「えーっと?守護のパワーが強く、ストレスで疲れた体を癒してくれる。マイナスの力を取り除き、プラスの力を授けてくれる、か。」
そういえばシャチは別れ際、私が気を遣いーだとかそんな事言ってた。
お互い同じような事言ってるね、私たち。
同じような事をお互いに思ってるなら
あんまり周りの事ばっかり考えんなよって、そういうことだろうか。
“パールは美しさを表す石で、女性の美しさ、柔らかさ、エレガントさを引き出してくれます。”
待てよ。
こっちも有り得る。
これ身に付けて少しは胸育つと良いなとか、そんなアレか?
うーん。相手がシャチなだけにどっちも有り得る。
でもラブレターって言うくらいだ。
シャチも真珠に込められた意味を調べた上で選んでる筈。
「私が貧乳で悪かったなって、怒るの分かってやってそうだな。」
いつもそんな事でからかわれてた。
そんな事を言うシャチが想像できすぎて
仕方ないなって、つい笑ってしまう。
なんだか、皆と一緒にいる時みたいな気分だ。
ありがとう、シャチ。
真珠に考えすぎてしまうストレスを取り除いて貰って、ついでに胸も大きくして貰うよ。
「ベポのこれ、なんなの本当に。」
続いてBの刻印に埋め込まれた深い緑色の石。
透明度はないし、何かのパワーストーンだろうか。
なんだか赤い斑点が少し入ってる気もする。
「これかな?ブラッドストーン?」
“事故や災難から身を守ってくれるお守りとして効果的。勇気と生命力を与える。”
これっぽいな。
ベポは、ベポだけは
私が本当は皆と仲間になりたいのに、ローのことを好きなのに
それを言えない理由があることを知っている。
話す勇気を出せって事かな。
“何事にも負けない精神力を養い、困難を乗り越える力を与え、勝利へと導いてくれる。”
うん。決まりだ。
この石はブラッドストーンで、ベポからの私のメッセージはこれだ。
私頑張ってるよ?
乗り越えて、打ち勝って、いつか話してねって言ってたベポに
ちゃんと話しに行かなきゃね。
「さて。ペンギンか。」
なんか、怖い。
Pの刻印に埋め込まれたこの薄いピンクの透明な石。
この優しい輝きを放つ石に、とんでもない意味が込められてそうな気がするのはなんでだろう。
とりあえず色や特徴からこの石が何の石かを探す。
「これかな?……ローズクォーツ?」
“真実の愛、永遠の愛を象徴する愛の石。”
来たコレ。
なんだかもうペンギンがこういう石けろっと選ぶのには驚かないかも。
“自分を許し慈しみ、内面へ向けての愛を育むことができるようになる。ネガティブな人やトラウマを持った人にお勧めの石。”
もう、気にならないって言ってた癖に
聞かないだけで気にしてくれてるじゃん。
“ローズクォーツは女性ホルモンを活性化させ、女性らしい魅力を身に付けさせる。”
お前もか!!
全く。
『Eカップ以下は女と認めねぇ。』
バカにしたような顔で笑うペンギンの顔が鮮明に頭に浮かんだ。
だとすると、あなたの好きな人は女じゃないですよ。
ペンギンの為にあるような石だな。
ありがとう、ペンギン。
さて。
待ちに待ったメインディッシュ。
ローさんは私にどんな石を選んでくれたんだろうか。
Lの刻印に埋め込まれた赤い宝石。
私のイニシャルの所に埋まっているルビーとは違うものなのは分かる。
ガーネットかな?
“別れの際に恋人同士が再開の為のお守りとして贈ったとされている。”
流石でーす。
最後に取っておいても、ローは決して私の期待を裏切らない。
むしろいつも、その上を行く。
なんだか顔が熱い。
心臓の音が煩い。
傍に居なくても、ローのこと考えると胸がきゅうっと締め付けられる。
会いたいよ、ロー。
ちゃんと頑張るけど
少しずつだけど
私は自分に自信が持てるようになってきたんじゃないかって思うけど
まだ一人でも大丈夫っては全然言えない。
でも会いたい。
キスして欲しいとか、抱き締めて欲しいとか、
贅沢は言わないから
ローの顔が見たい。
また夜更かししたのって
朝起きて来たローに小言を言いたい。
生まれつきだって
目元の隈に言い訳する素っ気ないローに会いたい。
ダメだな。
本当に、重症だ。
再開の為のお守り。
絶対に迎えに来てね。
私も、こんな決意どうかとは思うけど
一人でも大丈夫だって
ローが居なくても大丈夫って自信を付けて
あなたに好きって言いに行くから。
あれ。もう何回も言ってるか。
これは私の心持ちの問題だ。
でもきっとローはその変化に気付いてくれる。
あの全てを見透かすような目で
見抜いてくれる。
熱くなってしまった顔を仰ぎながらガーネットの続きの説明に目を落とす。
“持つ人に変わらぬ愛を持たせ、恋人の心移りを防ぎ、永久の愛と幸福をもたらすともされている。”
『ぶっ殺す。』
私に他に好きな人ができたらどうするのって聞いたとき
凄い即答でそう言ってたね。
ぶっ殺される対象がどっちなのかは未だに分からないけど
ローが実は焼き餅妬きなのは、凄く嬉しい。
愛されてるなって、そう思えるから。
『お前が腹括った暁には、首に縄付けてでも一生傍に置いてやる。』
良いよ。
むしろ付けてよ、首に縄。
その代わり、絶対一生離さないでね。
