18-21




「おまえのはどうした。被ったらだせぇから教えろ」
「それはそれで良いじゃん。私最後に読むお手紙直さなきゃだから忙しいー」


凄い不服そうな顔のローが、デスクで何かを書いては消し、書いては消しを繰り返してる。


文句言いつつも被らないようにって気にしたり、わざわざ書き出してまで考えてくれたり…

何だかんだ言う癖に本当に真面目。


また何かを書いて、ボツなのか消して。
そんなローの背中は微笑ましくて和む。







あれから船に戻って、皆に報告した。

ベポは父様も結婚式に出る事を信じられないとでも言いたげに目を丸くして聞いてたけど
でも全部話したら、不満そうだけど良かったねって言ってくれた。

シャチは良い式になると良いなって言ってくれて、アンさんとペンギンは居なかったからまた後で話す事にしてローの部屋に戻ってきた。


そしたらすんごい顔で睨まれながらああ言われた訳ですよ。


「本当にありがとね。ちゃんと話して来た。…これも、受け取って来ちゃった」
「…感謝してんならおまえの見せろ。最後のも」


ローにいびつになっちゃった写真立てを見せると、軽くため息を付いた後またそれを言われた。

これには式で撮った写真を飾ろう。
宣材用のやつじゃなく、来てくれた全員が写ってるやつを。


「やだよ。…あ、ローが嫌がりそうなのもう一個あった」
「…なんだ今度は」


今度のは盛大なため息。
でも教えたらもっと凄いため息聞けそう。


「式でね、宣材写真撮るから!私達の結婚式がブラーヴェのパンフレットになります!!」
「…俺が写ったらまずいだろ流石に」


嫌そうな顔に拍車がかかって、その後逃げ道を見つけたつもりでいるらしいローがそんな事言い出す。


残念でした。
そこはディゼルが配慮するって言ってたよ。


「ローの顔写さないようにするって!折角格好良いのに勿体ないけど、賞金首が堂々とパンフレットに顔晒せないもんね」


なんか、ローが黙っちゃった。


写真を諦めさせる逃げ道を断たれて、悔しそうな顔でもしてるかと思って覗き込めば
それは凄い勢いで逸らされる。


ん?
なんだ?


「どしたのロー」
「…何でもねぇよ」









これは…照れて…るのか?
え、そんなとこあった?



「なんで照れてるの」
「別に照れてねぇ」


いや、嘘。
絶対照れてる。


え、本当にどこに?


ローの顔写さないようにする…?
格好良いから勿体な…








ん?








え、まさか…


「私、ローの性格っていうか中身が凄い大好きだけど、ローの顔も格好良いと思ってるよ?」
「照れてねぇっつってんだろ」







うわ…まじか…。






絶対こっち向かない上に論破名人のローがただ同じこと繰り返すだけってどんだけよ。


え?
だって…


「ロー別に私に言われなくてもその辺歩ってるだけで言われるでしょ。それに私言ったことなかったっけ?」
「…初めて聞いた」


そうだったんだ。
私口にしたつもりになって言ってない事もあるのか。

でも見ず知らずの人が言うくらい格好良いんだよ?
っていうか言われなくてもこれだけ整った顔してたら自分でわかるでしょ。


「ロー鏡見たことないの?お持ちします?」
「おまえ忙しいんだろ。さっさと直せよ手紙」








なんか、楽しくなって来ちゃった。
なんでこんなに綺麗な顔してる癖にそこに免疫ないんだろこの人。









ん…?











「あ、もしかして私だから?私がローを格好良いと思ってるのが嬉しくて照れちゃったの??私ずっと思ってたよ!!なんなら初めて会っ──
「暇なんだろ、要は。見せろおまえの」


そんなドスの利いた声出したって、全然怖くない。
寧ろなんか可愛い。



照れるって事は、遮るって事はそれは正解で
私がそう思ってる事に照れてるだなんて嬉しすぎて
にやけちゃう顔が戻らない。


それはダメ、教えたげないって言ったら、じゃあ黙ってろってまた睨まれて
当て付けみたいなため息を吐かれた。









なんなんだろう、この人本当に。


頼りになって、尊敬出来て、こんな面倒臭い私を好きでいてくれて
こんなに格好良くて可愛い。

っていうか私今まで本当に言ったことなかったかな?







