05



ほどなくして戻ってきた小林さんの手には封筒が握られていた。お弁当屋さんの様子から見て中身は釣り銭だろう。なんて優しい人なんだろう。さっきから観察してたのもバレてるし、声をかけない訳に行かなくなった私は小林さんの隣にそっと腰掛けた。



「みょうじさん、」

「小林さん、優しいんですね。」

「いや、僕は別に……」

「きっとチラシの件も、何か理由があったはずです。」



そういうと小林さんは少しだけ驚いたような顔をした。




「なんでそんなこと言ってくれるんですか?僕は本当に、仕事が出来なくて、ダメなやつなんです。」

「んー、なんでですかね。イケメンだから?」


私の言葉に信じられない!というような顔をする小林さん。ちょっとかわいいですその顔。




「あはは、冗談ですよ。」

「で、ですよね。そんなこと言ってたら田所さんが拗ねちゃいますよ。」

「別に田所さんのことはどうでもいいですー。」

「、僕のせいですよね?」


子犬のような申し訳なさそうな顔をした小林さんに、なんで知っているんだろうと思った。聞くと廊下でのやり取りを聞かれていたらしい。恥ずかしい……。






「仲直りしないんですか?」

「いや、仲直りも何も私たちなんでもないんで。」

「してください、仲直り。なんか僕のせいって思っちゃうんで。」

「じゃあ………小林さんが会社に戻って来てくれたら頑張ります。」


そう言うと小林さんは複雑そうな顔をした。まあそりゃそうか。






「今のはずるかったですね、すみません。」

「、いえ」

「でも戻って来て欲しいのは本当ですよ。みんながどう思っても、少なくとも私は、もう少しだけでもいいから小林さんとお仕事がしてみたいです。」

「みょうじさん……。ありがとうございます。考えてみます。」





心なしか、最初に見たときより小林さんの表情が少しだけ明るくなったような気がした。