3

「命に別状はないですよ」



病院で医者が高杉に告げる。
あの後一緒に救急車で運ばれ、高杉は包帯まみれでベッドに横になっていた。
私は付き添いでその横の椅子に座っている。


「外傷が酷くて出血が多かったんですがね、まぁ大体2週間くらいで退院出来ると思います」


医者は一通り説明をして病室を出ていった。
高杉はちらっとこっちを向いて真顔で訪ねてきた。


「お前はどうしてもトラックにひかれたいのか?」
「‥ごめんなさい」


高杉の顔が見れずにただ頭を下げた。


「‥わ、私、高杉が死んじゃったら‥どうしようって‥」


話しながらまた涙が湧いてくる。


「っ、また、っ目が、‥なくなっちゃったらどうしようって‥」


泣く私に高杉はちらっと視線をそらして下を見た。


「わりぃな。ほっぺた。」


高杉のついでに私の頬も病院で手当てをしてもらっていた。
頬には大きなガーゼを貼っている。足も捻挫したので包帯を巻いていた。


「‥こんなの、全然痛くないよ」


そう返すと高杉は少し目を細めた。
神様、この笑顔がまた見れて本当に良かったです。


そう思い、自分が気持ちを伝えようとしていたことを思い出した。
もうこんなことがあると人間いつ死ぬか分からないと実感する。
今、言わないと。

「‥高杉、聞いてほしい事があるの」
「あんだよ」
「‥その、」


今さらだが恥ずかしい。
なかなか言葉が出てこない。

「‥や、やっぱ退院したらにしようかな」
「言えよ、気になんだろ」


高杉は私の服の裾を掴んだ。
高杉の腕に何本も繋がっている点滴の管が揺れる。

「その‥」

私はその高杉の手をとり、自分の手と繋ぎ合わせた。
黙って指を絡ませる。
高杉の顔を見ると、私のその行動にびっくりした顔をしていた。


「‥っ晋ちゃん‥、」



また口から昔の呼び名が出る。
どうにか振り絞った私の声は少し震えてしまった。






/


戻る

長夢
TOP