18-4
「癖、みてぇなもんだからな」
「うわ、開き直った」
私だって直そうとしてもそんなに簡単には直らないんだ。
簡単に直すって言わないからこそ、ローの言葉の信用度は更に上がった。
「ただ、俺がこの先…おまえに無断で何を決めようと、それにおまえがどんだけ怒り狂おうと」
「…いや、怒り狂ってはなかったでしょ?なんで?っては、思ったけど」
そんなデフォルトで毎回私が怒り狂ってるみたいな言い方しないでよ。
流石にそこまで自分を抑えられない訳じゃない…と思う。
「俺はおまえがうぜぇくらい笑ってて、騒がしいくらいはしゃいでんのを見てるのが、結構好きだ」
ど、どうしたロー…。
急に好きとか言われてビックリした。
ウザいとか騒がしいとか、なんか色々付いてるけど
そんな事で帳消しにならないくらい凄い事言われてる。
「それでどんだけおまえが許せねぇ事がこの先あったとしても、俺はおまえがそう在れるように…考えて動いてる…つもりだ」
「…えへへへ」
どうしよう嬉しい。
嬉しすぎてぎゅってしがみついた。
もっと信じよう。
私自身も、もっと自信を持てる人になろう。
この人は、今までだってこんなだった私のこれからの人生と同じくらいの価値を
滅多に手に入らなくて衝撃的なお値段らしいこの指輪でも足りないって
そう言ってくれる人だから。
「…行きたいけど…今じゃないって思うから。でもいつか…連れてってくれたら、嬉しいな」
「それは構わねぇが…墓参りっつってもそこには何もねぇぞ」
すっかり仲直りモードな私達は、抱き合いながらそんな他愛もない話を交わした。
ローがお墓参りしたいって言ってる場所には、コラさんの体も眠ってなければ
墓標だって建ってないってこととか。
それでもやっぱりいつかその場所に行ってみたいって思った。
お墓参りだけじゃない。
私の知らない過去のローが過ごした場所に
悲惨でしかない出来事かもしれないけど、ターニングポイントにもなった場所に
行ってみたいって、そう思った。
「そうね、別にウイがいるなら構わないわ。どうせあなた、居たって特にしたい事とかないんでしょう?」
「あぁ、全部コイツに任せる」
デロアに着いて、真っ先にブラーヴェの本部に向かった。
ソニアやアオイ、カレンやディゼルにシュウだけじゃなく
丁度居たスタッフ達にもおめでとうとお疲れ様を言ってもらって。
また浮き足立っちゃってアレキサンドライトを見せて回ったの。
アオイが一番口あんぐり開けて驚愕してた。
時計の細工にたまに宝石使ったりもしてるから、詳しいんだろうな。
えへへ。
この指輪自体が自慢でもあるんだけどね、ローが私にこれを贈ってくれたっていう事が自慢。
「言ったわね?土壇場で拒否とかナシよ?」
「ある程度、マトモな範囲で頼む…」
二人の結婚式なのに、ローが作るところに参加してくれないのもちょっぴり不満ではあったんだけど
よくよく考えてみたらローにこんな結婚式挙げたいとかの願望なさそうだ。
決める時に居て、嫌だとか言われるよりオイシイのか…?
もしかして。
「そこはウイ次第でしょう?…どれくらいで戻れるのかしら」
「ひと月。それ以内には確実に戻る」
あ、意外と早かった。
グランドラインに入ってからここまで来るのにかかった時間を考えたら、どんなに急いでももっとかかると思ってたから。
…でもそういえぱベポは定期船に乗って新世界から北の海に来ちゃったんだもんね。
間違えて、だけど。
カームベルト越えられれば意外とここから遠くはないのか…?
「ならば最短で準備を進めるわよ?幸い船の納品の目処もついた事だし」
「それで構わねぇ」
1ヶ月。
1ヶ月後に結婚式。
ローと私の。
ブラーヴェの皆や、これから招待状出すけど
これまで出会った大切な人達に祝われて
結婚するって、これからの人生をローと生きていくって誓う。
1ヶ月かぁ…
「まぁ、それはそうと今夜は飲みましょう?前祝いって事で。久しぶりじゃない」
「おまえがこの前居なかっただけだろ」
そうだったかしらって笑うソニアがポーラータングで今夜飲む話を進めてくれて
打ち合わせの打ち合わせはお開きになった。
今夜は飲もう!
