09


別に見たかったわけじゃねぇ。見たくなくても見えちまうもんだってあるだろ。

気付いちまった時には、それはもう最悪だのなんの。いい気分がしないのは当たり前だ。見えた。見てしまったが言葉的には正しいだろう。

その日は忍足の奴と街に来ていた。軽く奴の買い物に付き合っていた。街中を歩いているとうろちょろとちょっかいを出してくる雌猫共に忍足はいい顔するもんだから調子に乗ってキャーキャー騒ぎ出すこいつらを対処するのが面倒だった。


「おい忍足…あんま余計な事すんじゃねぇよ」

「しゃあないやん?」

「チッ…」


忍足には何を言っても無駄だと思いふとチラッと横目に道沿いの店舗のショーウインドウを見た。その奥を見た瞬間、というか正直二度見してしまった。そこにいたのは、、、


「っ……」


仁王と名前だった。

2人で出掛けてる…のか?仁王のやろうが異様に爽やかな笑い方してんのが妙に腹立つ。名前のやつを見んのは合宿の時以来だった。その時の事もあり、なんとなくモヤモヤしながらその2人の様子をしばらく伺っていた。仁王の野郎も…あいつが誰かと出かけるイメージがない。出掛けてたとしても女だろうな。でも今連れている女は女でもこれは話が変わってくる。


「チッ…」


また舌打ちをしてしまった。


「跡部、どないしたん?」

「てめぇを待ってたんだろうが」

「堪忍やて」


雌猫共の相手が終わった忍足が話しかけて来た。どうもこうもお前を待ってたら見たくもない現実突きつけられただけだ。2人の姿を見てイラっとしたストレスを半ば忍足に押し付けるように肩を押し、買い物の続きを始めた。


140511



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勝ち気なエリオット