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怪しい。
明らかに沖田さんは焦っていた。

「それ何ですっ、ん‥」

また口を塞がれた。
沖田さんは私の顔を掴み、聞くなと言わんばかりに深いキスをする。


「っあ‥ちょっ‥」

さっき沖田さんが私とのキスが気持ちいいと言ってくれたが、私だって同じだ。
こんなに気持ちいい事があるものかと頭がクラクラして星が回るようだ。

しかし今はクラクラ星を回している場合じゃない。

私を掴む沖田さんの手を払い、沖田さんのズボンのポケットにすっと手を入れた。

「あっ、テメェっ」
「‥‥これ」


先ほどの物体は写真だった。
赤い物体が写っている。


「これ、文化祭の時の‥」

写っていたのは文化祭の時に赤ずきんの格好をしている私だった。

「‥‥‥」

その写真が一体いつの間に撮られたものなのかは不明だが、沖田さんは私の写真を学ランのポケットに常時忍ばせていたということか。

「もしかして、沖田さん‥私のことめっちゃ好きですか?」

沖田さんの顔が赤くなる。
はぁ、とうつ向いてため息混じりに返事をした。

「っ、悪ィかよ」


(あ、やばい)

今日の沖田さんは何て素直なんだろう。
こんな真っ直ぐに返されたら私だって自分の気持ちを伝えたい。


「私も沖田さん、めっちゃ好きです‥」

ずっと言いたかった言葉だ。
もう言ってもいい言葉。


沖田さんはそわそわと赤い瞳を何度も瞬かせた。


「‥何でィ、調子狂うだろィ」

それは、こっちの台詞だ。



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