18-7
ブラーヴェの皆とも、長い付き合いだ。
皆は出会った頃から全然変わらない。
物作りをする人特有って言うのかな。
自分の拘りとそれを手にとってくれる人への熱い想いを持ってる、素敵な人達。
カレンとアオイは一方的にディゼルに腹立ててる事はあるけど、それも痴話喧嘩みたいなものだし
調子に乗りすぎた私達をソニアが叱る事もあるけど
私達本格的な喧嘩ってきっとしたことがない。
性別も年齢も出身もバラバラな私達はきっと、バランスが良かった。
向いてる方向が同じだった。
立ち上げの時や結婚式を企画する時、運動会してるみたいで楽しかった。
仲間と一緒に大きな壁を越えるっていう楽しさとか高揚感を、ブラーヴェに教えて貰った。
そこを一緒に乗り越えた経験があるからこそ
ただぐだぐだしてる時だって、そこには言葉に出来ない絆みたいなものが確かに存在してた。
ローと一緒に居ることを決めた私だけど
どうしようか悩んでしまったのは、ブラーヴェが掛替えのない場所だったから。
…楽しかったなぁ。
ベガス聖とも、今こんな関係でいれる事がよくよく考えてみたら奇跡みたい。
天竜人なんて、雲の上の存在だった。
その存在を知ってはいたけど、一生関わる事のないヤバい人達ってくらいにしか思ってなかった。
それが今や、好きそうな物を見つけては送ってみたり
遊びに行けば話も食べさせてくれる物も尽きないし
本当に沢山助けて貰った。
私が今まで出来た経験って、ベガス聖がいないと本当に成り立たない。
天竜人御用達職人っていう肩書きも
天竜人の特権で出来たあれこれも
ベガス聖っていう人間から溢れ出る優しさや思いやりも。
友達だけど
友達って勝手に私は思ってたけど
普段はおちゃめ過ぎるキャラクターでうやむやになりがちなベガス聖は
パパと同じくらい、いつも父親みたいに私の面倒を見て守ってくれてた。
いつか言ってくれた"自分のための我儘を言いに来るのを楽しみにしてる"ってあれを
実現出来る日が来た。
きっと来てくれる。
引き受けてくれる。
…バージンロードはね、ベガス聖と歩きたいんだ。
ロイも、来てくれるかな。
クザンさんと一緒にいるみたいだけど。
ロイは最初…嫌いだったなぁ。
無視して八つ当たりして受け入れたくない現実に反抗して。
ロイが好きでそうしてた訳じゃなかったのに
ロイだって組織からの命令でそうしてただけなのに
今思えばなんて最低な事をしまくってたんだ、私は。
あれ?
私がアンさんに冷たくあしらわれても纏わり付こうとしてたのって、もしかしたらロイのせいかもしれない。
嫌いって思ってたけど、嫌な人って思った事はなかった。
どんな事しても絶対へこたれなくて
私なんて放っておけば良いのにって思うのにあれこれしてくれて、気遣ってくれて。
鬱陶しいって思いながら悪い気はしなかったからな、あの時。
そっか。
私もアンさんにロイみたいに思って欲しかったから纏わり付き続けたんだ、きっと。
なんか面白い。
こんな後になってそういうのに気付くなんて。
でもベガス聖のとこに護送される時だけじゃなく
それからもロイとは何度も関わりがあった。
全部助けられるか迷惑かけるかしかしてないんだけどね。
本当申し訳ない。
ロイがいたからここまでこれた。
今の私がある。
でもロイもきっと、私がいなければ違う今を歩いてた。
あれは本当にこれで良かったのか、未だに考えてしまう。
私のせいで海軍を辞めさせてしまったようなものだから。
でもクザンさんについて行ったってことは、それも私の思い上がりかな?
