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それから私たちは沢山の島を訪れた。
中には折角良い条件だったのに許可が降りない島だとか
どうしても従業員が見つからなくて諦めた所もあったんだけど
予定通り10店舗。

ちゃんとソニアとアオイに胸を張って報告できる素敵なお店と従業員を確保できた。

ウォーターセブンを出港してあっという間にもう5ヶ月。

ブラーヴェでの生活にも仕事にも慣れて来て
環境が変化したストレスみたいなものもいつの間にか感じなくなっていた。

皆が隣に居ない生活が日常になってきて
そんな毎日が普通になってきてしまっているのが、少し切ない。

相変わらず定期的にでんでんむしで話はしているけど
やっぱり会いたいなって、毎日思う。

忙しさと、カレンとディゼルのおかげで
寂しいって感じることはそんなにないんだけどね。







あ、そうそう。
素敵なことがあったんだよ。



あれは丁度クリスマスの頃
その島はとても大きくて栄えた所だった。

街の中央に位置する広場にはとても大きなツリーがあって
クリスマスまでの期間限定で夜はライトアップされてたんだ。

モニュメントに始まりもみの木以外の街路樹も
街が一体化したようにイルミネーションがきらめいていて
あんなに本格的なイルミネーションを見たのは生まれて初めてだった。



店舗の内装工事を頑張っていたら遅くなってしまった事があって
船への帰り道、せっかくだから3人で見て回ったんだ。

すっごく綺麗だった。

昼間の様子とは全然雰囲気が違くて
まるで魔法にかかったお城にでも迷い混んだ気分だった。

イルミネーションはとても綺麗だったんだけど
友達同士で見に来ている騒がしい集団や
身を寄せあって幸せそうに眺めている恋人達の姿は

会いたい人たちを連想させてしまって
少し悲しくなった。



この島でやることはほぼ終わっていて。

ただ時期的な影響で
市長やら商工会関連のクリスマスパーティーに招待されてしまったの。

先を急ぎたかったんだけど
付き合いを甘く見ちゃダメよってでんでんむし越しのソニアに窘められてしまった。


どうせ皆に会えないとしても
クリスマスくらい、カレンとディゼルと
ご馳走作ってパーティーしたかったんだけどな。

「まあ仕事だから仕方ないわよ。美味しいもん食べて来な!」
「知らない人たちに気を遣いながら食べる美味しいものなんていらない。」



落ち込む私の肩をバシバシ叩きながら
誰と食べようと美味しいもんは美味しいじゃないと豪快に笑うカレン。

それはまずいよりは美味しい方が良いけど
ご飯って、誰と食べるかが結構重要だと思うんだけど。



「カレンとディゼルは二人でパーティーするの?」
「まさか!私はデートよデート!!」



何着て行こうとどこからどうみても上機嫌カレン。

なるほど。
最近いつにも増して機嫌が良いのはそのせいか。



「色々見えてないと人生楽しそうで、本当に羨ましいな。」
「どういう意味よ。」



書類を纏めているディゼルの言葉にカレンがドスの効いた声で噛みつく。

ディゼルは何ていうか
カレンには特に手厳しい事を言う気がする。

カレンは毎回不機嫌そうにそれに食って掛かるけど
仲が良いからこそのじゃれ合いにしか見えないんだけどな。



「何でいつも本当は欲しくもない消耗品に手を伸ばすのかなって。」
「意味分かんないけど貶されてることは分かるわ。」



相変わらずにこやかなディゼルとそれを睨み付けるカレン。

消耗品って。

確かにクリスマスパーティーが終わればすぐ出港して次の島に向かわなければならない。
でも好き合っていれば離れてしまっても気持ちが繋がっていることはあるんじゃないかな。

私がそう思いたいだけかな。



「まあ楽しんでおいでよ。尻軽アバズレビッチさん。」
「クリスマスに一緒に過ごす相手居ないからって僻んでんじゃないわよ!」



カレンはお約束のように
ディゼルの胸ぐらを掴んでもの凄い勢いで揺さぶっていた。

流石に言い過ぎだろディゼル。

怒るってことは自覚あるの?と笑っているディゼルはそんなリアクションのカレンを面白がってるんだろう。
きっと。

どうせいつも少し経てば
お互いに何事もなかったかのように普通に話してるもんな。



良いな、カレン。


クリスマスに好きな人とデート出来て。
じゃれ合う程仲が良い人が傍に居て。

「じゃあ行ってくるねー!今夜は帰らないから!」
「いってらっしゃーい。」



クリスマス当日の夕方、カレンは髪もメイクも服も
ビシッとお洒落に決めて船を出ていった。

弾けるような笑顔のカレンは本当に綺麗で
こんな人とデートできる相手の人も幸せ者だなって思えちゃう。

クリスマスイブの昨日、私たちはローストチキンを焼いたりケーキを作ったり
結局クリスマスパーティーはしたんだけど

船から見える街並を歩く人々は
楽しそうに身を寄せるカップルばかり。

イブじゃなく本番のクリスマスにこそ
気を紛らわす為にも皆でお祝いしたかった。

最近皆はでんでんむしに出てくれない。
クリスマスが近付くにつれて鳴り続ける発信音を聞き続けるのがなんだか辛くなってしまった。

私は会いたいなって思ってるけど
皆は皆でクリスマスパーティーとかするのかもしれない。
何か騒動があって忙しいのかもしれない。

でもなんだか
私だけが寂しいみたいで
それを見透かされてる気がするのが嫌で
最近はかけるのをやめてしまった。



「ウイもそろそろ行く?ごめんね。大変な役回りばっかり頼んで。」
「良いの良いの。ディゼルもお留守番ごめんね。お土産買ってくるね。」



私は確かに仕事の付き合いだけど
美味しい食事とお酒が待っているのは事実だ。

クリスマスの夜に船で留守番をしながら帳票整理をしてくれるディゼルの方が
申し訳ない役回りな気がする。



「ありがとう。せっかくだから楽しんできなよ。服も髪も凄く似合ってる。ローやペンギンが見たら惚れ直しちゃうんじゃない?」
「ディゼル……。その優しさを少しはカレンにも分けてあげなよ。」