カリカリって、また書き出された言葉は
直ぐに線で消されてしまった。










そんな背中も格好良いよ。
顔も格好良い。
中身も格好良い。

全部格好良い。
大好き。




これからはもっと、色んな事を伝えようって思った。


思ってるだけじゃ伝わらないね。







結婚式って、一般的には新郎の方が来てくれた招待客に御礼も兼ねて挨拶する事が多いんだけど
ほら、ローだから。

多弁な人でもないし、準備期間中ずっと不在だったし
私が呼んじゃった人が殆どだから私がする事にしたの。

もう原稿は出来てたんだけど、少し直そうと思う。


父様が出席する事になって
私の中でも色々変わって。


来てくれるこれまで私達と関わって来てくれた人達に、伝えたい言葉が増えた。


あんまり長過ぎたら聞いてる方も飽きちゃうだろうから、削って、言い換えて、足して…って。
何度訂正しても、こっちの方が良いかもって中々纏まらなくて


でもね、そんな時間は全然苦じゃなかった。















「…おい。これ、どいつに渡せば良いんだ」
「え?私」


何とか纏まった原稿を読み返してたら、ローの方も終わったみたい。

紙に書いてたみたいだから、それ預かるよって手を出したら物凄い嫌そうな顔をされた。


「どうせ本番になれば見るんだから良いじゃん」
「…勝手にしろ」


ポイって投げて寄越された、小さく折られた紙。

それをキャッチして中を確認したら
それはあんなに時間をかけてた割に全然シンプルで、でもローらしくて。


別にそんな恥ずかしい内容じゃないのに、こっちに背を向けて別に散らかってもいないデスクの上を片付け出すローを見てたら
そんなに気持ち込めて選んでくれたんだって、言葉以上の愛しさを感じて堪らなくなった。