これで良かったって言ってくれたけど、あっそうって無関心でなんかいられない。
…来て、くれるかなぁ。
シュウの家族も、遠いけど来てくれるかな。
私の為じゃなくても、シュウに会いに来てくれるんじゃないかなって
そんな打算みたいなのが働いてたりもちょっとする。
リュウやユウも大分大きくなったんだろうな。
元気にしてるかな。
おば様のご飯、また食べたいな。
…何も言わなかったのに、おば様はいつでも帰ってきて良いのよって言ってくれた。
社交辞令みたいな本気じゃないものかもしれなかったけど、あの時私は本当に嬉しかったんだ。
夢見てた暖かい家族っていう輪にお邪魔させて貰って、将来こんな家庭を築けたらなって憧れた。
助けてやったんだぞって恩を着せる訳じゃないんだけど
シュウとリュウとユウを助けられたのは、自分の中の何かが救われた気がした。
つらい思いをする子供を救えたっていうことに、きっと私浸ってた。
懐いてくれるあの子達が可愛くて仕方なかった。
シュウはもう逆に私が面倒見られちゃうくらい頼りがいのある子に成長したし
私が抜けて何の問題もないのはシュウがシードルの製造を管理してくれてるから。
採用や指導もしっかりやってくれてるし、シュウもブラーヴェに欠かせないメンバーの1人だ。
結婚式にも来て欲しいけど、立派に成長したシュウの姿を
ご家族に見せたいな。
あゆみちゃんにも招待状出しちゃった。
なんだか調子のって送っちゃったけど、よくよく考えれば1日遊んで飲んだだけなんだよね。
でもあゆみちゃんお酒も結構飲むし、なんだか話しやすいし
凄く楽しかった。
今もペンギンを好きでいるなら、どっちにもお節介かもしれないけど二人が話せたら良いなって少し思っちゃってる部分も、あるかも。
ただまた会いたいなって思う気持ちも嘘じゃないし、私達結婚する事になったよって伝えたい。
…ちょっとアレな女子トークも、あゆみちゃんとしたら楽しそう。
うん、楽しみ。
凄い勉強になりそう。
ぶっちゃけてくれそうだから。
マルコはあんまりパパの故郷を離れられないみたいだけど、来れるかな。
島で唯一のお医者さんみたいだから、難しいかもしれない。
でも招待状が届いて、ローと私が結婚する事になった事を知れば
ふって笑いそう。
マルコの中では、未だに私はエースと付き合ってる事になってると思うから。
エースを不幸の言い訳にしてやるなって、言われた言葉の意味があの時はわからなかった。
不幸でもなければ言い訳なんてしてないって。
思い込みって、怖いね。
エースを忘れたくない気持ちは嘘じゃなくても
私はローと、自分と向き合いたくなくてエースにすがってた。
本当に不幸ではなかったよ。
でもきっと、今の方が幸せ。
エースにも会えた。
こうなる事を待ってたって、ローを選んだ私を批判せずに応援してくれた。
好きな人に好きって言えて、言って貰えて
手を伸ばせば触れられて抱き締められる事は
何にも代えがたい幸せだ。
否定する訳ではなくても、耳に優しい表面的な言葉だけをくれる人じゃないから。
マルコはいつだってそうだ。
来てくれたら、会えたら
エースに会えたことも伝えたいな。
結婚式に来て貰う事は叶わなくても、エースやパパへの気持ちも込めたい。
パパに結婚の挨拶、して貰いたかったな。
ローは何て言っただろう。
それにパパはなんて返したかな。
おまえに娘はやらん!!
とか怒っちゃったり…しなそうだ。
ただ喜んでくれそう。
そして凄い飲ませて自分も飲んで、ローに止められるんだろうな。
よくナースさん達に窘められてたから。
パパ、今はバラバラになってしまって会えずにいるままだけど
私家族が出来るんだよ。
素敵な旦那さんが出来るんだよ。
空から見てて、くれると良いな。
エース、ありがとう。
天国で会いたかった人に会えたかな。
どんな話をしたのかな。
もうすぐローと結婚するよ。
素敵なプロポーズをして貰って、大層高価らしい婚約指輪も貰ったの。
私、エースに出会えて良かった。
好きになれて、好きになって貰えて
良かった。
エースがいなければ、誰が何て言おうと今の私はいないね。
人攫いに拐われて、あの時助けて貰えなかったら私今頃どうしてるんだろう。
ハートの海賊団の皆にも思ったけど
シュウとランチしてる時に偶然見かけた豪快な食い逃げ犯を好きになるとは、本当に全然思わなかったよ?
でも何かを感じたから、あの時お代を払ってしまったんだろうね。
あの時の自分のファインプレイを褒めたいよ。
…ダメだ。
今になってもエースへの気持ちって、上手く言葉に出来ない。
でも、エースだけじゃなく皆への気持ちだって
どんな綺麗で素敵な言葉を並べても実物よりも見劣りする。
だから込めるの。
このお酒に。
楽しかったこと
嬉しかったこと
辛かったこと
悲しかったこと
苦しかったこと
笑った時の気持ち
泣いた時の気持ち。
皆への感謝。
皆と過ごした時間。
皆と乗り越えて来た事。
それは甘くて、ほんの少し甘酸っぱくて
でもキリリとアルコールで締まる。
思い返せばどれも良い思い出なそれは、炭酸の爽快さが表してくれる。
それを飲んだ時、それぞれの果物が主張する感じじゃなくて
何が入ってるか分からないくらい調和してるけど、でも美味しいって感じられるようなそんなお酒。
皆とのこれまでを思い返しながら
いくつか組み合わせの候補を作った。
あとはそれを酵母でアルコール発酵させるだけ。
発酵させる前と後じゃ全然違うから、これはもう賭けだ。
お願い。
私の感謝の気持ちを、上手く表現出来ずにいるこの気持ちを
上手いことまとめて下さい。
そう祈りながら、瓶に封をした。