18-16





「ねぇ…ねんむい…。ちょっと寝て良い?」
「おまえが良識の範囲内で起きれてその後マトモに行動出来んなら止めねぇ」


気だるい心地の中、愛する人と汗ばんだ肌を合わせながら戯れられる幸せ。
頭を撫でてくれつつも、私の事を熟知してるローはちゃんとそこを戒めてくれたりする。










寝る以外でも気持ちの切り替え方ってあるんだなって
そんな事を思いながらローの背中に手を回した。


「寝ない。…ありがと、落ち着いた」
「──おまえに任せる。俺がいた方が良いなら俺も行く。…聞かれたくねぇなら、行ってこい」


髪を撫でてくれる手が心地良くて、いつまでもこの夢心地に浸ってたくなる。
でも少しずつ、私たちの会話は現実に戻りつつあった。










どうしよう。














父様が語るあの時の事を
もし私が何かしでかしていたならば、私にも父様をそうさせる原因があったのならば





ローにそれを聞かれたくない。
知られたくない。









でも…












「一緒に来て、くれる?」
「当たり前だろ」









あれだけの醜態を曝して
相変わらず私は面倒臭くて


でもね、ローは変わらないの。
嫌われても、引かれても、呆れられてもおかしくないこんな私なのに
ローは変わらず好きでいてくれるの。


その積み重ねは、私の中に安心を積もらせていった。


どんな私でも、ローは見捨てたりしないって。
そんな私でも求めて、愛してくれるって。






ならば一緒に来て貰いたい。

知りたいけど、怖くもあるそれを聞く時に
傍にいて貰えたら心強い。


「行き…ますか」
「あぁ」


もう一度だけって
ローを強く抱き締めた。


これは自分を奮い立たせる為。
どんな現実が待っていようと、私にはこの人がいるって
そう自分に思わせる為。






こんな場所であんな事しちゃったっていう後ろめたい気持ちのせいで
倉庫を出る時誰にも目撃されたくなくてやたらと挙動不審だった。

ただあのまま話だけして倉庫から出て来たってパターンも有り得ただろうに
バカな私の頭にはそんな事少しも浮かばなかったんだ。


無事ブラーヴェの人たちと誰にも会わずに横付けしてあるポーラータングに戻ってこれて、ローの部屋についてるシャワーを浴びて
更に気持ちはスッキリした。

ローが浴びてるだろうシャワーの音を聞きながら、これから先に待っているものを考えた。




それはやっぱり怖くて、でもそわそわする。


私やっぱり聞きたかったんだって
なんでだろう、何が悪かったんだろうって何度も考えたそれの答えが知りたかったんだって


ずっと心の中に居座り続けたそれの答え合わせの機会をくれたローに
改めて感謝した。


シャワー室から出てきたローと

リビングに寄って、さっき居合わせた皆にごめんねって謝って


ベポに絞め殺される勢いで抱き締められて
アンさんは何も言わずに頭ぽんぽんしてくれて
シャチが心配そうな顔で大丈夫かって聞いてくれて。


父様の所に行ってくるって伝えた。
全部聞いてくるって。


それに皆、驚いてた。


そりゃそうだ。
謝ってる父様をあれだけはね除けて、なじって…
さっきの私は話を聞く気なんて毛頭ないって態度丸出しだったから。




何を今更聞くんだってプンスカ怒ってくれるベポの気持ちが嬉しかった。
自分の事みたいに怒ってくれてるベポが心強い。


シャチが心配してくれるのも、嬉しかった。
私が傷付くんじゃないかって心配しながら、でも私が決めた事を否定もしない
それはシャチらしい優しさ。


複雑そうな顔を浮かべてたアンさんと目が合うと
じっと私を見つめた後、ただ頷いてくれた。
行ってきなさいって、そう背中を押すように。
きっとアンさんは私のこの入り組み過ぎた複雑な心境を、一番解ってくれてると思うから。





大丈夫。
父様に何を言われても、私一人じゃない。
こんなにも素敵な人達がついててくれる。


ローもいる。
ベポもシャチもアンさんも…





あれ?






「ペンギンは?」


ここに居ないもう一人の立会人に今更気付いた。





「あぁ、ペンギン。いたね、そんな人も」


あから様に嫌な顔をしたベポがどうしちゃったの発言をぶちかまして、喧嘩でもしたのかなって
私のせいかなって思ってたら


「呼んだ?」


丁度そのタイミングでリビングの扉が開いた。


「ペンギン!あの、さっきはごめんね。…みっともないとこをお見せして…しまいまして」
「お詫びならちゅーで良──
「おい」


ローにどつかれて、冗談じゃんって肩をすくめながら部屋の中に入ってきたペンギンがソファーに雪崩れ込むように倒れた。


「…疲れた。慣れない事するもんじゃねぇな」
「何か…あったの?」


私の声に顔をあげたペンギンは、いつも気だるそうだけど今は更にだるそう。

どうしたんだろ。


「オトコノコには色々人には言えない事情があるんです」
「ブラーヴェの誰かに手とか…出さないでよ?」


ベポがさっきからやたらと敵意剥き出しだし、疲れたとかオトコノコの事情とか言われちゃうと
そんな容疑が真っ先に浮かぶ。


だってペンギンだし。


「ヤキモチ?大丈夫よ、俺はウイちゃんが世界で一番大好きだから」
「アリガトウ。…遊びなら、ブラーヴェの子はやめてね」


本気なら、ペンギン以上に大切な子を任せられる人って絶対いない。
それなら大歓迎。

でもペンギンがもし本気の相手とそういう事して来たなら、例え本人の前じゃなかろうとこんな面倒臭そうでだるそうな態度取らないと思うのよ。


皆素直で良い子達だし、本人にその気がなくてもペンギンは人を惹き付ける人だから。

本気なら構わない。
でも違うなら、傷付けたりしないで欲しい。


「ハイハイ。肝に銘じときます。…で?どしたの、またまた大集合しちゃって」
「私…父様と話を、してこようと思って」


皆の驚いたリアクションを見た直後だったせいか、散々あんな態度取っておいてこんな事を言い出すのが憚られた。


でもペンギンは全然驚いてなんてなくて。


じっと見つめられて、目があって
なんでこんな反応なんだろうって検討がつかなくて
固まったまま目を逸らせずにいた。


「頑張って」
「う、うん!」


そう言うなり首をコキコキ鳴らしながら、ペンギンは喉乾いたってリビングを出ていってしまった。






ペンギンって、なに考えてるかが本当に見えない。







destruct at reality.