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【ロレイシル・ウイ手配解除!天竜人ベガス聖御用達職人に認定!!】

そこには大きな見出しと共に、ウイの手配書の写真とベガス聖と思われる顔写真がでかでかと掲載されていた。

(天竜人?アイツに手配をかけたのは天竜人だったのか。)

次に大きな文字に目をやると

【ベガス聖の名において、何者であろうともロレイシル・ウイに危害を与えることを禁ずる】

と記されていた。

(アイツは、ウイは無事だ。)

ぐしゃりと新聞を握り締めると、ふと肩の力が抜けた。

(良かった。本当に、良かった。)

「やべぇよな!ウイのやつ!手ー出すなって言ってんだから囲われてる訳じゃねえんだろ!!?」
「天竜人ってことはマリージョアに居たんだよね!!?近くだよ!!ウイにもうすぐ会える!!」

クルー達がこんなに嬉しそうに騒ぐのはいつぶりだろうか。
ウイが無事で、解放されたらしいことは素直に嬉しい。
本当に良かった。


でも、彼女のビブルカードが、薄くなるのに耐えきれず所々穴まで空いてきているのが気にかかる。
彼女の身に、一体何が起きているというのか。

「マリージョアまではあとどれくらいで着く。」
「遠くにだけどレッドラインはもう見えてる!でも、ウイはもう移動してるんじゃないかな。」

少しずつレッドラインから遠ざかるようにカードの進む方向がずれているとベポは言う。

ウイは解放されれば自分たちと合流しようとするはずだ。
ビブルカードのことを考慮したとしても、彼女が自分たちを探して行く場所であれば、
思い当たる所は一ヶ所しかない。

「ウォーターセブンだ。ウォーターセブンに向けて舵を取れ。」
「カードを辿らなくて良いの?」
「ウイも恐らく、そこへ向かうはずだ。」

アイアイキャプテン!と威勢良く返事をして
ベポは部屋から駆け出して行った。

「いやでも、本当に良かったな。アイツどんだけ悪運強いんだよ。」
「これは、少し気になるけどな。」

シャチがサイドテーブルに置かれたウイのビブルカードに目をやる。

本の下敷きになり、かさかさと音を立てるだけで持ち主のいる方角へと動けずにいる
どんどん弱々しくなるその紙。

「何でこんなに弱ってんのかは知らねえが、アイツを取り戻せば俺が何とかする。」

俺は医者だ。
戦いの場では彼女を守れなかった。
でも、医者としてなら守れる。

どんなケガでも、どんな病でも、
絶対に治して見せる。

「起こしといてなんだけど、キャプテンも少し寝ろよ。その顔じゃ逆にキャプテンがウイに小言言われるぜ?」

確かに彼女は自分の隈の状態に敏感だ。
ずいぶん前に、隈がひどすぎて倒れるのではないかと心配されたことを思い出す。

心配をかけたのは彼女なので
この隈の原因はウイということになる筈なのだが
彼女はそんなことお構い無しに自分の不摂生を改めるよう叱りだしそうだ。

たまに母親ぶるというか、戸締まりや後片付けについて、子供をたしなめるように注意する彼女の姿を思い出す。

「ああいうことは、島に着いてからしなさい!」

そういえば、そんな事でも怒られた。





ダメだ。
記憶の中のウイを探してばかりで、
こうなると眠れなくなる。

会えるのだ。彼女に。
記憶の中の朧気な映像ではなく、
ちゃんと自分の言葉に応えて、笑って、怒って、
自分の心をかき乱すのが得意な彼女に。
柔らかくて、自分が好きな、あのシャンプーの香りを纏った彼女に。


