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ー高杉のことをちゃんと考える
高杉にも銀八にも言われた通りずっと私が避けてきた事だ。
幼なじみという距離を詰めすぎないよう距離を取ってきた。
銀八という優しい彼氏も作った。
高杉について私は一言じゃ表せない。
高杉の片っ方ない瞳。
私をかばって出来た傷。
本来私は高杉に感謝しきれない恩がある。私の気持ち云々の前に、高杉に身を差し出すくらいするべきなのかもしれない。
でも、そんな事高杉は望んでない。
高杉は、一度もつぶれた目についてネガティブな事を言わない。
彼はあの事故は偶然だと言い張るのだ。
あんなに大怪我をしたのに。
あんなにまだ小さかったのに。
あの小さな高杉の強さに私は今怯えている。
私はそんな守って貰った価値等ない人間だ。
二人を傷つけたくないとか言って結局は自分が傷つきたくないだけなのだ。
「こわい」
でもだからって銀八に逃げていいのか。
私に向き合ってくれた高杉を、私を守ってくれた小さな高杉を、自分の弱さでまた見て見ぬふりをするのか。
ちゃんと考えろと待ってくれた銀八へ誠意を見せなくていいのか。
(なんて私は弱い人間なんだろう)
自分の涙が流れるのを感じた。
高杉が泣いたのは、高杉の両親が亡くなった時以来、見てないな。
ぼんやりそう思って、また無意識に高杉の事を考えてるな、と涙をぬぐった。
ーー
あれからずっとベッドに座りぼんやりとしていた。
気づくと空が明るくなっている。
知らない間に1日が終わり、 また始まってしまったようだ。
どうやって考えたら答えが出るのか分からないけど、とにかくひたすら自分自身のことを考えた。
お腹が鳴った。
ずっとここから動かずご飯も食べてなかった。
何か食べよう、と思った時に高杉に作ったラーメンを思い出す。ゴマをいっぱいかけたラーメン。何だかあれが無性に食べたい 。
そういえばご飯を決めるときは高杉の好物を、空を見れば前に高杉が呟いた「あの雲乗れそうだなー」という言葉を思い浮かべる。
それだけじゃない。
私の日常は全て高杉のフィルターがかかってしまっている。
高杉が守ってくれた私のこの2つの目に入るものは、きっと高杉の視点も一緒に合わさっているんだ。
(私は、高杉と生きているんだ)
そう思った瞬間、それまで冷えきった身体がぽかぽかとしてきた。
私はもう十分守られた 。
自分がどう幸せになるかじゃなくて、自分が誰を守って幸せにしたいかを考えよう。
誰を幸せにしたいか、
そんなのは考えなくたって分かっていた。
出てきた答えは凄くシンプルだった。
私が今まで過ごしてきた日常そのものだった。
私が周りのことばっかりに気を取られて全然見えてなかっただけなんだ。
はぁ、と深く深呼吸をして目をつむる。そのまま目は開くことなく、やっと眠りにつけた。
その日私は生まれて初めて学校をサボった。
つづく
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