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「えっと、1つは…本当に凄すぎる人で、大きな存在で…居てくれるだけで安心しちゃうような人!色んな人の荒んだ、傷付いた心が前を向くきっかけを作った、…そんな人です。メインのお花は、白ひげって呼ばれてたくらいだから白が良いな」


改めてパパを思うと、それを人に伝えるとなると
中々難しい。

あんな人をどんな言葉で表せば良いんだろう。
私の中のイメージ以上に、それじゃ全然足りない程沢山の心を
パパは救ったと思う。


「もう1つは…元気って感じ!明るくて、優しくて、でも強い感じな!誰からも好かれる人でした!…苦しい状況でもそれを感じさせない、そう!太陽みたいな人!!でも素直で、飾らなくて…」
「悪かったな、こんなんで」


エースを表す言葉はローと真逆過ぎて
それを意気揚々と話す私に、ローも思うところがあったらしい。


真逆な2人だ。
いつかも思った。

エースが太陽ならローは月だって。








太陽みたいな眩しさはなくても
私の暗闇を、あなたはいつも照らしてくれたよ。

私の、道標だったんだから。











けどさ


「自覚あるなら私とか以外にはやめてよ」
「…さあな」


他の人にはそれが伝わらない事も多々あるのは事実。
悪意はないから、勘違いで周りに嫌な思いはさせたくない。







でも
私、好きなんだよね。
こんなローが。

ローが本当は優しいのをわかる事が。


私だけじゃないけど
その魅力を解ってる人は他にもいるけど

でもこの人は私には、私にだけは周りとは違う顔をする。


凄く優しい。
甘やかされてる。


そんなとんがりすぎた一匹狼みたいな人が
私にだけは違うっていう、特別感。


「…何か、他にないかな。作ってはみるけど。彼ららしさを象徴する…そうだ!お誕生日は?誕生花…あるかな、ここに」
「パパは!あ、…白い花の方は4月6日です!エースは1月1日!…そっか。宝石だけじゃなくお花にもあるんだ」


そんな会話を繰り広げる私達をよそに、美人なお花屋さん
ミノアさんは次々にお花を選んでいく。


初対面の私の我儘を一生懸命叶えようとしてくれるミノアさんの眼差しは、プロって感じで格好良かった。
けど誕生花図鑑を引っ張り出してうんうん唸ってるその顔はなんだか可愛くも見える。


不思議な人だな。







「あら…!凄い、運命的だわ。並んでお墓が建ってるだけあるのね」
「…どうしたんですか?」


図鑑をパラパラ捲ってたミノアさんが、驚いた顔した後
笑った。


「きっと深い繋がりが、縁があるのね。…同じなのよ。2人の誕生花」
「え…」















聞いた?
エース。


やっぱりパパとエースは、特別な繋がりがあったんだよ。


凄いね。


"フクジュソウ"、それは
エースみたいな、太陽みたいな黄色いお花。

強くて偉大なパパにもなぜかしっくり来る
優しさを感じさせるお花。


花言葉は──"幸せを招く"。






これは
物語か何かなのかな。

2人の誕生花が一緒なのも、2人が私に幸せを招いてくれたのも
出来すぎてる。


「これを入れてってなると…エドワードさんの方は難しいな。でもちょっとやってみるわ」
「ありがとうございます」


また相談乗って貰うかもしれないわって、あの素敵な笑顔で笑ったミノアさんの目が真剣なものに戻る。


私達はお花の香りの漂うそのお店で、待たせて貰った。









「見ない顔だ。島の人じゃないね、いらっしゃい」
「こんにちは!お邪魔してます」


私こういうの好きって、ダリアってタグを付けたブリキ缶にさされたお花をローに伝えたら
花っぽいなって適当にも程がある返事が返って来て。


そんな中、お店の奥から男の人が顔を出した。


「おかえりなさい。今ちょっと…取り込み中なのよ。応えがいのあるリクエストを…して貰っちゃって」
「楽しそうなのは見てわかるよ。何か手伝える事はあるかい?」


金髪碧眼の、背の高いがっしりとした体つきの男の人。
物腰の柔らかいこの人はミノアさんの旦那さんなんだろうなって、2人の間に漂う空気でそれがすぐにわかった。


ミノアさんの好きな、輝ける事をこの人はわかってて
それを頑張るミノアさんが大好きなんだろうなって気持ちが伝わってくる。


長年連れ添った夫婦だからこそ醸し出るこんな雰囲気を、私もいつかローと出せるのかな。









いや、無理だなきっと。
こんな穏やかさ、おじいちゃんとかおばあちゃんになっても私たちには出せなそう。


色んな形があると思う。
ミノアさん達も幸せそうだけど、私だって幸せだ。


幸せのカタチってきっと、1つじゃない。





「あの墓に供える花なのか…。君にとって彼らは特別な存在なんだろうね」
「パ…父と、…恋人、でした」


嘘付く理由もないし本当の事なんだけど
嫌な予感がしてチラリとローを覗けば、"恋人"って言葉に
それまで力の抜けてた背中がわかりやすい程強張った。


「それはつらかったね。でもそうか…少し待っていてくれ」


悩むような素振りを見せた後、その人は奥から1つの小さな苗木を持って戻って来た。
片手でそれを持っていた姿に何か違和感みたいなのを感じてたら、昔ちょっとねって
右側の袖の中に腕がない事を話してくれた。


