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―3話

高杉が引きこもりになった。
部屋から全然出てこない。

たまに女の子のヒールの音が深夜とか早朝にカツカツと響いて聞こえてくるくらいだ。


「高杉〜」

インターホンを押しても寝てるのか無視をされているのか出てこない。女の子が出入りをしているってことは死んではないし、大丈夫かな‥とため息をついた。



明日は日曜日。今日は放課後銀ちゃんの家に遊びにいく予定だ。帰りが何時になるか分からないしベランダの鍵は閉めておく事にした。


そんな事を色々と考えながら制服に着替えようとパジャマを脱いだところでドアが開いた。



「げ」
「やべ」
「ノックくらいしてよ!」
「お前‥」
「いや、早く出ていけ」


高杉だった。本当に変なタイミングでやって来る。
ぎゃーっと布団に潜って身を隠した。
今私の身体を覆っているものはパンツとブラしかない。


「なぁ名前」
「あーもう、出てけってばー!」


出ていくどころか高杉は何故か私の上に跨がってきた。
ギシッとベッドの軋む音がする。


「何!?何!?」
「どうしてお前はこう‥」
「変態ー!」
「オレには可愛い言葉を言わねぇんだろう」
「ぎゃーっ」
「っあぁ、もう黙れって」


頭を押さえつけられたと思ったら何だか息苦しい。


「んっ‥‥」


あれ?何だこれ。目の前に高杉の顔。
見慣れた顔。小さい頃と変わらない目元。
でも、もう男の人の顔。


「たかすっ‥」
「お前なにしてんだよ」
「それはこっちの台詞‥」
「なに勝手に彼氏作ってんだよ」


そう言ってまた口を塞いできた。キスしてんじゃん。何だこれ。
私はただ着替えをして学校に行こうとしていただけなのに。何なんだこの襲撃は。


「もっと早くこうすれば良かった」
「は?」
「お前のそういう顔、ずっと見たかった」
「な、なにを‥」


恐らく今の私の顔は真っ赤だろう。だって顔が熱い。
恥ずかしくてどうしていいか分からない。
頭の理解力が限界値を余裕で越えていた。


「なぁ」

高杉がまた迫る。それに伴いベッドの軋む音がまた響いた。


「やっ‥」
「オレさ」
「やっ、やめろおおおおお」



耐えきれず肘で高杉の頭をガツンと殴ってしまった。


聞きたくない。
高杉の言葉の続きを聞いてしまうと、きっと私はどうしていいか分からなくなる。


痛みにうずくまる高杉の隙を見計らい逃走した。


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