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「高杉くーん」
「来ちゃったー」
高杉のファンの女子達だった。
私より数段短いスカートに、ぱちぱちした睫毛が何だか病院とは不釣り合いに見えた。
「あ、お邪魔だった?」
頬を染めた私をちらりと見て女子達は騒ぐ。
それに反射するかのように私は病室のドアを開け部屋を開け女子達に背を向けた。
「おい名前どこ行くんだよ!」
「いや、私‥帰るよ」
「帰んな!夜までいろよ!」
高杉は慌てて立ち上がる。
「お前らが来たから名前が困ってんだろ」
「たまにはあたし達とも遊ぼーよ」
女子達は高杉の腕を掴んだ。
高杉はその手を払い笑った。
「馬鹿言うなよ、オレは名前で手ェ一杯なんだ」
高杉は部屋を出た私をまだ治りかけの身体を引きずりひょこひょこと追いかけてきた。
「待てよ」
「いや、」
「逃げんなって。名前が嫌ならアイツらともう関わんねぇし‥」
「‥‥」
「だからそんな怒った顔すんなよ」
「‥あのね、高杉」
高杉に説明しようと思ったが、自分でも何にイライラしてるのかはよく分からなかった。
別に他の女子に関わらないで欲しい訳じゃない。
そもそも私は怒っている訳じゃないのだ。
「別にいいんだ。私あんまり束縛みたいなの、したくなくて」
「おぅ」
「私のせいで、高杉の友達が減っちゃったりするのは嫌っていうか‥」
「じゃあ何でそんな顔してんだよ」
「‥何でって、」
「オレは、その、‥ちゃんと言ってくれねぇと分かんねぇんだよ」
「こ、怖い」
「え?」
「なんか、心変わりされたらって思うと怖い」
「‥ 」
「どうしよう、高杉の恋人になるの‥やっぱり怖い」
恋人という関係性は怖い。
終わりがくるかもしれないからだ。
幼なじみでいれば、終わりはない。
やっぱり私は、幼なじみという立場が1番いいのかもしれない。
高杉は私を抱き締めた。
耳元で小声で消えるような声で呟かれる。
「‥オレがどんだけお前のこと好きか分かんねぇの?」
「‥分かんないよ」
「今度、教えてやる」
照れながら一生懸命言葉を紡ぐ高杉の顔を見る。
今まで散々一緒にいたのに少し嬉しそうに、緊張しながらはにかむこの表情を私は初めて見た。
「‥狡い」
こんな顔されたら、いくら終わりがないといえど、幼なじみにもう戻りたくはなくなった。
つづく
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