05
「田所、飲み行くか。」
「いや、僕はまだ仕事があるんで。」
「つまんねー男だなあ。みょうじ、も仕事か。」
「私黒川さんと飲みに行きたかったー。」
そこに小林さんがやって来た。まだいたんですか、なんて田所さんの嫌そうな声。不穏な空気を察知して「とっとと帰ろー。」と黒川さん。私ももう少し家で考えようかな、と立ち上がったところ、一通のファックスが届いた。何かあってもいけないので取りに行く。まあ緊急の連絡ならファックスじゃなくて電話だろうけど。
届いたファックスを見て驚く。慌てて近くにいた小林さんを呼んだ。
「こ、小林さん!」
「はい?………え!?レイジカキタニオフィス!」
ファックスには"デザインが浮かんでしょうがないので送ります。ショッピングモールのTシャツにでも使ってください。"とあった。続けて送られて来たファックスにはそのデザイン画が印刷してあった。え、どんな大逆転劇?
「田所くん、よかったですね!」
「………いま、なんて言いました?」
「よかったですね!」
「いや俺のこと!」
「田所くん?」
「そう!俺、たどころじゃなくて、たところなんです!」
なんですかその嬉しそうな顔。私だってずっとたところさんって呼んでたのに!という意味を込めて田所さんと小林さんを恨めしい目で見ていると黒川さんが何かを思ったようだ。
「なあみょうじ。」
「はい?」
「カバふたり………バカふたり………」
黒川さん、樺ヶ谷のカバなんて喜んでる二人に、それは言わないであげてくださいね。
「みなさん!Tシャツのサンプルが届きました!」とバタバタ駆け込んで来た田所さんの顔はとても嬉しそう。
「めっちゃイカしてますよこのTシャツ、さすが"俺の"企画!」
と、自分の企画であることを強調したのに土方チームリーダーに「よくやったな、お前ら。」と言われて「お前ら……」と小林さんを睨んでいた。それでもTシャツを試着して楽しそうな顔をする田所さんは、嫌なやつなのにどこかかわいくて憎めない。今まではただのうざい先輩だったのにな。