06昨日あった事が夢だったらいいのに。むしろ引越し自体がなかったことになればいいのに。
ピピピピ
ピピピピ
「……」
……まあ、夢落ちなんてありえないか。だいたいなんでだろ、憧れの有名人のサインもらえた瞬間とか、ケーキバイキングに行って、ケーキ食べようとした時とか。そういう時に限って夢だったりする。
とりあえず学校へ行く準備をする。このマンションから学校までの道のりと所用時間をいろいろ計算してみたけど一応ゆとりを持ちたいから早めに家をでることにしよう。
料理とか洗濯とか一通りの家事はできるからよかった。朝ごはんとお弁当を作って制服に着替えた。
「よし、出よう。戸締まり戸締まりー」
窓が閉まってる事を確認して玄関に向かった。
「ふー、閉めたっと………げ」
「おはよーさん」
「………」
あともう少し早く、またはもう少し遅く出ていればよかったのかもしれない。なんにせよ、私は相当タイミングが悪い人間だ。
「………」
本当に運がない。今すぐ鍵を開けて部屋に戻りたい。
「どうしたんじゃ?ぼーっとして」
「……おはようございます。では」
「ちょ、待てって!」
ちょ、引き止めんな!私は学校に行きたいの!
「そー、焦りなさんなって」
焦るも何もあなたも学生ですよね早く行かなくていいんですか私は早く行きたいですよ、ええ。
「お前さん名前は?」
「は?」
「なーまーえ」
いや、わかりますけど。
「俺の名前知っとる?」
「あー…仁王さんでしたっけ?」
「それは苗字」
「名前とか分かるわけないじゃないですか…」
昨日のあの状況でどう聞けと?いやー!思い出したくもない…
「雅治」
「あー、そうですか。では」
「ちょ、ちょ」
仁王さんをよけてエレベーターに向かおうとしたら片腕で阻まれてしまった。にしても見たことない制服…この辺じゃないのかな、学校。
「通して下さいよ!」
「まだ名前聞いとらんし…」
「昨日言いませんでしたっけ?」
「言っとらん」
「……苗字です」
「だから下の名前」
「名前です!!名前!!!」
いい加減通して欲しくて腕を押した時だった。
「ちょ、…わっ!」
腕を引っ張られ、
「可愛い名前」
と、言われたかと思ったら…
「は?何言っ…ん…んぅ…!?」
頭が真っ白になった…
「…ん、…な、何してっ…?!」
「何って、キスじゃろ?」
「…?!…ふざけんな{emj_ip_0792}{emj_ip_0792}」
んなこと分かってるわ!何なんのコイツ?あり得ない{emj_ip_0792}
「ホントっ、最悪!」
行くてを阻んでいた腕を押し抜け急いでエレベーターで下まで降りた。
「ありえない、ありえない、ありえない何なの、まーじで、ありえない。変態、セクハラ、痴漢。わーわー、嫌だ!あんな奴の隣の部屋なんて嫌だ…泣きたい。てゆうか覚えてろよー!!!」
拳を握り叫びながらマンションからズカズカと出て、ムカムカしながら学校に向かった。
「アーン?…何だ、あいつ…」
だから、私の事を訝しげに見る視線には全く気付かなかった。
110922
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