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「知り合いにいるのよ。あの人の前の仕事仲間に、あなたの彼になんだか似てるわ。多くは語らないし、口も悪かったな。でもとても仲間想いで、分かりにくいけど…本当は凄く優しい」
「凄い!!ミノアさん凄いなんでわかるの!?…でもローみたいな人他にいるんだ」


私あんな人見たことないよ今まで。


でもそのお知り合いが似てるなら、ミノアさんの旦那さんも腹を立てたり怖がったりはしないよね。
そうじゃなくてもあの人にはなんだか…何にも動じなさそうな雰囲気を感じた。

最初からローの威圧感っていうかそういうのにも全く動じてなかったし。




あらあってた?って
クスクス笑うミノアさんがパパの花束を括り終える。


エースの方を纏めていくのを見ててね、なんだか感動したの。

選んで貰ったお花一本一本もエースっぽいなって思ったけど
組み合わさるのは勿論、配置とか高さでも凄い雰囲気が変わる。

よりエースになった気がした。
これは勉強になる。


ミノアさんはきっと、人の本質を見極めるのが得意なんじゃないかな。
ローの事もあんな短時間で理解してくれてたし。

お花の個性や持ち味を最大限に生かしてる。
花束の中で、それがどんどんベストな位置におさまっていく。


「…綺麗」
「あら嬉しい。…お花って、必需品ではないでしょう?なくても生きていくのに困らない」


花束に緑のアクセントを入れていくミノアさんの目が、愛おしげにお花を見つめてた。


必需品…ではないな確かに。


「まぁ…でも私好きですよ!最近特に好きになったんです!」
「ありがとう。…綺麗だなって思うと、それだけで気持ちが明るくなるじゃない?ただお花があるだけで、ない時とはまるで心持ちが変わっちゃうの」


うんうん頷きながらミノアさんの話を聞いてた。
こんな素敵な花束作れちゃう人をもっと知りたいって、我ながら食い気味になってたと思う。


「花を見て、嫌な気分になる人ってきっといないわ。こういうの好きって言うのが殆どだけど…私のお花で誰かの心を明るく出来たらなって」






物ににそんな想いを託す人達を、込める人を
私はよく知ってる。









花屋さんも、職人だ。


一緒だ。
ブラーヴェの皆と。




あんまりお花屋さんには縁がなかったし、どちらかと言うと切り花より鉢植えのお花の方が好きだったの。
だって切り花綺麗だけど、枯れちゃうじゃん。


それがこの前の結婚式で、皆から貰った素敵な贈り物に感化されて少し印象が変わった。
本当に本当に嬉しかったから、こんなに人を嬉しくさせちゃうお花って存在に凄く興味が沸いたの。


「誰かがお花と一緒に気持ちを伝える時、そのお手伝いが出来たらなって。…でもお墓参りでは初めてだわ」


プロポーズとかお礼とか、そういうのは沢山したんだけどって。
上手く出来るかしらって笑うミノアさんに、これ以上なくお上手ですって鼻息の荒い私が身を乗り出した。






どうかしらって二つの出来上がった花束を改めて見せて貰って
素敵過ぎて言葉が出て来ない。







プロすげぇな。


白って言ったから、真っ白な花束になるのかなって素人の私はそんな安直な予想してたんだけど

パパの花束に白い花は多くない。
見たことない大きな白い花と、あとはちっちゃい白いのがちょこちょこと。
でもそれがメインなのが一目でわかる。

そこに淡いのとか濃い青、葉っぱや枝…


なんか偉大?凄さ?
そういうのを凄く感じるお洒落な花束だった。


「この花束のメインはキングプロテア。凄く大きなお花でしょう?これはね、夏島に咲くとても珍しいお花なんだけど、気に入ってしまって温室で育ててたの」


キング!
名前までパパっぽい!


キングプロテアは、開きかけのひまわりっていうか
球状のひまわりっていうか…

そんな感じの見たことのないとても大きなお花だった。


「あまりもの存在感に“王者の風格”だなんて花言葉がつくくらい。エドワードさんにぴったりでしょう?」


花言葉まで…!!


夏島行った時探せば咲いてるの見れるかな。
でも珍しいのか…。

こんな見たこともないお花しれっと使っちゃうミノアさん格好良過ぎる。


「そして、こっちの濃淡ある青いお花は“ルリタマアザミ”。トゲトゲしてて、ちょっと毒気のある見た目だけど、王者の元ではとてもちっぽけ」


キングプロテアを取り囲むそれは、ちっぽけって言うか…
メインのサイズと見た目がインパクトありすぎて毒気なんて感じる間もなかったよ。


でも確かに改めて見てみると
それは癖の強い存在感のある花だった。







「キングプロテアほどの風格があれば、どんな野蛮なものたちも、包み込まれてしまう気がしない?」













この花束は、パパだ。
ミノアさん本当に凄い。

なんでこんな、心を動かすお花を作ってしまえるんだろう。


もうミノアさんワールドにずるずる引き込まれてしまった私は、他のお花の名前やどんなものか、なんで選んだのかを根掘り葉掘り聞き出した。

ミノアさんは嫌な顔一つしないでそれを丁寧に教えてくれた。


1つ1つ見れば、フクジュソウみたいにその辺に生えてる花なんだって。
でもそれがミノアさんの手で纏められると、柳の枝で大きく纏められてるのも合間って、決して雑草の集まりには見えない。


