17-7



「取り敢えずポーラータングに移動しよっか。それ手当てした方良さそうだし」


さっきのやり取りを聞いてた分には
私が逃げたりなんかしたらペンギンに迷惑がかかりそうだ。

麦わら…ルフィくん達との話し合いがどれくらいかかるのかはわからないけど
ポーラータングに行けばいつかローは帰ってくる。


楽な方へと逃げ続けて招いた結果がこれだっていうのに
性懲りもなくまた逃げたいとか思っちゃう自分には呆れしか沸いてこない。


「行こ?特にジャンバールがウイ来んのすげー待ってると思う」
「…なんで?」


会えるのを楽しみにされてないのも悲しいし、ハートの海賊団の皆ならそんな訳ないって分かってる。
けど卑屈になった心は、素っ気ない返事を口から溢させた。



「ジャンバールの今のブームが紅茶なんだけどね、茶葉の種類とか淹れ方とか熱弁されても俺らわかんないのよ」
「…なるほど」


つまり私なら話が通じるだろうと、そういう事か。


私に飲ませるって選りすぐりの紅茶を準備してくれてるらしい事とか、紅茶を使ったお菓子まで作ってくれてる事とか
その前はカクテルとおつまみ作りのブームが来たらしくて、その時は皆大喜びだったとか。


あんな状況の後だっていうのに、不自然さなんて微塵も感じさせずにさっきの話に触れないでいるペンギンは相変わらず凄いと思う。


「あ、そうだ。ウイちゃん余ってるロープない?太さあんまなくて長いやつ」
「?あるんじゃないかな。何に使うの?」


関係ない話のおかげで、涙も引っ込んだし皆の前でもちゃんと出来る気がして来たところで
ふとかけられたそんな言葉。


確か地下二階の作業スペースに余ってたロープならあった気が…


「え?縛ってでもってキャプテン言ってたじゃん?縛りならやっぱまずは王道で亀甲縛りからっしょ」











折角上がってきた階段、それを一瞬でも降りようとか思ってしまっただけでも損した気分だ。









信じられないって目で睨みつけても、それすら面白がってるペンギンは
いつも通りけたけた笑ってた。







「ねぇ、ローが呼ばれた用事って…どのくらいかかるのかな」
「どうだろねー。俺もそこまではわかんない」


結局ロープなんて取りに行く訳なくて
フリーウィングからポーラータングに移動する為に甲板に続く扉を開いた。


ペンギンがあれが今回一緒に行動する奴らって指差した先には、麦わら海賊団の船に集まる大きな犬?みたいな人とロー、後ろ姿だけどあの麦わら帽子はきっとルフィくん、それと

さっきはいなかった新しい小舟から渡ってくるこりゃまた大きな猫みたいな人と────














「う…そ……」
「ん?どしたの?」
















折角泣き止んだのに、熱くなる目頭からはさっきの比じゃない量の涙がどっと込み上げて来る。


「え、ちょ…は?!え?俺??」
「ぅう、っく…ひっ…」


珍しくおろおろしてるペンギンに返事すら出来ない。
涙でぐしゃぐしゃの顔を覆ったまま、思い切り首を横に振った。


「…ルコ…、ひっく…コの…」


泣きじゃくりながらも懐かしい家族に声が届くように、深く息を吸い込んで














「──マルコの、バカァっ!!!!」












思い切り叫んだ。






バカって言っておいて、その人がバカじゃない事はよく知ってる。
こんな風に怒鳴っておいて、また会えた事が嬉しくて仕方ない。






無事でいてくれて、生きててくれて
本当の本当に良かった。










泣きじゃくってたのと叫びすぎたせいで酸欠の頭がくらくらした。




無事ならなんで今まで連絡の一つもくれなかったの?

他の皆は無事なの?

あの時、そっち側では何があったの?

エースはパパにも皆にも、本当に感謝してたよ。





伝えたい事も聞きたい事も沢山有りすぎて
でも涙は止まってくれそうもなくて

ただ顔を覆って泣きじゃくってたら、指の隙間に懐かしい青い炎が見えた。







「…久しぶりだってのに、バカはないだろうよい」






呆れたように紡がれるそんな言葉に耐えきれなくなって、声のする方に突進した。

受け止めてくれた懐かしいぬくもりに、また涙が出た。







「ねぇ、ローが呼ばれた用事って…どのくらいかかるのかな」
「どうだろねー。俺もそこまではわかんない」


結局ロープなんて取りに行く訳なくて
フリーウィングからポーラータングに移動する為に甲板に続く扉を開いた。


ペンギンがあれが今回一緒に行動する奴らって指差した先には、麦わら海賊団の船に集まる大きな犬?みたいな人とロー、後ろ姿だけどあの麦わら帽子はきっとルフィくん、それと

さっきはいなかった新しい小舟から渡ってくるこりゃまた大きな猫みたいな人と────














「う…そ……」
「ん?どしたの?」
















折角泣き止んだのに、熱くなる目頭からはさっきの比じゃない量の涙がどっと込み上げて来る。


「え、ちょ…は?!え?俺??」
「ぅう、っく…ひっ…」


珍しくおろおろしてるペンギンに返事すら出来ない。
涙でぐしゃぐしゃの顔を覆ったまま、思い切り首を横に振った。


「…ルコ…、ひっく…コの…」


泣きじゃくりながらも懐かしい家族に声が届くように、深く息を吸い込んで














「──マルコの、バカァっ!!!!」












思い切り叫んだ。






バカって言っておいて、その人がバカじゃない事はよく知ってる。
こんな風に怒鳴っておいて、また会えた事が嬉しくて仕方ない。






無事でいてくれて、生きててくれて
本当の本当に良かった。










泣きじゃくってたのと叫びすぎたせいで酸欠の頭がくらくらした。




無事ならなんで今まで連絡の一つもくれなかったの?

