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「っ‥あ」
「痛かったら言えよ」
「‥ん、やぁ」
「なぁ、全部」
「っ」
「全部‥オレのもんになってよ」
安心したのも束の間、何とも言えない鈍い感覚と高杉の歯が浮くようなくすぐったい台詞が頭を痺れさせる。
「っ、く、ぁ」
高杉が動く度に抑えられない声が出て、高杉の匂いが強くなった。
ぎゅっと高杉に回した腕に力を入れて、グラグラした意識に身を任せる。
「し、晋ちゃ‥ん」
「名前‥、」
さっきまでの甘いキスとは違う、まるで噛みつかれるようなキスをされる。
「んっ、んっ」
キスをする間にも高杉の動きは止まらず、頭を真っ白にさせながら高杉の舌へと必死にこたえた。
「悪い。もう、止まんねぇかも」
高杉は、そう呟くと動物のように私の首へと噛みついた。
「っひ、あぁ」
一層高い声が出てしまう。
「名前、名前」
高杉は私の名前を呼び、首筋に紅い印を沢山落とした。
高杉が動く度に私の頬にぬるい水滴が落ちてくる。
「いなく、なんなよ」
「っ‥あっ、あ」
「もう、置いてかれたくねぇ」
高杉は泣いていた。
うっすらとした暗闇の中、高杉の涙が一瞬キラキラと光を放ち、私の上へと降ってくる。
「あ、」
「好きだ。好き‥好きだ」
「あ、っんっ」
好き、という言葉を呟く度に私を抱く力は強くなる。
「‥名前好きだ」
「っ‥く」
ついには身体が繋がったままに力いっぱい抱き締められた。
動きが止まり、はあ、はあ、とお互いの
深呼吸音が響いた。
下腹部の鈍痛に加えて上半身も最大限の力でギリギリと抱き締められ、身体が悲鳴をあげる。
その痛みに声が出そうになったがそれを何とか抑えた。
その痛みは、何だか高杉の心の痛みと重なった。
高杉がこっそり隠してきたひとりぼっちの哀しみ。
やっと私にも分けてもらえた。
彼を守ってあげたい。
幸せにしてあげたい。
「大丈夫。もうひとりじゃないよ」
そう言うと高杉はうっ、うっと声を出して泣いた。
すっと力が抜けていき、痛みから解放される。
高杉の頬をそっと触れ、涙を拭った。
彼の頬は片方しか濡れていない。
涙が片方の目からしか流れないからだ。
左目の傷をそっと撫でた。
私を守ってくれた傷。
私は高杉と繋がって、本当にひとつになれた気がした。
それが嬉しかった。
ずっと一緒にいた私たちはお互いを必要としている。
それは過去も今も、多分この先の未来もずっとだ。
だから、どうかどうかもう、孤独なんて感じてほしくない。
「好きだよ、晋ちゃん」
光っては落ちていく彼から溢れる雫がとても綺麗で、とても愛しく思えた。
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