ガーネットも、ローの為にあるようにすら思えてくる宝石だ。
宝石の種類なんてこんなに沢山、図鑑ができるくらいある。
似たような石なんていくらでもあるのに
ログポースに埋まった皆からのラブレターが
彼らが選んでくれたのが
間違いなくこれだって言い切れる自信がある。
皆が言いそうなことが
手に取るように伝わってくる。
“ため込み過ぎるな”
“勇気を出して勝利を勝ち取れ”
“トラウマを乗り越えろ”
“必ず迎えに行く”
「本当に、大好き。」
デザインも気に入ってた。
凄く可愛い。
でも
込められた意味を知った今、このログポースは今まで以上に私にとって大事なものになった。
なんとなく、ログポースを腕にはめてみる。
離れてても
皆が居てくれるって
ついててくれてるって
そんな気がする気がした。
「後は……、これだな。」
私のイニシャルの刻印に埋め込まれたダイヤモンドとルビー。
これは母様の形見の指輪に使われているものだ。
ローに貰ったピアスにも
同じものが使われてる。
結婚する時、父様が母様に贈った指輪。
もしかしたら父様は
特に石に気持ちなんて込めてないかもしれない。
込められていたとしても
それは当時の父様から母様へのメッセージ。
でもきっと
皆からのメッセージを解読するついでに
私がこれの意味も調べることは想定してるんじゃないかなって思う。
相手はローだもん。
私が何するかなんてきっとお見通しだ。
そして私のイニシャルにこれを埋め込んだことにも何か意味があるんだ。
色別に並んだこの図鑑。ルビーは近くのページだろう。
“ルビーは持ち主を守り、不運が近付くと色が変わって持ち主に知らせてくれる。情熱や深い愛情に恵まれ、パートナーの愛を取り戻す力があるとされている。”
嘘だなぁ。
母様はこれを持っていたけど、父様の愛は取り戻せなかった。
胸元にさげた指輪を握りしめる。
母様は、ルビーに込められた意味を知っていて
これを身に付けていればいつか
父様の愛が戻るって、そう信じてたのかな。
“乱れた精神を鎮め、悲しみや邪悪な考えを取り除く。傷つきやすい性格を守り、分裂的性格を防止する。”
母様はいつも笑ってた。
殴られたんだろうなって痣がある時も
父様が暴れて椅子を蹴り飛ばしたり大声で怒鳴り散らした時も。
部屋に閉じ込められて
友達と遊ぶことも本を読むことも禁止された私が
窓の外の世界が羨ましくて
気付けば外を眺めてしまっていた時も
母様はいつでも優しく私を抱き締めてくれた。
絶対に私があなたを幸せにしてあげるわって
何かを望むことを諦めては駄目って
そう言いながら。
母様だって辛かった筈なのに。
母様の心を守ってくれていたのは
このルビーだったのかな。
どうせ守ってくれるなら
母様の命を守って欲しかった。
ローもルビーに込められた意味、ちゃんと調べたんだと思うんだけどな。
なんでこれを選んだんだろう。
ローは父様と母様のこと何も知らないから
矛盾ばっかりの私に
分裂的性格を直せって、そう言いたいのかな。
ダイヤモンドはどうだろう。
一般的に婚約指輪にもよく使われる宝石だって知ってる。
どうせきっと
とてもロマンチックで素敵な
私の両親の末路には似ても似つかない意味が込められているんだろうな。
“その輝きは変わらぬ愛の結晶とも言われている。”
ほらね。
変わらぬ愛の結晶、か。
“心身を浄化し、精神的、肉体的な強さを与えてくれる。非常に強いエネルギーを持ち、不運や邪悪な物から身を守る最強の護符と言われている。”
あれが不運や邪悪な物じゃないっていうなら
何が不運で何が邪悪だって言うのよ。
駄目だ。
父様と母様に当てはめて考えると
素敵な意味を持つ宝石が胡散臭い石ころに見えてくる。
あの悲惨な結末をローは知らない。
皆も知らない。
この指輪に使われているからっていうことを抜きにして考えよう。
私のイニシャルに埋め込んだこの2つの宝石に
ローが私に送ってくれたこのピアスに
皆は、ローは、
どんな意味を込めた?
いつも一緒に笑って、はしゃいで、
私が無鉄砲なことをした時は本気で怒ってくれて
もう会えないと思ってたのに再会できた時には凄く喜んでくれた皆。
危険だって分かってるのに守るって言ってくれて
暴れて来たい筈なのに私のお守りって必ず一緒に留守番してくれて
私が知らない所で泣いてたって知ってしまった時には
凄く神妙な顔で謝ろうとしてくれた。
“傷つきやすい性格を守る”
“最強の護符”
きっとこれだね。
きっと皆は、守って貰えるようにって
この石を私のイニシャルに埋め込んでくれた。
ローは?
なんでピアスにこれを使ったんだろう。
“情熱や深い愛情に恵まれる”
“変わらぬ愛の結晶”
考えるまでもないね。
変なの。
誰が思いを込めたかが変わっただけで
宝石も、そこに込められた意味も
別のものみたいに素敵なものに変わる。
さっきまで胡散臭い石ころだと思っていたものが
太陽の光を吸い込んでキラリと輝きを放った。
私もこういう手紙にしたら良かったかな。
なんだか私たちにしか分からない絆みたいで
私たちの今までの関係があるからこそ解読できる暗号みたいで
上手く言葉にできないけど
凄く嬉しくて
得意気な気分だよ。