から言葉として“それ”を聞いたのは初めての事だった。


はいそうですかと聞き入れねェ為に、取り逃がさねェ為に、これを片付けてから聞くと約束した。
ウイが何を思っていようと、思い通りにさせてやるつもりはねェ。


ただそれでも
気持ちが他所を向いているという事は思いの外、ぐさりと刺さる物があるらしい。









誰かに笑顔で居て欲しいと思う感情が沸くのも
その為なら何だって出来そうな活力がみなぎるのも

生きたい明日があるのも
失いたくないナニカが存在するのも
“腑抜け”とは違うと俺は思う。


寧ろ、コラさんとウイに出会う事のない俺がもし存在するなら
俺はそいつ相手に余裕で勝てる自信がある。




イトに覆われ世界から隔離されたドレスローザ。
喧騒や銃声、悲鳴や破壊音が至るところで巻き起こるこの国は今、戦乱の中にある。

しかしそれもあと僅か。
悪が勝とうと正義が勝とうと、混乱はいずれ終息する。

何が“悪”で何が“正義”。
それは立場と見方によって変わる不思議なもの。
人々が口を揃え極悪人と称する者ですら、本人がその行いを間違いと思い実行する事は稀。

環境や価値観が違うだけ。
間違いと知りながらそれを遂行するのは、ほんの僅かな異常者のみ。
“誰か”にとっての間違いも、また別の“誰か”にとっては正しき選択。


この島は今、己の信ずる正義の為に命を賭け立ち向かう者達で溢れていた。




“侍救出”、それはローからすればオマケで着いてきたようなついでの目的。
ドレスローザの地下、おもちゃであった者達が労働を強いられていたその場所で
錦えもんは仲間の侍、カン十郎と無事再会を果たす。

そこには同じくおもちゃにされていた数百人の元国王軍や国民達が。
カン十郎の絵を具現化する能力を使い二人は地下から脱出。
他の者達をも地下から引き上げた後、二人は王の台地にてウソップ達と合流する。



続いて戦局が動いたのはSMILE工場。
閉ざされた入口前でフランキーと幹部のセニョール・ピンクが熾烈な戦いを極める中
トンタッタ族の中でも羽のある者達が工場内部への侵入に成功。

トンタッタ族の姫君、マンシェリーの病気を治す為と騙され奴隷として働かされている数百の仲間達目掛け
彼らは人文字ならぬ小人文字で真実を伝えるメッセージを送る。

“中からカギをあけろ!”
“ぼくらはだまされた!!”
“たたかえ!!!”と。

騙されやすい彼らではあるが、それは人を信じやすいが故。
相手が仲間であれば、それ以上に信ずるに値するものなど存在しない。

SMILE工場内の数百のトンタッタ族は奮起し、中で見張りを行うファミリーを一掃。
外部との連絡防止にでんでん虫は全て野生に返し、工場の扉を開く。

解放されたトンタッタ族分の戦力が受刑者側へとそのまま崩れ込むものの、彼らの大切なマンシェリー姫が治療にあたっている筈の部屋に彼女の姿はなかった。

そしてフランキーとセニョールの激闘はまだまだ続く。







王の台地は今、受刑者側の指令本部となりつつある。
解放されたトンタッタ族も、工場にマンシェリー姫がいなかった事を伝えにそこを訪れた。

各戦局の状況をその千里眼で把握するヴィオラは、マンシェリー捜索に踏み出す。
マンシェリーはヴィオラと同じく、ドフラミンゴが欲する能力を持つ小人の姫君。
あちらが姫の能力を手中に納める前に救出したい所。

王宮の中に視線を飛ばし隈無く捜索を行うヴィオラは遂に、礼拝堂裏で幽閉されている彼女を発見。
配置と戦力を考慮し、ヴィオラはその救出をローの鍵を届けにひまわり畑へ向かっているトンタッタ族のレオに託す。



ゾロとピーカは相変わらず、一進一退の攻防が続く中お互いの足止めに成功していた。



そしてその頃、最も状況が入り組んでいる王宮の聳え立つ台地では…
二段目に到達した“喧し集団”の行く手を阻むべく、遂に幹部達が動き始める。
ただの雑魚兵とは動きも能力も格段に異なる幹部達相手に、流石の世界各国の強者達も敵への認識を改めだした。