ふんわり柔らかくて、でも目を惹いて
強さと偉大さを感じる…白ひげ海賊団みたいな花束だ。




「こっちのメインは、この黄色の“グロリオサ”。この見た目から炎のお花って言われてて、“燃える情熱”って花言葉があるわ」


続いてエースの方も説明してくれて、この花束にどんな意味を込めてくれたんだろうってわくわくが止まらない。


まだ花束に纏まる前からね、このお花凄くエースっぽいなって気になってたの。
蝋燭の炎とかじゃなく、エースがメラメラの実を使った時みたいに、燃え上がる揺らめく炎。

これも見たことない。
珍しい見た目だ。


「実は、これはマルコさんから何度もエースさんの話を聞かされてるうちに、ウイさんこの花選ぶかなぁ…なんてちょっと用意してたの」


てへっておどけて舌を出すミノアさんに、なんで会った事もない人にまで行動読まれちゃってるんだろうって少し恥ずかしい気持ちと
今も真剣に花束を作ってくれてたけど、前々から準備してくれてたって優しさに胸が熱くなった。


ミノアさんがこういう人だってマルコは知ってたから、私が気に入ると思うって言ったのかな。


「もう本当に有り難過ぎて嬉しすぎて…ミノアさんブラーヴェで働きません?結婚式のお花でもどこかの店舗限定のお花屋さんでも!絶対皆気に入る!断言出来る!!」
「あんな凄いとこ無理よ」


あははって笑うミノアさんはお世辞でも嬉しいって言ってたけど
お世辞じゃなくて本気です。


本気と書いてマジと読みます。






「あとはね。今お話聞いたイメージで、安直だけど『太陽』だなんて言われればひまわりかなって。ひまわりが入ると、明るくなるよね!」


エースの花束は、全体的にひまわりとグロリオサで黄色!ってイメージのものだった。
ひまわり単体でも太陽みたい。

でも全体のイメージも太陽。


小振りの白い百合と、白い斑の入った深い緑の葉っぱで囲まれたそれは凄く爽やかで
誰からも好かれるって話したとこはそんな形で表してくれたんだろうなって思った。


これがあるだけで周りが明るくなる。
落ち込んだ時も、悲しい時も
そこにパッて明るいものを射し込んでくれるような、そんな花束だ。


「あの…本当に、本当にありがとうございます!思ってた以上…あ、見くびってたとかじゃなく!こんな素敵なの作って貰えるなんて思わなくて…感動しました」
「私も楽しかったわ。ここ数年で一番頑張っちゃった、かも?どんな花束を作る時もあれこれ考えるんだけど、それを聞いて貰えるのは楽しいわね」


ふふって、またあの全てを包み込んでくれるような笑顔で笑うミノアさんに
本気でブラーヴェ来ませんかってそればっかり考えてしまった。


幹部組、絶対皆気に入ると思うんだよな。


お花屋さん。
盲点だった。


「そんなに遠くないんだけど…お喋りに夢中にでもなってるのかしら、あの人達」
「そんなに話す人じゃ…ないんですけど…ねぇ…」


時計と窓の外に目をやるミノアさんに
まさかローミノアさんの旦那さん相手に手とか足とか刀とか出してないよねって


流石にあり得なそうだけどそんな事が一瞬頭を掠めたの。
でもお喋りに夢中よりは可能性は高いと思う。


ここ出た瞬間にあり得ない度数のお酒樽で飲んだりしてなければ。







「…おまえ、何者だ」
「一般人にそんな殺気をぶつけないでくれないかい?流石5億の賞金首は格が違うな」


殺気は向けてねぇ。
でもわかる人間には刺さる、注意の視線。


それをその身に受けても、この男は全く動じた様子もなく両手を挙げておどけて見せる。


「一般人は向けられた殺気になんて気付かねぇよ」
「ハナから誤魔化すつもりはないよ。通用しなそうだ、君には。…軽いジョークのつもりだったんだが」


ディゼルのようなタイプとも違うらしい。
あの人をおちょくって内心楽しむ腹黒野郎。


困ったなと頬を掻くこの男は、そんな仕草をしても尚隙がねぇ。


店に顔を出した瞬間から、その身のこなしは普通の人間とは明らかに違った。
どんな時でも臨戦体勢に入れる脇の締まり、体の軸のおとし方。


こいつはただの花屋じゃねぇ。


「ここに来る前…とある島で軍を率いていた。だがもう何年も前の話さ」
「海軍…か?」


やはりそうか。


俺の問いかけにいや、と首を振るその男は
嫁にパシられた目的の場所に足を進めながら話し始めた。


「閉鎖的な国でね、世界政府の非加盟国だよ。私は人生の2/3以上の時間を…他の島の存在を知らずに過ごした。世界は広いな」

















得体の知れぬ巨大な生き物。
この男はここに来る前、命懸けでそれと戦ってたらしい。


「この通り私は片腕を失ってしまったし、少し…体調も崩してね。今はこうして愛する妻と隠居の身だよ」


だからそう警戒するのはやめてくれないかと
男は笑った。


俺らの事もこの島もどうこうするつもりはないと、そう言いたいらしい。


敵意は感じねぇ。
今の話が本当なら、この男にそうして得られるメリットはないように思える。







これが本当の、話なら。


「今は腕がねぇ以外は至って健康そのものだが?」
「何年も前の話だ。流石にもう治ってる」


俺の懸賞金を知っていたこいつなら、オペオペの実のことも知っている可能性がある。
今の返しはこの男が嘘をついてねぇ証拠にはなり得ない。


どうせここには不死鳥屋がいる。
長く滞在する予定もない。


放っておいても良い気もするが
もし何かを企んでいた場合、この男がぶち壊せる物は相当に及ぶ事は明らかだった。


…ペンギンより遥かに強ぇな、これは。




destruct at reality.