あまり突っ込んで聞かれたくはなさそうな感じがしたから、そこには触れずにいようって思ったんだけど
私が違和感の正体に気付くより前にそれを読み取って答えてくれたスマートさが何より驚きだ。


私ってそんなにわかりやすいのかな。


今更だけど大人げないなって反省しつつ鉢植えに目をやると
それは、枝に褪せた緑?シャビったみたいな珍しい色の小さな葉っぱを沢山つけた小振りな木だった。


なんかおしゃれ。


「妻に影響されてね、挿し木をしてみたんだ。根は十分這ってる…キミの手で植えたら良いんじゃないかと思うんだがどうだろう?あの場所に」
「それあのオリーブ?…うん。それは素敵だわ!」


手渡されたこの木は、オリーブの木みたい。


オリーブ好きだよ。
実を食べるのは。
黒いやつが好き。

木は、初めて見た。

お墓がどんな感じなのかわからないけど、この木植わってたらオシャレそう。
お墓にオシャレはいらないかな?


2人ともそんなの興味ないだろうけど、でも素敵そうだなって思ったの。


「オリーブは平和のシンボルでもあるのよ。この島がこうして平和なのも、エドワードさんのおかげだし!」


"平和"。


前マルコに聞いたけど、パパは手に入れた財宝のほとんどをこの島に放り込んでいたらしい。
貧しさ故に天上金を払えず世界政府に加盟出来なかった無法の島。
パパもそんなここで生まれた、孤児だったって。

昔は荒れてたらしいけど、今は困窮してないせいなのか
そんなの見る影もない。







「それに、彼。好きじゃないんでしょう?こういう場所。それに付き合ってまで一緒にお墓参りするってことは、あなたたちの"平和"には彼らも関わってるのかな、とか…思っちゃったり」


ごめんね喋り過ぎちゃってって、眉を下げて笑うミノアさんの言葉は
ミーハーな私が飛び付くのに十分な、素敵なアイディアだった。


「お花は華があるけど、いつかは枯れてしまうわ。木ならずっと残る。無理にとは言わないんだけど…良ければ貰ってあげて?」


確かに…!
いつかは枯れちゃうもんね切り花!


「良い!それ良い!!寧ろ植えたいです!!ありがとうございます!!」
「…煩ぇ」


興奮し過ぎた私の声は確かに大き過ぎて
ローの文句にハッとする。


ここ船じゃないんだったって
つい普段通り過ぎちゃってたって思ってミノアさん達に謝ると、賑やかで楽しいよって笑われてしまった。


普段は初対面の人の前では、ちゃんとした大人ぶりたいって気を付けてるのに。


このお花屋さん、お店も店員さんも素敵過ぎるんだもん。
被った猫追い剥ぎ屋でも全然いけそうだとか、そんな馬鹿みたいな事をこっそり思ったりしてた。










「うーん…やっぱりフクジュソウは花束の方には入れたくないわ。全体のイメージがぶれてしまう」
「あ、なら別に備えます!…お花自体はありますか?」


なんか凄いぞ。


ミノアさんの手の中で纏められてる花束は、もう見るからにパパって感じ。
見たことないお花ばかりだし、どうしてそれを選んでくれたのかはわからないけど

凄く、パパを連想させて来たの。




そして作業台に乗ってるお花は、エースのだ。
こっちもすぐわかる。


凄いな。
さっきの話だけでこんなにイメージ通りなお花選べちゃうんだ。

…天才か。


「フクジュソウってね、花屋にあるようなものじゃないのよ」
「そう、なんですか…」


ガックリと肩が落ちた。


パパもエースも喜ぶんじゃないかなって思ったの。
家族を何よりも大事に思うパパと、パパを凄く尊敬してたエースなら。

だってお揃いだよ?


「ふふ、大丈夫よ落ち込まないで?ねぇあなた、丘の梺に咲いてる黄色い花、摘んできてくれない?…キミも行ってきたら?退屈でしょう?」


野生してるんだ。
あるんだフクジュソウ!!


ミノアさんの言葉に一気に気持ちが明るくなる。


「あぁ、あれか。構わないよ。行こうか」


ミノアさんの旦那さんは笑顔でそれを引き受けてくれて
何より意外だったのは行ってくるって、ローがお花摘みに腰を上げた事だ。


どうしたロー。
なんで俺が…って絶対行かないだろ普段のローは。

指図すんなってキレるパターンも有り得たくらいなのに。


「あ、すみませんありがとうございます!ローも、ありがとね」
「構わないよ。ゆっくりしててくれ」


相変わらず物腰の柔らかいその人の少し後ろをついて
ふんって、鼻を鳴らしたローはお店を出ていった。


あんまり乗り気には見えないけど。
本当…どうしたんだろ。


「男同士でなにか話でもあるんじゃない?」
「え、あ…あの、ごめんなさい!悪い人じゃ…ないんですけど解りにくくて」


私がローがフクジュソウを摘みに行ったのが意外だって思ってるのは
やっぱりそのまんま顔に出てたらしい。

クスクス笑いながらお花の位置を調整するミノアさんはローの失礼な態度を全然気にしてないみたいだったけど…
この駄々漏れっぷり、本当気を付けよう。







destruct at reality.