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結論からいうとやはり自分の直感は正しかった。
オレは名前にどんどん惹かれていったし、日に日に大切な存在へとなっていった。
「名前ってどんな男がタイプなんでィ」
一度試しに聞いたことがある。
「あー私この前なった横綱とかタイプですね」
「横綱‥」
「縁の下の力持ち系に弱いんですよねぇ」
これっぽっちもオレに当てはまらなくて笑った。
近藤さんや土方さんは分かってるかもしれないが
、周囲で名前の良さに気づいてる人は少ないだろう。
名前はパッと見じゃ分からないが、凄く芯の通ったきちんとした女だ。
人に流されないからこそ人間が持つ意地汚さが全くなく、この上なく信頼のおける人間だった。
当たり前のように、ごくごく平然に、私欲を持たない。
そんな女にオレは初めて出会った。
その清らかで強い心にオレは惹かれたし、いつもそれが眩しく見えた。
ウソで出来た関係でも、一緒に帰って、手を繋いで、コーヒーを飲んで、勉強して。
何気ないことが全部楽しかったし、それを楽しむ自分自身が新鮮だった。
こんなひねくれたオレを名前の持つ光が温め、癒してくれた。
名前に本当の彼女になってほしいって言ったらどう思うだろうか。
夏祭りの日、名前の可愛さに我慢しきれずキスをしたら大泣きされて逃げられた。
嫌われてしまった。
本当はあの日告白してやろうと思ってたのに。
考えてみれば、突然好きでもない男にキスされたらそりゃ嫌になって当然かもしれない。己の浅ましさを呪った。
悶々と暗黒の夏休みを過ごし、名前を偽物の彼女から解放しないといけないと思った。
でも結局名前は続けると言ってくれたし、何だかそのあと文化祭でもいい感じにいちゃいちゃしちゃったりして。
文化祭での名前とのキスは本当に気持ちが良かった。
いや、性的な意味もちょっとあるけどそういうんじゃなく。
好きな子とのキスはこんなにも気持ちがふわふわと天に昇るもんかと、つい天を仰いだ。
名前はオレをどう思っているんだろう。
オレは名前のこと、髪の毛の先っちょから足の形までまるまる全部愛しくて仕方ないのに。
手を繋ぎたい、キスをしたい、好きだよ、と言って抱きしめたい。オレにとびきりの笑顔を見せてほしい。
どうかどうか、いつか名前と本当の恋人になれますように。
日にちが進むにつれそんなことばっかり考えていた。
ーー
卒業式の日、オレに泣きながら花束を渡す名前を見たら愛しさがつのってしまった。
周りの目すら気にせず口づける。
「好き」という気持ちがポロリと溢れて口から出てきてしまった。
(あ、やべ。思わず好きって言っちまった‥)
目の前の名前は真っ赤になっていた。
「お、沖田さん、聞いてください」
「‥怒られるのは嫌でさ」
「お、怒るわけじゃなくて。いや、怒ってますけど‥」
名前は深呼吸しながら一生懸命話していた。
「私も好きです」
名前の言葉を聞いた瞬間、心に熱いものが流れてきた気がした。
とくん、とくん、と鼓動に合わせて胸が踊る。
「沖田さんが、好きです。ウソじゃなくて、本当の彼女になりたいです」
名前を抱き締めた。
目が潤む。
「っ、」
「沖田さん、泣いてます?」
「っ‥」
「沖田さん?」
「っ馬鹿、泣いてんのはお前だろ」
「な、泣いてません」
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