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名字名前
最初はもっと簡単に自分のものにするはずだった。
女はべらせてる幼なじみの不良なんてよりオレのがずっと余裕あるし、ずっと色んなものを与えられる。
ころりと落として、オレがこの子の世界を拡げてやろう、そう思ってた。


「銀ちゃん」


オレのことを呼ぶ名前
ちゅーして赤らむ名前
何でもない話でけたけた笑う名前
オレの前髪を愛しそうにいじる名前

気づいたらお得意の余裕も狡さもなくなって、ただ単純にこの子に本当に幸せになってほしい、そう考えるようになってしまった。



この子が、名前が、本当に好きなのは高杉だということくらい初めから知っていた。

それでもその選択は名前からしたら厳しく辛い道らしい。
だったらオレに甘えればいい。オレはそれをさせるだけの力がある。

しかしこのままオレに甘えるのか、高杉を選ぶのか、それはいずれ選択しないといけない事だ。


どちらにせよオレは名前の幸せを考えるしかない。

大丈夫、名前なら後悔しない方を選べるさ。選んだ道を間違わずに進んでいける。

そう信じて、オレに別れを告げた名前の背中を見送った。



ふーっとタバコの煙を吐く。
太陽の強い光に照らされながら大空へと昇る煙。
光が眩しくて目を半分瞑りつつ、空を見上げた。
真っ青な青空に白く透き通った曇が風に流れていく。

雲を運ぶ風で耳元の髪もゆるゆる揺れた。気持ちがいい。


オレ、気づいたらこんな純愛主義者になっちゃって。
ねえ、笑っちゃうよな。

そう思いながら自分でふ、と笑った。


(あぁ、青いな‥)


高く青い空の下で、何だかふつふつと足元から細胞が生まれ変わるようだった。


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