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甘いキス、という表現は素晴らしい。
高杉からのキスは本当に丁寧で、とろけそうなほど甘かった。
ただただ胸がいっぱいで必死に高杉の手をきつく握り返し、何故だか涙が出そうになった。
「何つー顔してんだよ」
「っは、もう 、これだけでもいい」
「アホなこと言うな」
高杉がシャツを脱いで部屋の電気を消す。
その後すぐに抱き締められると生身の身体同士が触れ、お互いの体温を感じた。
「お前、身体あっつ」
「晋ちゃんが冷たいんだよ」
冷たい高杉の身体に手を回す。
ひんやりと細いその身体に触れると硬く、逞しく、骨ばっていた。
幼少期とは全く違うそれに心臓がいっそうドクンドクンと鳴る。
高杉は深呼吸して私の身体を包むブランケットをゆっくり取った。
「こっち見ろよ」
「や、やだよ」
「オレは見てるけど」
「っ見ないでよ」
高杉が私の顔を覗きこみ、確かめるようにゆっくりと私の身体へと触れていく。
「っ、や」
「隠すなよ‥」
「っ」
「綺麗だ」
「し、晋ちゃ‥」
恥ずかしい。
死にそうだ。
裸を見られて綺麗だなんて、そんな台詞あるだろうか。
恥ずかしい。
むずむずする。
「可愛い」
綺麗の次は可愛いときた。
「っ〜適当なこと言わないでよ」
本当だって、と私の頬にキスをする高杉の顔を手で押しやった 。
「‥なに怒ってんだよ」
「っ〜、晋ちゃん‥やだ」
「なんだよ。むくれんなよ」
「‥知らない晋ちゃんばっかりで‥‥困る」
私が呟くと高杉は少し口元を緩めた。
「オレだって、知らないお前ばっかで‥困ってるよ」
「っ‥」
「お前の肌がこんなすべすべなんて知らなかったし」
「あ、」
「こんな胸がやわらけぇとも知らなかった」
「ちょっと‥触っ‥ん、」
「温かい身体も、声も、表情も、全部。知らなかった。全部今まで想像の中だったのに、こうやって目の前にあるんだぞ。もうオレは死にそうだ」
「っひゃ」
「ずっとオレは、お前だけだよ‥名前」
高杉におでこをくっつけられて、ぎゅっと瞑っていた目を開ける。
昔と変わらない顔がそこにあった。
照れながらはにかむその顔は、私の知っている高杉で少し安心した。
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