早く会いたい。
会って抱き締めて、彼女の存在を感じたい。







でも、俺は一体どんな顔をして会えば良いんだろうか。






あんな無様に負けて、助けられて、
勝てもしない相手にそれでもかかっていこうと見苦しく暴れた。

情けなさすぎて、あわせる顔がない。

助け出そうと意気込んで、結局今回もウイは自分で何とかしてしまった。







俺はウイに気持ちを伝える資格などあるのだろうか。

天竜人のおかげで、ウイは海賊船に乗っていても商売は続けられるだろう。

でも、ドフラミンゴが素直に天竜人の牽制を聞くだろうか。
アイツから、彼女を守り抜けるだけの力が、自分にはあるのだろうか。








だめだ。
とりあえず今は眠ろう。


目を閉じて眠ろうとすると、やっぱり瞼の裏ではウイが笑っていた。

何でも良い。
今はただ、会いたい。

それから5日程船を走らせると、船はウォーターセブンに無事到着した。

ここを目的にしてきた筈なのに
こういう形で訪れる事になるとは思わなかった。

島に着く前は、毎回島の印象をあーだこーだと想像しながら楽しそうにはしゃいでいた彼女は
今ここにはいない。

ウイのビブルカードは、やはりウォーターセブンに向かって動いている。
彼女は、この島に来ている。

船を停泊させ、ウイのビブルカードを手に彼女を探そうと足早に船を降りた。
歩いてなんかいられず、足は自然と早足に、そして走り出す。

クルーたちもそれに続くように、後ろを駆け足で着いてくる。

ビブルカードだけでは距離が掴めない。
宿がありそうな場所に検討をつけ、港を抜けようとした時

「久しぶりだな。トラファルガー・ロー。」

聞き覚えのあるような声に足を止める。
正直今、見たくない顔ベスト3に堂々ランクインするその声の主に、持っていた刀の鞘を抜く。

クルー達も声をかけてきた相手を確認すると
舌打ちと共に武器を構えた。

ここにこの男が居るということは、こいつはずっとウイを護送してここに来たのだろう。

あの時は引き分けたが、あのジジイのいないこの場で
クルー達もいる今、
こいつに負けてやるつもりはない。

こちらが攻撃態勢になっていることは見て分かる筈なのだが、
男は、ロイは剣を鞘から抜く様子がない。


「待ってたんだ。キミ達を。今キミ達と戦うつもりはない。刀をおさめてくれないか?」

確かに敵意は感じない。
ただ、コイツらは自分の部下が倒されても平気で笑っているようなクズだ。
騙し討ちの可能性も捨てきれない。

「ウイを、キミ達に返したい。彼女は今海軍支部にいる。流石にキミ達を海軍支部に入れることはできない。」

その言葉に、鞘にはしまわないものの、刀を構える腕を下ろす。
自分の様子を見て、クルー達も構えを解いた。


「ならウイに伝えろ。俺たちは船で待つ。アイツの船だ。ひと月離れてた所でそれが分からなくなるもんじゃねえ。」
「僕が彼女を連れてくる。」

ロイはそう言って顔を伏せると、くるりと踵を返して歩き出した。

「お前が着いてくる必要はねえだろ。俺らはお前には用はねえ。」



いつかの借りを返したい気持ちはある。
だが今はウイを確実に取り戻すことが優先だ。

そこにこいつが着いてくる必要はない。

ロイは足を止めると、歪めた顔でこちらに振り返った。

「ウイは今、一人で歩ける状態じゃないんだ。」

吐き出すように、そう話すロイの顔は、とても苦しそうで、自分を責めているようにも感じた。

「本当は連れ出せるような情態じゃない。でも、キミは医者なんだろう?腕は確かだと聞いている。」

その言葉に心臓が鷲掴みにされたような息苦しさを感じた。
そんなに、ウイの情態は悪いのか。

「約束する。キミ達に危害は加えないし、彼女は僕一人で連れていく。だから、船で、待っていてくれ。」

ロイはそれだけ言うと再び踵を返して歩き出した。

一人で船へ戻って来れないだけではなく、連れ出せる情態じゃないとはどういうことだろう。

そんなに、彼女は弱っているのだろうか。
何が、彼女をそうさせたのだろうか。

「キャプテン、船で待とうぜ。アイツは多分、約束を守る。」

いつかロイに大痛手を追わされたペンギンが、深刻な表情で俺の肩を叩いた。
剣を交えたペンギンは、彼の人となりを自分よりも理解しているのかもしれない。

そうではなくても、確かにロイの様子は
自分たちを騙し討ちにしようとしているようには見えなかった。

船へ戻り、甲板で港の方に視線を向けながら
誰一人言葉を発しないまま
ウイの姿を探していた。

やがて白いマントをなびかせて、横抱きに彼女を抱える人影を確認すると、左腕からビーズを外し、甲板に放り投げた。

「ルーム、シャンブルズ。」

ビーズは一瞬にしてその姿を消し、そこには先ほど苦しげな表情を浮かべていた背中に正義の文字を背負う男と、
その腕に抱かれた、会いたくてしかたのなかった人物が現れた。

「「「ウイ!!」」」

クルー達がロイに駆け寄る。
ロイに抱えられた彼女に群がるクルー達を割って押し退け、ロイの腕から彼女の体を奪い返した。
元から軽かった彼女の体は、
本当に中身が入っているかと疑いたくなるほど軽く
顔色は日の光を浴びていても分かるほど、青白かった。

頬や手足も、見て分かるほどにガリガリに痩せ細った彼女。

その様子は見ているだけで痛々しい。




「シャンブルズ。」

少しでも早く治療を始めるため、自室へと移動する。
彼女の体をスキャンすると、得られる情報が嘘ではないかと思うほど
彼女の体内の水分量や筋肉や脂肪が極端に少ない。
組織の中に備蓄されている筈のグリコーゲンも枯渇しており、ウイの体は生命を維持する為に残り僅かな脂肪を分解してケトン体を生成していた。

他に目立った所見はなく、彼女が極度の脱水と栄養失調であることが分かる。

どれだけ食べていないのか、
彼女の消化管はその機能の低下を示すように襞がなくなっている。

これは、まずい。
彼女の体は栄養失調のせいで臓器まで弱っており
かろうじて血液を全身に送り出している心臓も、その鼓動はとても弱々しい。

念のため準備しておいた点滴液の濃度を高め、彼女の胸元を消毒して針を指す。
末梢からの輸液では間に合わない。
高濃度でもある程度耐えられる中心静脈に管を繋ぎそれを流し込む。

「助かるのか?」

いつの間にか2階へ上がってきていたらしいクルーとロイ。
治療中は口を挟まない暗黙のルールを守るクルー達に代わって、ロイが苦しそうにそう呟いた。

「必ず、助ける。」

その言葉にロイだけではなくクルー達も肩の力が少し抜けたようだ。

「何日食ってねえんだ。お前らはこいつに飯も出さねえで連れ回してたのか。」

ロイをギロリと睨み付けると、ロイは目を伏せて首を横に振った。

「キミ達と離れてから、ウイは食事どころか水すら手をつけようとしなかった。」

それからロイは、自分たちと離れている間のウイの様子を話しだした。
気休め程度の治療や、
食事以外の彼女の様子
天竜人とのことなどを。

「キャプテン、ウイは本当に、大丈夫なんだよな?」

ペンギンが深刻な表情でそう訪ねる。

「正直容態は最悪だ。あと何日か遅ければ確実にこいつは死んでたぞ。軍にはまともな医者の一人もいねえのか。」

もし自分たちの到着が数日遅かったらと考えるとぞっとする。
腕に点滴を刺した跡はあるものの、胸元にはそれが見当たらない。

こんなに衰弱している人間に、ほぼ水分の点滴を投与して何になると言うのか。




destruct at reality.