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銀八先生は私の担任。
「名字幼なじみなんだろ。高杉のことどうにかしてくれよォ」
とかって話しかけられたのが始まりかも。
まさか担任と付き合う事になるとは思ってなかったし、高杉以外の男の人って新鮮だったからびっくりしたけど、銀八先生の不登校で不良の高杉のことまで大切に考えてくれる辺りが大人っぽくて優しくていいなぁって思った。
周りの男の子とは違う。尊敬出来る大人の男の人っているんだなぁって印象。
よく放課後屋上に行くと銀八先生がいて一緒にぼんやり過ごしていた。
銀八のタバコの煙がぷかぷかと空に飛んでいって、自分もやってみたくなった。
「一本ちょうだい」って言ったら「だーめ」と笑われた。
ちぇ、とそっぽを向いた瞬間アゴをクイっとされ、ちゅ、っと音がした。
「それで我慢しときな」
「……え?」
キスをされた。びっくりして一瞬で耳まで赤くなる。変な話、キスなんて幼稚園生の時に高杉と結婚ごっこでした以来だ。
「あれれ、真っ赤じゃん」
「ぎぎ銀八先生…せ、先生のくせに……」
「へへ。セクハラで訴える?」
「え、ちょ、待って…」
動揺する私に対してニヘリと笑った銀八は急に真顔に戻る。
頬に手を添えられた。
「オレにしとけよ」
「…え、」
「嫌なの?」
「…嫌…じゃないけど……」
「はい決まり〜」
銀八はそう言って再び笑顔に戻った。そしてタバコを消してまたキスをしてきた。
(苦い……)
先生とのキスは苦かった。苦みと銀八から漂う甘いお菓子のような匂いが混ざり合う。
タバコって苦いんだな、そんな思いと一緒に何故か高杉が頭をよぎったが、銀八にぎゅっと抱きしめられて頭が銀八でいっぱいになってしまった。
「別に高杉のことも大事に思ってていいからよ」
「……」
「彼氏のポジションはオレにちょーだい」
「…銀ちゃん、耳赤い」
「こら大人をからかうなよ」
そしてまた苦みと甘みがふってきた。
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