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高杉はすぐにドアを開けた。

「っ、はよ」
「うん。おはよう」

高杉は白いTシャツと短パンを履き、頭には寝癖がついていた。
部屋へと通されるとご飯の炊けた香りがする。

ぼんやり炊飯器から出る湯気を見ていると高杉に話しかけられた。


「昨日‥泊まったのかよ」
「あのね高杉、もうこういうのやめよう」
「は?」
「‥ごめん、ご飯たべにくるのも、こうやって部屋に来るのも話すのも、全部やめる」
「何だよそれ」
「だって私どっちつかずで、二人とも傷つけてる、こんなのおかしい。普通じゃない」
「‥普通ってなんだよ。おめーは普通とか、周りの目線とか気にしすぎなんだよ」


そうだ。私は周りの目線がこわい。
正確には高杉の近くにいる女の子達がこわい。
高杉のことを考えるとその子達の目線が気になって心が重たい。

どうして彼はこんなに私の心に刃物を投げつけてくるんだろう。

不安にばっかさせられて、私の触れられたくない部分を無理矢理引きずり出してくる。


今朝の銀ちゃんとのゆったりした時間が嘘のようだ。
そう、二人は正反対なのだ。
銀ちゃんは私に安心をくれる。二人で秘密の恋をしている内は私は高杉で傷付かない。
銀ちゃんは今まで作られた私の心の傷を癒してくれる。


「っや、だ! 」
「‥」
「もう、私、高杉に振り回されたくないよ」
「‥それがちゃんと悩んで出した答えか?」
「‥‥」
「ふざけんなよ。自分はそれでいいかもしれねーけどよ、もっと、もっと、ちゃんとオレを見ろ!」
「高杉‥」
「真剣に考えたか!?オレのこと、ちゃんと見たのか?逃げずに向き合ってくれたのか!?」
「っ」


高杉が怒った。
怒ったというより、きっと悲しんでる。

私が、銀八を選んだ訳じゃない。
銀八に逃げただけだって、気づいているんだ。



「‥わりぃ、帰ってくれ。頭冷やす」


高杉はポツリと呟き布団へ潜り込んだ。


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