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「何でも、だ。お前が望むならば…ウイの方は多目に見てやる。直接動いた訳ではなかろうと、今回俺達が受けた被害は甚大。それを水に流してやっても良い」
「べへへ〜!ドフィったら太っ腹ー!!べっへっへ!!」


そう来たか。
…確かにそれは、心配だ。


「──それが本心なら、…名案だな。互いに利がある…ハァ──よし…乗った…!!ハァ」


ドフラミンゴの口角がニヤリと上を向いた。


“何でも”という言葉を使っておいて
こっちの願いを勝手に指定してんじゃねェよ。

“何でも”は“何でも”だ。


俺の望む物くらい実現出来る気でいるこのバカな男を
決して許さねェと俺はガキの頃から決めてるんだ…!!












「──じゃあ今すぐコラさんを蘇らせてくれ…!!──そしてこの国の国民全員のケツを舐めて来い」
「!!!」









一度いい気になった元天竜人の表情がピタリと動かなくなった。
そして額で膨張し出す青筋。











「やはりお前はウイを何一つ解っちゃいねェようだ…!アイツは守って貰う事を望むような、可愛気のある女じゃねェ…!」


俺が“もし”本当に今ここで死ぬのなら
いくらべガス聖やブラーヴェの後ろ楯があるとは言え確かにウイが心配だ。


だがもう既に
ここで死んでやれねェ準備を、心配しかかけねェバカ女の元に戻る準備を
こんな状況でも整えちまった。


「それに“麦わら一味”もだ…。奴らはこれまでもあらゆる奇跡を起こして来た。お前には倒せねェ…!!シーザーも取り返せねェ…!てめェの未来こそすでに…」


ドンッ!!












これで良い。











一発でとどめを刺させねェ為に
苦しんで死なせてェと思わせる為に
敢えて言葉を選んで挑発した。


案の定、鉛弾が打ち込まれたのは急所ではなく腹。


うつ伏せに倒れ込み
あとは事前に目星を付けていた体格の合う男の死体を借りるだけ。



──“シャンブルズ”。











仏だろうと敵側にいた人間だろうと
全く悪ぃと思わねェ訳じゃねェ。


すり替えさせて貰った死体の転がっていた王宮の中庭で遠くで何発もの銃声が鳴り響くのを聞きながら、腹から鉛弾を1つ除去した。





ローとドフラミンゴの対決。
王座の間に叩き落とされた際の粉塵に紛れて、ローはその痛みに耐えつつ王宮全体に薄く“ルーム”を展開していた。

右腕を失いはしたものの、相手方に死んだという認識を与えながら生き延びたローは逆転の機会を見計らいながら銃声が止むのを待つ。
その瞳に宿る意志に、諦めの色は見られない。


他の局面はどうなったのだろうか。


SMILE工場で戦うフランキーとセニョールピンクは、なぜかお互いが男気に拘り相手の攻撃を避けないという謎の勝負を展開していた。

お互いに100%の攻撃、それを真正面から食らい立ち上がる。
律儀にその攻撃も交代制という戦いの中、最後にそこに立ち上がったのは──フランキーであった。


次に移る局面は、序盤より探り探りで中々状況の動きが見えなかった
麦わらの一味No.2の実力を誇るゾロと、ドンキホーテファミリー最高患部であるピーカの戦い。

同化する石のサイズによってはその攻撃の破壊力は格段に跳ね上がり
例え石の傀儡が攻撃を受けたとしても本体はノーダメージ。
一見無敵に見えるピーカの特性を、戦いの中でゾロは見抜いていた。
逆に時間と手間ばかり取らされ何の実りもないゾロとの戦いに痺れを切らしたピーカは、攻撃の対象を変えようと動き出す。

国民達の何割かは、未だにドフラミンゴのゲームを信じ受刑者達を血眼で探している。
しかし──先のドフラミンゴの国内放送と、今ドレスローザで起きているこの大惨事、更にはおもちゃにされていた者達から語られる言葉によって、10年前に起きた事件の真相を悟る国民達も大勢いた。