内側からくすぐり倒されてるんじゃないかってくらい、これ以上ないくらいにやけちゃってこそばゆい。


「ありがとね」
「…一生に一度、だしな。他の段取りはどうなってんだ」


おっといけない。
これを頼まなきゃってことばっかりでローに式の流れを話すの忘れてた。


来てくれる招待客と式から披露宴の流れをおおまかに説明して
私が最後に読もうと思ってる出来立てホヤホヤのお手紙をローにも読んで貰った。


私が読むけど、二人からってことになるわけだし
付け加えたいとことかこれはやめろってとこは訂正しようと思ったのが1つ。


あとはさっき直した部分を見て欲しかった。
それはローのおかげで言えた言葉だから。










良かった。
また結婚式が、楽しみで仕方ないものに戻った。


ううん、今朝以上に楽しみになった。








その日の夜は、最終打ち合わせと決起会も兼ねてブラーヴェの皆と飲む事になった。


既に来てくれてた店舗従業員の皆に、結婚の報告と御礼と、これまでみたいに働けなくなる事を直接伝えて回って
色んな事を話した。

辞める訳じゃないんだけど、ほぼそうなってしまうようなものだから。
泣いてくれる人とか、何も出来てなんかないのにありがとうございましたって言ってくれる人とか。

そういうの聞いてたらね、ブラーヴェで働いて来たこれまでの日々が変わっちゃうんだって
今更実感が沸いて来て、少し寂しくなった。


楽しかった。
本当に充実してた。









「アオイ!…大丈夫?潰れかけ?」
「ンな事ねぇよ!俺はシラフだ!!」


嘘付けよ…。


飲まされ過ぎて既にフラフラのアオイの周りから人がはけたのを見計らって声をかけたら
思った以上に重症だった。


「ハイハイ。…ねぇ、アオイも本当に…ありがとね」
「なんだいきなり。俺は確かに感謝されてしかるべき人物だけどな!今更気付いたか!!」


うわー…

いつも通りって言えばいつも通りなんだけど
酔ってる分更にアオイっぽい。


アオイは従業員の人達にも可愛がられてるっていうか愛されてる。
だからこんなに飲まされる。

もう出会って6年も経つのに、今もあの頃と全然変わらない。


「アオイがあの時ギルドで声かけてくれなかったら…ブラーヴェで働いた今までの時間もなかったと思うと…本当に感謝だよ」
「だろ!?俺のおかげだよな!ブラーヴェここまでデカくなったのもウイが楽しいのも!!俺のおかげ!!俺最高!!」










…ダメだこりゃ。












若干回ってない呂律で、時計の部品の話とか装飾の話とかを熱く語り始めたアオイに苦笑いしつつも
こういうのももう頻繁にはなくなるんだろうなって思うとなんだか切ない。


私をブラーヴェに誘ってくれてありがとう。
いつも真っ直ぐ過ぎるアオイは、皆の元気の源でマスコットで
本当に毎日楽しかったよ。


分野が違いすぎるせいなのか、酔っ払ってるせいなのか
もうほとんど何言ってるのかわかんなかったんだけどね


一生懸命話してくれるアオイに心の中でお礼を言った。




だってどうせ口に出してもこんな調子じゃ覚えてないだろうし。




本当に、しょうがないな。








「お!!花嫁!飲んでる?ホラホラ飲みなさいよ遠慮なく!!」
「うん。これ、私が仕込んどいたシードルね。ありがと」


酔っ払い第二号。
カレンさん参上。


アオイがぶつぶつ新商品について?だと思うんだけど
語り出したところでまた従業員の人達が飲ませにやって来たから私はさっと退散した。


愛されてるな!
よ!人気者!!


きっとアオイ、明日はゲロッキー決定。


「さーみーしーいー!!ウイが居なくなっちゃったら私さーみーしーいー!!!」
「私も寂しいよ、本当に。ありがとね、ドレスの事も色々して貰っちゃって」


こっちも結構な泥酔具合。
カレンは女の子だしそこまで飲まされるとかはないと思うんだけど、見てただけでも自分から凄い飲んでた。

酔うとこうなるけど、カレンはアオイと違ってそう毎回泥酔してるイメージはそんなになくて。


こんななってるカレンを見ると、本当に頑張ってくれたんだろうなって
本番はまだだけど準備を終えて、達成感でこんな飲みまくったんだろうなって。

仕事量多すぎるといつも逃げようと必死なカレンが自ら進んで私の為にそういうのしてくれたって事に、特別な想いを感じてぐっと来ちゃうものがある。


本人こんな飲んだくれてるけど。
ぐっでぐでだけど。


「私年の近い女の子の友達、きっとカレンが初めてだったから。お仕事もだけど、他にも色んな事話せて出来て、本当に楽しかった」
「やめてよしんみりするじゃん。…もう二度と会えない訳じゃないんだからさ。いつでも遊びに来なさいよ」


デコピンしながらそう言ってくれたカレンが弾いた指は、ほぼかするくらいの攻撃にしかならなくて

お酒のせいなのか、ちょっとトロンとした目で笑うカレンはいつもの激しさを微塵も感じないくらい
ただの美人さんだった。


「また来るよ!カレンも近くに来た時は遊び来てね」
「おうよ!っていうか男!何人か居たけどコブ付きじゃない中身も外もイケメン来る!?招待客に男の名前あったよね!!!」


穏やか美人、秒で終了。







男の人で独身…麦わら一味の男性陣とロイとシャンクスさん…?

皆結婚はしてないと思うけど海賊とか放浪してたりだし、恋人とかいるかもしれないし…
どうなんだろ。





destruct at reality.