ローが行ってしまうのは寂しいけど、楽しみが待ってる。
日も暮れて来た頃、ジャンバールとシャチと準備したバーベキュー用のお肉だとか色々を並べてたら
ブラーヴェの皆が船に顔を出した。
お酒とかお洒落なデリ沢山持ってきてくれてね、それも並べて皆で乾杯したの。
ソニア以外は前にローをパンクハザードに送って行く前に顔を会わせてたから、久しぶりって色んな所で行き交うそんな声がなんだか心をほっこりさせる。
そんな中、最近謎行動が目立つベポが美味しそうに焼けたお肉を持って話し掛けて来た。
「ねぇウイ…俺この前凄い意味不明な夢見たんだけどさ」
「どんな?」
分厚いステーキをベポの紙皿から奪い取りながら相変わらず謎なその話の続きを促した。
「なんかさ、キャプテン海賊やめてて。開業してるの、病院」
「夢にしては今のとこマトモだな」
お肉食べつつの炭酸最高。
甘い脂身のこってりをスッキリさせてくれるシードル最高。
こってりスッキリの無限ループにハマれる。
「なんかミーティングやっててさ、そこに知らない男居て。そいつ犬のお面被ってんのさ」
「顔見えなくても知らない人決定なの?それは」
夢に常識は求めちゃいけないんだろうけど
仕事のミーティングで犬の被り物は結構シュールよね。うん。
「絶対知らない人。そんでなんかそいつの誕生日祝う流れになって隠し持ってたクラッカー鳴らそうとしたらキャプテンがさ、『危ねぇ!それ鳴らすんじゃねぇ!』って突然言い出して」
「ベポも夢の中ではそれ受け入れて祝おうとしてたんだ」
なんかそうだったって言いながらお肉を噛みちぎるベポの顔は無心っていうか
自分でも謎だらけって感じで。
意味不明だけどその夢の続きが地味に気になった。
「普通のクラッカーだったと思うんだけど、でも皆キャプテンがそう言うならやめようかってクラッカーしまって」
「そこは凄いリアリティーだね。皆ローが危ないって言えばスイカでも爆弾並に警戒しそうだもんね」
クラッカーにどんな危険が潜んでるって言うんだ…。
大体皆得意じゃん、クラッカー。
この前も皆パンパカやってくれたけどさ、恥ずかしかったけど
え?常備してるの?ってちょっと思ったもん。
「そしたらなんか、今年一年の抱負を書き初めする流れになったんだけど。シャチの双子のお兄ちゃんがシャチの書き初め奪って逃げて」
「え?!シャチって双子だったの!?」
それは初耳だ。
えー…似てるのかな?
似てない事はないんだろうな。
シャチの家族の話って、ペンギンがたまにお母さんのご飯が不味いって言うアレくらいしか今まで聞いたことなかった。
「え?違うんじゃない?俺聞いたことないけど。でも取り敢えずそいつを追ってシャチいなくなっちゃって」
「あぁ、そうだね。夢の話だったねこれ」
ビックリした。
中途半端にそれっぽいから自分で夢か本当のことか迷子になってた。
それでそれで?
「結局ミーティング終わったんだけど、外洪水で。皆で『患者さん来なくない?』ってぐだけてて」
「洪水なのに患者さんには来いって?…スパルタな病院だなオイ」
あ、本当だーってケラケラ笑ってるベポは今その矛盾に気付いたらしく。
思い出し笑いしながらシードルの瓶を傾けるそんな様子が中々不気味だった。
「そしたらアオイがなぜかオモチャのトラック?で『ピピー!ピピー!バックします』って真顔で言いながら病院の前に現れて」
「ほ、ほぉ…」
なぜアオイ?
アオイにそんな面白い事真顔で出来る技量はないと思うけど、でも夢だ。
そうだ。
これ夢なんだった。
「そのまま受付入ってきて、『財布落としたんスよね。紺の皮の長財布』って言われた所で目が覚めたんだけど、これ何か意味あんのかな」
「こっちが聞きたいよ」
謎だ。
そんな夢見たのも謎だし
それの解釈を今求められてるこも謎だ。
「…最近ウイ俺に冷たいよね」
「そんなつもり全然ないけど。でも最近ベポが色々謎だとは心から思ってる」
じと目で睨んでくるベポは、最近の自分の行動の可笑しさに気付いてないんだろうか。
「謎?別に普通じゃん」
「これが普通なら色々心配だよ」
急にリボン付けて鍛練しだしたり、二足歩行と四足歩行がどうとか言い出したり。
女はヒステリックで陰湿だとか語り出したり、そんなに毛足長くない癖にコテとか使い出して火傷してみたり。
謎だよ。
最近のベポ本当に謎だよ。
「心配ってどのくらい?夜寝る前考えちゃうくらい?」
「だからどうした本当に」
ベポに何があったんだろう。
夜寝る前とかは考えなかったかもだけど、そろそろ結構本気で心配だ。
本当にどうした。
「どうせキャプテンといちゃこらさっさしてるから俺の事なんてどうでも良いんでしょ。ウイの色ボケババァ!」
「は!?」
急に暴言吐かれたと思ったら、ベポは半分以上残ってたシードルを一気に飲み干した。
「なんか…あったの?」
「…ウイだって結局人が良いんでしょ?アンは同性だし、ウイが大好きな美人で巨乳だもんね!!」
まだ飲み足りないのか、私のシードルまで奪い取ってそれを煽ったベポは
それが空になるとふん!って、膨れっ面で思い切り顔を逸らした。
「あっはっはっは!!なんだー!!そういうこと?やだベポ焼きもち?焼きもち妬いてたの??ローとアンさんに!?」
「ウルサイ調子乗んな貧乳」
うっ…!!!
可愛いなぁって思ってバシバシ叩きまくってたら、ベポが只でさえない胸を更に抉りに来た。
でもそうだ。
ベポの毒舌聞くのも、こんな風にじゃれ合うのもなんか久しぶりな気がする。
「ごめんね。何て言うんだろ…ベポはいつでも特別だよ?特別だから、気を遣わなすぎた?うーん…何か違うな?これ何て言えば良いの?」
「知らないよそんなの」
ブツブツ文句言ってるベポは、事の発端はチョッパーだって言い出して
あんなあざとすぎるのわざとらしすぎて全然可愛くないとか、あれ本気でやってるなら本気でキチガイとか…
そうだ。
チョッパーと仲良くなってからだ、ベポがこうなったの。
…本当に可愛いし、嬉しいなぁ。
「今度久しぶりに一緒に寝よっか」
「は?やだよウイ寝相悪いし」
即答で断られたけど、無理矢理でもベポのお腹で寝させて貰おう。
ごめんねベポ、大好きだよ。