王の台地で戦局を見守るリク王の周りには
ヴィオラやウソップを初めとする受刑者達と、リク王がそこに居るとの噂を聞き駆けつけ沢山の救いを求める国民が集っていた。

巨大な石に同化したピーカの新しい標的は、そこにいるリク王。
勿論“そう”なれば周囲の人々への被害は甚大。
しかしそれは、麦わら一味No.2を背負う男が許さない。

巨大な石像となり王の台地へ拳を落とそうとするピーカを、ゾロはその三本の刀で分断していく。
ダメージは0。
しかしピーカの宿る石はいつも1つ。
分断した後、少しでも動く石に本体が“居る”事を割り出したゾロは
本体を確実に追い詰めていた。





同化出来ぬ程のサイズに切り刻まれたピーカは、遂に本体でゾロとの戦いに挑む。
お互いに武装色の覇気を扱う剣士。
勝敗はその剣術と、覇気の強さが決め手となる。

お互いの本気の一撃の後、自身の足で立ち剣を鞘におさめられたのは…ゾロであった。



次々に決着の付いていく国内の情勢。
忘れてはいけないのが、何も剣を交え殴り合う事だけが戦いではないと言うこと。

危うくルフィとローがシュガーの餌食になるのを救った男。
彼こそが、5つ星受刑者“ゴッド・ウソップ”。

トンタッタ族のマンシェリー姫救出の為王宮内を探していたヴィオラが見つけたのは、気を失っていた筈のシュガー。
彼女が目覚めているという事は即ち、再び触れられた者はおもちゃにされ、おもちゃにされた者は周囲から忘れられてしまうという事。

シュガーの能力を知らぬルフィとローが彼女の手にかかりでもすれば、折角他の局面で次々とこちら側が勝利をおさめていたとしても肝心の大将を倒す人物がいなくなってしまう。

しかし受刑者側の戦力は交戦中又は王宮から離れた位置にしかおらず
シュガーの状況、現在地、その能力を理解し倒す術を知る適合者は誰もいない。
そこで立ち上がったのがウソップである。

カン十郎の絵を具現化する能力を借りたウソップは王の台地から肉眼では数ミリにしか見えぬ程の距離に聳え立つ王宮、更にはその内部にいるシュガーを狙撃で狙う。
普通それは、やろうとも思わぬ事。

ウソップがカン十郎に具現化させたのは、“あの”グレープを食べた時の自分の顔。
彼に味方したのは、風とヴィオラの千里眼、そして
この時彼の中で覚醒した見聞色の覇気。

その結果こそが──当時ローが見た黒い影と、泡を吹き倒れた謎の幼女であった。



そしてウソップが救った局面はもう1つ。
ひまわり畑でディアマンテと対当するキュロス。
スポーツマンシップ等皆無なディアマンテに弱点であるレベッカを狙われ、それを庇いながら戦うキュロスは言うまでもなく劣勢。

しかし、シュガーが再び意識を失った事で3段目のゼンマイ仕掛けのおもちゃ達が人へと戻る。
その対応に追われていたロビンが4段目のひまわり畑へ駆けつけ、レベッカの警護へとあたった。

ここからが漸く──キュロスとディアマンテの一対一の対決である。




キュロスはコロシアムに銅像が建てられる程の実力を持つ伝説の剣闘士であり、元国王軍の軍隊長をも勤めあげた男。
例え分身であろうと、一撃でその首を落とすだけの実力を彼は兼ね備えている。

対するディアマンテはドフラミンゴが王位に着いて以降、コロシアムの番人として手強い反逆者もとい囚人剣闘士達をことごとく返り討ちにしてきた男。
彼もまた、キュロスと同じく剣を用いた戦闘スタイルを取る。

二人が直接人の形でぶつかるのは初めてのこと。
いくらディアマンテが最高幹部とは言え、剣術のみであれば恐らくキュロスの圧勝であろう。

しかし、ディアマンテはヒラヒラの実の能力者。
彼はその能力で足場を波打たせ
事前にニ次元化しておいた仕込みのトゲ鉄球を元に戻し、空から降らせる事も厭わない。

ロビンはひまわりの花傘で自身とレベッカをトゲ鉄球から守り
キュロスは降り注ぐ星屑のようなそれを剣で全て弾きその足を一歩、また一歩とディアマンテへ向けて踏み出す。
“正々堂々”とはかけ離れた存在の敵に、鉄球に意識を集中し無防備になった足を撃ち抜かれても尚その足が止まる事はない。