他の皆は無事なの?

あの時、そっち側では何があったの?

エースはパパにも皆にも、本当に感謝してたよ。





伝えたい事も聞きたい事も沢山有りすぎて
でも涙は止まってくれそうもなくて

ただ顔を覆って泣きじゃくってたら、指の隙間に懐かしい青い炎が見えた。







「…久しぶりだってのに、バカはないだろうよい」






呆れたように紡がれるそんな言葉に耐えきれなくなって、声のする方に突進した。

受け止めてくれた懐かしいぬくもりに、また涙が出た。





顔を覆っているあの様子では、ウイはまた泣いてるんだろう。

そしてそこへ降り立つ青い炎。


駆け出したウイが炎に包まれたと同時に
再び姿を現した不死鳥屋としっかり抱き合う姿が目に飛び込んで来た。


「──ルーム、シャンブルズ…!!」
「え、おわっ!!!」


考えるより先に、体が動いた。
二人に最も近い目に付く存在、入れ替え先にさせて貰ったのは手近なペンギン。


ジャキン


「離れろ不死鳥屋」
「…まぁ落ち着け、取って食いやしねぇよい」


鬼哭を鞘から抜き、いつでもバラせるよう構える。
不死鳥屋にとって俺の能力は、例えいくらか情報を持っていたとしても所詮初見。

生き死にを賭けた戦いならともかく、この場でウイを奪い返すくらいなら
こっちに分があるとたかをくくった。


「こいつは妹だよい。2年前生き別れてぶりなんだ。話くらいさせてくれ」
「…」


口調も声色も至って穏やか。

だが
こっちに判断を委ねているように見せかけて、たかが視線一つでのし掛かってくるこの有無を言わせねぇ圧力は相当のもの。


「ウイの周りは本当に過保護が集まるよい…ほら、ウイからも何か言──」


ふるふると首を横に振り不死鳥屋の胸に顔を埋めるウイに怒りが沸いた。


俺にかける言葉がねぇ事に腹がたった訳じゃねぇ。
さっきの今なのも理解してる。

だが…
他の男に力いっぱい抱き付いているこの構図は、時間の経過に比例して苛立ちが募っていくばかりだ。


やれやれと肩を竦め完全に緊張を解いているこの様子では
俺は品定めされた結果、警戒するまでもねぇと判断されたんだろう。


「…大事な話の途中だ。逃げられンのは困る」
「30分、いや…20分で良い。逃がしやしないよい、これでどうだ?」


視線がぶつかると言うより
目の裏側を探り合っているかのような気分だった。


正直、考えも纏まらず飛び出した。

かっ拐われるんじゃねぇかと心配して
必要以上に近い距離に腹を立てて。


だが不死鳥屋が逃がす手引きをしねぇのであれば、他方面からの刺激でウイの考えが変わる可能性もなくはない。


条件を飲もうと決断し口を開きかけたその時
睨み付けていた対象は姿を消し、青い残像が視界上部を掠めた。






「ダメだと言われても困るんだな、これが。…悪く思うなよい」
「!!」


頭上から聞こえた声と羽音。


俺が張ったルームから外れた先で、揺らめく青い翼を纏った不死鳥屋がウイを抱えたままこっちを見下ろしていた。


目が合った途端、口の端がつり上がったように見えたのは気のせいだろうか。
穏やかそうに見えて案外好戦的なのかもしれねぇ。


条件は飲もうとしていた。
フリーウィングのマストの方へと羽ばたいていく二人の後ろ姿に、特段問題等ない。

だがしかし、返事をする前に強行突破されたせいか
不死鳥屋の印象は格段に悪くなった。


「ちょっとキャプテン急にやめてー。只でさえ謎に泣き出されてビビってたのに」
「──あぁ、悪かった」


普段、クルー達とシャンブルズで入れ替わる事は滅多にしねぇ。
する時は事前に打ち合わせていた。


案の定文句を言いつつ戻ってきたペンギンが、横に並んで同じくマストを見上げる。


「あのパイナップルがネコマムシの旦那が言ってた白ひげんとこの知り合い?ウイちゃんと随分仲良さそうだけど」
「…俺が知る訳ねぇだろ」


実際白ひげ本人やそのクルー達との話を聞いたのはあの告白未遂の時の一度だけ。

とてつもなく嬉しそうに話していた覚えはある。
あの時それが気に障らなかったのは
ウイが俺に告白しようとしていたという余裕があったから。


「キャプテンは泣いて拒否られたのにね。ざんねーん」
「おい…流石に笑えねぇ」


本人達がお互いの関係にどんな名前を付けようと
所詮白ひげ海賊団とウイは"他人"。
いつ何が起こって、"家族"から"男女の関係"に変わっても何一つ可笑しなとこはねぇ訳だ。


不死鳥屋とウイのこれまでの関係性は知らねぇが
火拳屋へのあの依存云々に物申してくれるだけじゃなくあの二人の仲まで発展するような事があれば、それは大問題。


「で?後で話すって言ってたその"後"ってのは?今じゃないの」
「…また二転三転すんだろ、これは」


ともかく。
またウイと話さなければならない。


見上げた先の2つの人影。
何がそこで話されているのか、スキャンで覗く事も出来たのにしなかった。


いやきっと、これは“出来なかった”に近い。




destruct at reality.