そんな中遅れを取り戻すように猛スピードで台地を駆け上がるのはローを担いだルフィ。
雑魚兵の残党を見事に蹴散らし戦場を駆け抜ける彼らの通った後の敵のいない快適な道を通り、レベッカの父キュロスも王宮へと向かう。

ルフィ達が先を行く喧し集団へ追い付く頃には
ここまでの彼らの猛追は勢いを潜め、寧ろ状況は幹部達優勢へと傾いていた。
誰もが自分こそドフラミンゴの首を取ると意気込んでいた筈が、その部下相手に苦戦を強いられる現状。
バラバラだった彼らが打倒ドフラミンゴの目的遂行の為、纏まり始める。

喧し集団は、ルフィの進む上の階層へと続く道には決して幹部を入れぬよう連携を謀った。
唯一脚を持つ白馬に乗るキャベンディッシュ──王子気取りの痛いヤツと称された彼とルフィ、ロー、それにどさくさに紛れ追い付いたキュロスは
彼の愛馬で戦場を駆け抜け漸く三段目へと到着する。

三段目で待ち構える刺客は大量の雑魚兵でも幹部でもなく、カタカタと無機質な音を立てるゼンマイ仕掛けの無数の巨大なオモチャ達。

台風の目の如くこの混乱の中心にいるルフィとローは知らない。
ウソップがなぜ沢山の喧し集団に恩人と慕われているのかを。

その原因を作った
見た目は少女のドンキホーテファミリー幹部、シュガーの能力を。







各戦局に視線を飛ばすヴィオラも丁度、三段目に到着したロー達を見ていた。
元幹部のヴィオラはすぐに事態を把握する──シュガーが目覚め再びオモチャの兵を増産していると。

そこでやっと激辛激マズグレープとシュガーから受けた傷から立ち直ったウソップは、シュガーの能力を知らずにいるルフィ達に彼女の能力が及ばぬよう
対策を検討し始めた。

シュガー本体は三段目にはいないとしても、頭が落とされようと胴体に風穴が空こうと再び動き出す不死身のオモチャ兵は手強い以外の何者でもない。
そして更に、このゼンマイ仕掛けの巨大な兵士は機敏かつ強力な顎力を兼ね備えているのだから困りものだ。

戦ってもただこちらが疲弊するだけのそんな状況の中、天より助けが舞い降りる。
舞い降りると言うよりも、銃撃系の幹部にイエローカブを撃ち落とされたロビンと麦わら海賊団の大ファン、ニワトリ大人間ことバルトロメオが空から落ちて来ただけなのだが。

二人は幹部とゼンマイ兵士は自分達に任せ、鍵を持つレベッカの待つひまわり畑へ向かうようルフィ達と敵の間に立ち塞がる。

バルトロメオは“バリバリの実”のバリア人間。
そのバリアは敵からの如何なる攻撃も通さぬ防御重視の能力と見せかけて、バリアで階段を作りルフィ達を四段目へ送り届けるにも役立つ補助系でもある。

ルフィとそれに担がれたロー、キュロスがその階段を駆け登り四段目へ向かう中
彼らが無事階段を登りきれるよう援護するのはロビン、キャベンディッシュ、バルトロメオ。

そして四段目のひまわり畑では
マンシェリー救出に向かうトンタッタ族のレオと別れたレベッカが、あろうことか最高幹部であるディアマンテと対当していた。

ディアマンテはレベッカの母、スカーレットを殺した張本人。
彼女はその衝撃的な事実をつい先刻、コロシアムでの決勝の折に聞かされたばかり。

一対一での真剣勝負でレベッカが彼に勝てる要素等どこにもない上、知ったばかりの母の仇の存在に彼女は今激しく動揺していた。
しかしレベッカもここで負ければ大切な鍵を届ける事が出来なくなる。

彼女が取った行動は、逃げの一択。

バリアの階段を駆け上るルフィとロー、キュロスと
ひまわりをかき分けディアマンテから必死で逃げるレベッカ。




果たして彼らは、間に合うのだろうか。





destruct at reality.