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「だからやってないって」

告白だとかで呼び出しを喰らうことはよくあったが、今回の呼び出しは違った。

放課後、面談室に呼び出され学年主任やら教頭やら偉い先生に囲まれている。

「他の生徒から通報があったんだぞ」
「やってないってば。水商売とか絶対やりたくないし」

どうやら生徒から私がキャバクラやら風俗やらで働いてると通報があったらしい。通報までされたのは初めてだがこの顔だと人に好かれる反面恨みもかってしまう。
先生達もつい目立ってしまう私の存在に手を焼いてるようだった。

「遅れましたぁ〜」

押し問答が続く中ガラッと扉が開いた。
銀八だ。

「すんませんね〜うちの生徒が」
「だから私は問題なんておこしてないっつの」

銀八は張り積めた空気の中、ヘラヘラと笑いながら私の隣の席についた。

「先生困りますよ。受け持ちの生徒はちゃんと管轄してくれないと」
「んー、あーでもあれですよね。名字やってないんですよね」
「え?」
「オレぁ生徒の言葉信じます。話しててもラチあかないんでまた何かあったら話しましょう。今日はこれで終わりで。じゃっ」

他の先生がポカンとするなか銀八は早口で喋り終わった後、私の腕を掴んで教室を出た。

「ぎ、銀八‥」
「よかったの?」
「あんまり良くないけど」
「えっ」
「やってねぇんだろ。いいよ、それで」

銀八はポンと私の頭に手を置いた。

「寄り道しないで真っ直ぐ帰れよ」

一瞬心臓がドクンと動いた。
銀八のニッと笑う顔に体温が上がる。

「っ、分かってるよ」

慌てて銀八に背を向けた。

「気ぃつけてな〜」

後ろからそう声が聞こえたが駆け足でその場を離れた。

私が信じてるものはお金。
恋も愛もいつかは冷める。
そう思ってはいるものの、何故かその日から私の心臓はバクンバクンと活動的になってしまった。


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