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放課後、バレないように別々で現地へ集合した。
約束の場所に着いたときには銀八は既に待っていた。
ふと目が合ってニッと笑われる。
なんだか少し恥ずかしい。

銀八はどうしても見たい映画があったらしく、映画館でチケットを渡された。

「となりのペドロ」
「これめっちゃ泣けるらしいぜ」
「土方くんがそう言ってたかも」
「まじ?アイツも泣くことあんのな」
「銀ちゃん、これお金」
「え!いいよ、これくらい。オレ大人だよ?」
「え、え、」
「ほらほら、ジュースも買ってあげるよ〜。おいで」
「あ‥ありがとうございます‥」
「なんで敬語なんだよ」


売店が混んでいたので席につくとすぐ暗くなって上映が始まった。こうやって銀八の隣に座るのは初めてだ。


(いつもより距離、近いな‥)

視界に銀色の髪が入った。
ふ、と銀八の匂いが鼻をくぐる。


(あれ)


手を繋がれていた。
驚いて銀八の顔を見るがそっぽを向いていた。

何だろう、男の人の手ってゴツゴツしている。骨ばってて少しがさついてて、でも温かい。
銀八の手は高杉の細くて白い手ともまた違う。




上映が終わると銀八はボロボロと泣いていた。
溢れる涙を見てついハンカチを貸す。

「ペドロ、ペドロ‥」
「いい映画だったね」
「なに、お前泣かないの?」
「う、うん」


正直繋がれた手が気になってしまい、あまり映画に集中出来なかった。

今も手は離れることなくガッシリと繋がれたまま道を歩いている。


「もう夕方だね」
「夕飯どうする?何か食ってくか?」
「んー、私何か作ろうか?」
「えっ」
「いや、外食でもいいんだけど」
「いやいやいやいや、食べたい。食べます。それにします」
「銀ちゃん普段外食ばっかりかと思って」
「ヤバい‥名前お前‥」

ぐしぐしと銀八は涙を拭う。

何だろう‥このふわふわした気持ちは。
高杉とも、勿論他の同級生とも感じることのないこの気持ち。
繋がれた手から発生する熱が身体全身に流れている気がした。


最寄りのスーパーにて一緒に買い物をする。
当たり前のようにケーキやらアイスやらをカゴに入れる銀八につい笑ってしまう。
笑うと銀八も照れくさそうに笑顔を浮かべた。


買い物中に離れた手も、帰り道に当たり前のようにまた繋がれる。



(何だか、銀ちゃんは、大人だ)



銀八のマンションについた頃にはすっかり暗くなっていた。



つづく


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