僕は思った事しか言わないからなと微笑むディゼルに
じゃあありがとうと褒めて貰ったお礼を言って私も船を後にした。

17時から一件と、20時からもう一件。
会場は離れてるけど、パーティーは二時間くらいって言ってたから移動の時間を考えても十分間に合うだろう。



何か挨拶とかさせられるんだろうか。
もう慣れたけど、何言おう。



街を歩くカップル達を極力視界に入れないように
薄暗くなり始めた空を見上げながら会場へと向かった。

皆もこの空を
どこかで見上げているのかな。

市長主宰のパーティーはとてつもなく豪華絢爛だった。
手土産に持っていったシードルでシャンパンタワーをやりおった市長は
乾杯の挨拶を急遽私に振ってきて。

何かしら喋らされるかなとは思ってはいたけど
乾杯の挨拶なら事前に知らせて欲しかったのにと少し焦った。

でも手土産が市長の懐に収まらずに来賓客全員に行き渡ったことは
良い宣伝になったかなって。
来た甲斐があったなってちょっと嬉しくなった。

お酒もお料理も凄く豪華だったんだけど
立食パーティーだったから
ほとんど挨拶周りでろくに食べられなかった。

ローストビーフは食べたけどね!
西洋わさびのグレイビーソースとお肉との相性が抜群で
堪らなく美味しかった。

でもそう考えると
フカヒレとアワビの海鮮茶碗蒸しや
ラクレットをその場で掛けて貰えるチーズフォンデュ
ブランド牛をミディアムレアに仕上げたカツサンドや
大トロの握り寿司

横目で見ていただけのご馳走達もとんでもなく美味しかったんだろうなって
食べられないのが少し悔しかった。


あれだけ誰と食べるかに拘って憂鬱がっていたのは誰だったんだろうって
我ながら現金だと思う。

私が割と若い女の子ってこともあって
終盤挨拶に回った市議会のお偉いさん方は
甘いの好きだろってデザートは沢山勧めてくれた。

クレームブリュレに色とりどりのマカロン。
濃厚チョコレートのオペラにバニラビーンズたっぷりのパンナコッタ。

デザートがこんなに美味しいんだ。
絶対他の料理も美味しかった。

少しは挨拶周りに手を抜いて
全種類制覇してやれば良かった本当に!


そんなことを思いながら歓談時間をやり過ごしていると
あっという間にパーティーは閉会の時間で。


締めの挨拶を聞きながら特産品らしいワインに口をつけていると
市長は最後にブラーヴェの事を再度宣伝してくれた。
ご馳走を諦めてでも頑張って良かったなって、嬉しくなった。

デザートは沢山食べれたし結果オーライだ。

次も頑張ろう。


市長に一言声をかけて会場を後にすると
街は前にカレンとディゼルと見て歩いた眩いイルミネーションで彩られていた。

綺麗だなって思ったけど
それを幸せそうに身を寄せて眺める恋人達の姿は、やっぱり羨ましくて。

誰もいない自分の周りの空間が
只でさえ寒い外気を
更に冷たく感じさせるような気がした。




次の会場に向かうにはクリスマスツリーのある広場を通らなきゃいけなくて。

たださえカップルまみれなのに
あんなカップルほいほいみたいな場所なんてそれはそれは地獄絵図だろう。

でも寒いし。
遠回りして次の会場に向かうのもなんだか癪だ。


仕方ない。
世のカップル共のラブラブっぷりでも拝んでやるか。


重い足取りで広場に足を踏み入れると
街並みのイルミネーションの非じゃないくらいの光の群れがお出迎えしてくれた。


やっぱり綺麗だな。
ローと一緒に見たかった。


観覧車で夜景を見たときも、ローはあんまり窓の外の景色になんて興味はなさそうだった。
花火は結構見てたのに。

でもこんなに幻想的なイルミネーションを二人で見れたら
素敵な思い出になったんだろうな。



時間もあるしせっかくだ。
近くでクリスマス当日のツリーを見ておこうと広場の中央に足を向けると

カップルの多いこの広場では珍しい
一人の背の高い男の人がツリーを見上げているのが目に入った。

気のせいじゃなければ
その男の人は見覚えがありすぎる帽子とロングコートを身に付け、物騒な長すぎる刀を手にツリーを見上げている。
















いやまさか。














思い当たる人物は夜景になんて興味を示しそうもない。
それに最近は忙しくてでんでんむしにも出られなかった筈だ。


こんなところで一人でイルミネーションなんて楽しんでいる筈がない。


勘違いだと思う気持ちと、クリスマスの奇跡に期待する心が
最近ご無沙汰していた心臓の異常現象を再発させたようだった。


一歩ずつ、人混みを掻き分けながら近付くその人との距離は
どんどん期待を膨らませていく。













ねえ、嘘でしょ?













彼と私を遮るものがなくなって
それでも割と、距離は離れていたと思う。

声をかけてもいないのに不思議とこっちを振り向いた彼は
目が合った途端に珍しく
驚いた感情を素直に表情に出して固まってしまった。







プレゼントした帽子とコートは
思った以上に、似合っていた。




destruct at reality.