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それから私は高杉の家の方にいることが多くなった。
一緒に学校に行き、一緒にご飯を食べて、一緒に眠った。
「で、うまくいったと」
「お陰様で」
今日は進路相談で、銀八と放課後二者面談をしている。
「ほんと元彼にノロケとか勘弁してほしいわ」
「別にノロケてないよ!」
あれ以降も銀八は相変わらずゆるゆると担任として私に接してくれていた。
「で、お前進路どうすんの?推薦とか狙ってる?」
「推薦?私いけるかな?」
「まぁお前成績いいしな。素行も別に悪くないし‥ん?教師と付き合っといて素行がいい訳ねぇか」
「ちょ、ちょっと!」
「冗談だよ、まぁ狙えると思うけど」
銀八はいたずらそうに笑って目を細めた。
「お前はまぁ心配ないとして問題は高杉だよ」
「‥確かに」
「アイツやっと学校来るようになったけど進学なんかね?」
高杉は前と違って私と一緒に学校へ通うようにはなっていた。
かといって特段受験生らしく勉強しているところを見たことはない。
「まぁ明日アイツの面談日だから話してみるけどよ」
「‥うん」
「高杉のこと、頼むな。彼女さん」
銀八はニッと歯を見せて私の肩を叩いた。
ーーーー
次の日、高杉は参考書を買って帰って来た。
「‥え、どうしたの?」
「別に。やらなきゃなんねぇことするだけだ」
銀八との面談で何か触発をされたらしい。
高杉が勉強するところを私は生まれて初めて見た。
参考書の表紙には大きく教育学部と書いてある。
「教育学部?え、先生になりたいの?」
私が聞くと高杉は少し頬を染めて目線をそらした。
「別に‥アイツに出来てるならオレにも出来ると思っただけだ」
(高杉が、先生になる)
一体どんな未来になるのだろうか。
なんだか凄くいいかもしれない。
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