キュロスにとって、永年痛みすら感じる事のなかったおもちゃの兵隊であった時間は
何にも代えがたい地獄であった。

例え今足に激痛が走ろうと、トゲ鉄球が体中に刺さり血が流れようとも
後ろに控える娘を守り愛する妻の仇を討てるというこの状況を手離す事など決してない。
考えもしない。

鉄球も銃も効かず、剣を構えひたすらに向かってくるキュロスはさぞ恐ろしかった事だろう。
先にお伝えした通り、剣技での腕比べなら勝るのはキュロス。
ひまわり畑での戦いも無事、決着となる。



そしてレベッカと別れたトンタッタ族のレオが向かった先。
そこは王宮に囚われたマンシェリー姫の元。
なぜ、彼女が囚われの身となったのか。

それはドフラミンゴが彼女のチユチユの実の能力を欲したから。
マンシェリーは通常、魔法の水が出る“ジョーロ”を使い傷を癒す。
気絶していたシュガーが一度目を覚ましたのは彼女の能力。

今、受刑者達に敗れ満身創痍となった幹部達は続々と彼女の元へと運ばれて来ている。
騙されやすいトンタッタ族とは言え、流石にこの騒ぎともなれば
マンシェリーもドンキホーテファミリーが悪者と気付き頑なに治療を拒んでいた。




敗れ戦闘不能となった幹部達ではあるものの、一方的に傷を負った訳ではない。
負けはしても腕は立つ。
マンシェリーに傷を治療されてしまえば、受刑者側にとってそれは何にも代えがたい脅威。

そしてチユチユの実はジョーロを出さずとも能力者の涙で傷を癒す事が出来る。
それがファミリー側に知られでもしたら一大事。

頑なに治療を拒む姫に遂に拷問が行われ始め、マンシェリーがその痛みに涙を溢しかけたその時──
間一髪でレオが幹部をたおしマンシェリーを救出する。
敗れた者達の復活は阻止され、癒しの能力が受刑者側へと加わった。




斯くして、ドンキホーテファミリーに残る強敵はトレーボルとドフラミンゴの二人のみ。
銃声が鳴り止み自分の衣服の中へとローが戻るのと
分身のドフラミンゴを片付けたルフィが王座の間へ戻るのはほぼ同時であった。

ルフィは心理戦や戦いの中での会話による小細工等不向き…というより寧ろそんな事等考えもしない。
戻って早々全力の攻撃を仕掛けるルフィと、それに応戦するドフラミンゴ。
しかし攻撃をかわし着地したその場所では、“何か”がルフィの足を滑らせた。







それこそ断罪によって出来た血溜まり。
その中心に倒れる、意識も腕もないローにルフィは怒りを露にする。

すぐにでも友達をこんな目に合わせた奴へと飛びかかろうとしているルフィをとどめたのは
表向きはドフラミンゴからの“ゲーム”のルール変更の説明で、実際は死んで等いないローの言葉。

一見死体を前に膝をつき絶望しているように見えるルフィに告げられた新しいゲームの主旨とは、ただの殺戮ゲーム。
“初めから、国の秘密を知った者は誰一人として生かしておくつもりはなかった”と。

少しずつ内側へと収縮を始める鳥カゴ。
先にも説明した通り、この鳥カゴを形成するイトは人も建物も容易に切り刻む。

それに気付いた国民の悲鳴が国中に響き渡る頃、背を向け肩を落とすルフィにドフラミンゴは告げた。

早かれ遅かれ皆死ぬ
ローは一足先に死んだだけだと。

奥歯を噛みしめ立ち上がり、ドフラミンゴを睨み駆け出すルフィのそれは演技なのか
それとも──国民達を欺き虐殺する事を何事もないように語るこの男への怒りか。


ルフィが怒りの表情で技を構えその腕が後方へと伸びた時


「──“シャンブルズ”」


死んだ筈の男の声が静かに響いた。


1901


destruct at reality.